目隠しの過去
どうもシファニーです! 年越しの準備は出来てますか!? 私は今年の目標だった累計執筆字数100万字を何とかクリアしていい感じです!
第40部、第1章第40話『目隠しの過去』です。どうぞ!
リアサの幼少期は、決して幸せなものではなかった。
「この子、目が見えないんです。どうにかなりませんか?」
「ん~、これは魔眼病ですね~。申し訳ありませんが先天性のもので、治療法はまだ解明されていないんです~。ですが、慣れれば日常生活に支障はなくなるはずですから、しばらくは眼帯を付けて様子を見てくださいです~」
魔眼病と言う病気らしい。
そうはっきりと自覚できるようになったのは、物心がつき、7歳を迎えることだっただろうか。自分が回りと違うことを、それが特別であることをはっきりと理解するのには、それなりの時間がかかった。
自分が周りと違うことを受け入れるのには、もっと多くの時間が必要だった。
いつしか自分の力をどうにかして活かせないかと考えるようになり、戦士を目指した。戦士になれば、他のエルフではできない戦いをすることが出来るようになる、と思ったからだ。それからは必死に修行し、多くの魔法を覚えた。魔力の流れが見える分習得が早く、年が近い子たちに羨ましがられたものだった。
だが、その程度でリアサは満足しなかった。
それからも修行の日々は続き、リアサはどんどん強くなった。期待の新人として名を上げ、多くの実績を成した。シンラシンラのどんな魔物よりも強く、そして賢く成長していった。
そんな頃に生まれたのが、リィナだった。
そんな昔の出来事がよぎったのは、走馬灯というやつなのかもしれない。
リアサは全身に出来たかすり傷の痛みを引きずりながら、枝を経由してスピアーモンキーたちから逃げ回っていた。
「くくっ、くくくっ、くくくくっ、非常に愉快ですねぇ! あれだけ粋がっていた戦士が苦しそうに顔を歪め、逃げ惑うのは非常に愉快です!」
今なお体は健在で、逃げ帰るには十分なだけの体力が残っていたが、リアサにそうする選択肢は無かった。この場を任せれ、それを買って出た以上は、自身の責務を果たす必要がある。
リアサにとって幸運だったのは、魔族が自ら手を下そうとしないこと。いや、もしかすると出来ないのかもしれない。魔族の魔力は、魔物を操ることに費やされている様子だった。
「しかしその追いかけっこもいつまで続きますかねぇ? いいんですよ、降参しても。そうすればすぐにでも楽にしてあげましょう!」
不愉快な笑い声に言い返すだけの元気は無かった。そんな余裕は、とっくの昔に消え失せている。
何度も攻撃を受けた。躱そうとしても数が多すぎて躱しきれず、敢えて受けなければ致命傷を受けるような場面が何度もあった。逃げ回っているせいで体力も魔力も消耗する一方。もう少し頑張れないこともないが、限界はそう遠くない。
どこかで、巻き返す必要がある。
そんな状態でも、リアサの頭の中はクリアだった。生まれつき魔力が見えすぎてしまう影響か、情報処理能力は人一倍に優れていた。実際、リィナの魔法の規模がどれくらいで、この昼を保つ苦労、そして、シンラシンラ全体の力を借りるという、とんでもない偉業をなしているという事実にしっかりと気付いている。
リィナ。
最初は嫌いだった。リィナも生まれつき魔力が見えるらしい。そう聞かされ、相談されたことがあった。だが、リィナの症状を確認すればするほど自分とは違うと分かるだけ。
魔力で視界が埋め尽くされ、その流れを延々と感じさせられる自分とは違い、リィナは景色の中に強い魔力があればそれを認識することが出来るだけ。そこに、自分のような苦しみは無いはずだった。それなのにリーヴァは心配性で、この子を理解してあげられるのはあなただけだから、なんて言って戦士として順調に成長していたリアサをリィナの傍に置きたがった。
最初は王族の力になるならと受け入れたリアサだったが、それから始まった日々は退屈だった。
子守から始まり、掃除洗濯入浴おしめ替えまで全部一から叩きこまれた。戦闘技術と比べれば覚えるのは簡単だったが、体を思う存分動かせないストレスは日々溜まっていった。
そんな日々が、7年ほど続いた頃だっただろうか。リィナが、周囲に対して牙をむくようになっていった。こんな子どもは珍しく、リーヴァも困り果てた様子だった。実際、リアサも困った。
それはリアサに対しても同様の態度を取られたから、ではない。リアサに対してだけ、素直だったからだ。何度リーヴァに言われても聞かなかったことをリアサが言えば「確かにそうね」と聞き入れていた。今となってはそこまで従順ではないが、リアサの話にだけはよく耳を傾け続けている。
いつか理由を聞いたとき、リィナはこんなことを言っていた。
「私のことを無視しないでくれたのは、リアサだけだっもの」
リィナは他の人には見え無い魔力を見ることが出来る。ただ、周囲はそれに気付かないふりをしていた。リィナが自分だけが特別だと思い、孤独感を抱くんじゃないかと思ったから。だからこそ話が合うであろうリアサを近くに置いたくらいに。そのことを言っているんだろうと分かった時、リアサはリィナのことを嫌いでなくなった。
リィナはただ、自分のことを理解してくれる人が欲しかっただけなのだ。そしてそれは、自分と同じ願いだった。
どこまで行っても我が儘で、家族でさえ邪険にするリィナだけど、その本心は理解されたいという、ただそれだけの当り前の感情で埋め尽くされている。でもそれを表に出せず、閉じこもっていた。閉じ込められたと、思い込んでいた。
そんな彼女が今、こうやってみんなのためを思って力を発揮した。そんな変化を遂げたんだ。
リアサは、心の中で目を閉じた。実際に目を閉じてしまえば殺されるような状況だったので仕方なく。そして、想像上の瞼の裏に、リィナの笑顔が浮かんだ。ついに自分が引き出すことが出来なかった、そしてリネルによってもたらされた笑顔を。
段々と変わり始めた時なのだ。ようやく、自分を認められるようになった。
「んな時に、辛い思いさせられないっしょ」
小さく呟いたその瞬間、リアサの周囲の魔力が流れを変える。リアサに押し寄せていたどす黒い魔力たちが、リアサから放たれた疾風のごとく魔力に巻き込まれ、振り払われる。
「む? 何が……」
魔族が状況を理解するよりも早く、リアサは練り上げた魔力を解き放つ。
「《リヴェラル・ブラスト》ッ!」
放たれた爆音が空気を揺らし、激しい振動を引き起こす。その風の塊は必殺の威力を持っていたが、向けられたのはスピアーモンキーたちのいる方向ではなかった。それは、魔族の頭上に向かって放たれ、狙い違わず木の幹を貫く。そして粉々になった木片と共に、貫かれた部分よりも上が魔族に向かって、降る。
「なッ⁉」
魔族は慌てた様子で回避行動をとる。その瞬間、一瞬スピアーモンキーの動きが止まったのを、リアサは見逃さない。魔力の糸が、緩んでいた。
「そんな苦し紛れ、通用しませんよ!」
回避自体は容易に行った魔族は、しかし苛立った様子で声を上げる。そしてリアサがいるはずの方向を見た時、そこにあるはずの人影が無いことに驚愕する。慌てて周囲に視線を巡らし、操るスピアーモンキーたちの視界も覗く。
(ど、どこだ⁉ どこに消えた⁉ 今の一瞬で、すべての魔物の視線から逃れたというのか⁉)
操った生物の五感をも管理し、戦場を網羅する魔法メンタル・ジャック。そこに絶対の自信があったからこそ、魔族は動揺していた。
(確かにあいつには魔物の行動が視えているようだった。だが、視線をすべて感じ取って身を隠すなんて、そんな芸当、出来るわけが!)
「ない、と思っちゃったわけだ。ざーんねん、出来んだよねー、これが」
「っ⁉⁉⁉」
背後から突然聞こえた声にとっさに飛び退れば、そこにはリアサが立っていた。
「ば、馬鹿ですか? せっかく背後を取ったというのに、チャンスをみすみす逃すなんて!」
なんて口では笑いつつも、魔族の動揺は収まらない。
(この私が簡単に背後を取られた? それに今、思考を読んだかのような発言を……)
「読んでんだなー、ある程度」
「なッー⁉⁉⁉」
「おー、いいリアクション」
リアサは笑った。とっておきの悪戯を成功させた子どものような、あどけない笑みを。
「じゃ、一気に行こうか」
皆さん大晦日をいかがお過ごしでしょうか。これを読む頃には過ぎてるよって方もいるでしょうが、家族とだったり恋人とだったり、あるいはひとり気ままに過ごす準備は整っていますか? 私、シファニクスは今まで執筆に置いてどんな作品にでも取り入れようとしてたテーマがありました。
それは孤独感からの救済です。
私にとって孤独とは辛いことです。1人でいることが辛いわけではありません。その状況に孤独を感じてしまえば、きっと辛いだろうと考えている、ということ。実際私は1人の時間の方が好きですが、本やアニメ、楽曲なんかを楽しんでいる間は孤独感を感じることはありません。
そんなわけで私の作品、それは読んでいて孤独感を抱かせない作品です。読書とは良くも悪くも基本1人でするものなので、最も孤独に近い娯楽と言えます。それをどうにか出てきたら、と思う次第です。
読者の皆様にとって私の作品がそれに値するのか、それはよく分かりません。ですが、そうだったらいいな、と思います。
そんな感じで年納とし、来年に向けて準備をしていきます。
来年の抱負! 毎日投稿! 今作品に限らず別作品だろうが何だろうか、1日1話、公開していきたいと思います! 破ったからと言って罰とかは考えていませんが、今年は達成できなかったこの目標、必ず達成して見せます!
よいお年を! それでは!