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3度目の接敵

 どうもシファニーです! 皆さん年末何してますか!


 第37部、第1章第37話『3度目の接敵』です。どうぞ!

 リアサが魔物を操る大元へ向かった。

 曰く、魔物から魔力の糸のようなものが伸びており、その先に元凶がいるだろうとのこと。それを辿って森の中に入って行ったリアサを見届け、俺は俺の仕事を果たすべく周囲に意識を集中させる。


「夜の襲撃は常套手段。だが、俺だって魔力の流れを感じることくらいは出来るんだ。必ずお前を見つけ出すぞ、ニケロイア」


 すでにエルフの戦士とスピアーモンキーたちとの戦闘は始まっていた。夜遅く、暗闇の中で視界が悪い分エルフたちが不利かとは思うが、ここは信頼して任せることにする。リチャードたちが決めた覚悟を、無駄にすることはしたくない。

 そんな俺が何をしているかと言えば、ニケロイアの魔力を森の中から探している。前回も完全に魔力を消して隠れていたニケロイアだ、そう簡単に見つかるとは思っていない。しかし、動き出せばすぐにでも魔力を感じられるはず。

 ニケロイアが動き出すのを、俺はただじっと待っていた。


 それから、どれくらいが経っただろうか。

 俺は戦場の流れが大きく変わった気配に気付いた。だがそれは、ニケロイアの登場とは違う、もっと大規模で、予想外のものだった。


「《リヴェラル・ワームス》ッ!」


 森全体を包み込むんじゃないかと思えるほどの魔力が一気に伝播した。何事だと思って空を見上げると同時、暗闇に染まっていた世界が明るくなり、さんさんと輝く太陽が木の葉の間から覗いていた。一瞬にして昼夜が逆転したことに驚愕したのも束の間、直前に、聞き覚えのある声が響いたのを思い出す。


「今の声、まさかリィナ、か? それにこの魔法……おいおい、あのドームだけじゃなくて、森全体を覆うような規模かよ」


 身内のことながら、俺は顔を引きつらせていた。あまりにも規模がでかすぎる。それこそひとつの戦争を容易に終わらせられるような規模だ。使った魔法が魔法だけに直接的な威力は無いが、おかげで視界が開け、遠距離戦を得意とするエルフが有利な状況になった。戦況を一気に塗り替え、形勢逆転のきっかけを作ったのだ。

 実際、遠くでは先ほどまでとは比べ物にならない戦闘音が響きだしていた。防戦一方だったエルフたちが攻めに転じ、戦闘が激化したのだ。その内連携を取り始め、不利を覆してくれることだろう。それに、これで俺もニケロイアを見つけ出しやすくなった。戦闘だって見えやすいに越したことは無い。

 最初の戦闘では暗がりでよく見えず、2度目は逃げられて終わった。今度はしっかりと視野が広い状況で、もう逃がすつもりはない。全力で叩きのめし、ここに攻め込んできたことを後悔させてやる。


 そう決意した、その瞬間。背筋が凍るほどの悍ましい魔力が、すぐ後ろから放たれた。

 俺は動揺を悟られないよう、ゆっくりと振り返る。


 そこにはローブの右肩が焼ききれ、黒く、甲冑のように光沢を放つ肩を露にした、ニケロイアが佇んでいた。


「……ってきり、最後まで隠れているのかと思ったが?」

「それでもよかったのだがな、せっかくなら自らの手で決着を付けようと思ってな。小僧、名を何と言ったか。我に殺された愚かな英雄として、石板にでも刻んでおこうじゃないか」

「リネルだ、覚えとけ」


 全身から溢れる魔力は一層濃くなり、ニケロイアの本気が伝わってくる。むしろ今まで手を抜かれていたのかと考えれば、勝てないんじゃないか、なんて言葉が頭をよぎる。

 けど、理屈じゃないんだ。負けるかもしれない、なんて弱気になっている場合ではないのだ。俺はここで勝ち、使命を果たさなければいけない。エルフの皆を、リィナとの約束を、守らなければならないんだ。


 俺は、静かに神林弓を手に取った。

 触れると同時、暖かさが全身を包み込む。心から落ち着けるような抱擁感に包み込まれ、緊張が少しずつ薄れていく。速くなっていた鼓動が落ち着き、全身の筋肉が少しずつ緩む。

 そして俺は、今度は自らの意思で意識を絞る。この安心感にいつまでも包まれていられるように、この場所を、守るんだ。そう決意し、俺はニケロイアへと視線を向ける。

 

 ニケロイアは、俺が手にした弓を見て、興味深そうに声を漏らした。


「それは……くくくっ、面白い! 小僧、貴様がそれを使う熟せるのかどうか、確かめてやろうではないか!」

「望むところだ!」

「勇ましいな、小僧よ!」


 両手を広げ、そこに魔力を練り始めたニケロイアは、高く飛翔して宣言する。


「我が主たる魔王に誓おう。貴様を、必ずこの手で殺すとな!」


 大仰に叫んだニケロイアに、俺も負けじと声を張る。


「なら、俺は仲間に、弓に、そしてリィナに誓う。必ず、この場所を守って見せる!」


 ニケロイアの笑みと俺の闘志がぶつかると同時、互いの体は、動いていた。


 空中に飛び出した俺を向い打つのは、やはり紫電。


「《ライトニング・オーブ》」

「《エア・ブラスト》」


 魔法と魔法がぶつかり合い、弾け、霧散する。紫色の帯が空中に漂い、ニケロイアはそれを躱すように上に飛び、俺もそれを追いかける。互いに全力ではないだろうが、拮抗している。


「ほう、腕を上げたな!」

「この程度! 《エア・スラッシュ》!」

「《ライトニング・ハウル》ッ!」


 轟音が鳴り響くと同時、ニケロイアの手元から無差別に電撃が放たれる。まるで何かの悲鳴のようにうねり狂う電撃は木を貫き、草を焼く。俺の魔法など容易に掻き消し、放たれた魔法は俺を的確に追ってくる。

 エア・フライトにエア・ブーストを重ね、高速移動で何とか躱し続けているが、その追跡は終わらない。


「その程度か、小僧!」

「何の!」


 俺は、矢筒に手を伸ばす。


 俺が今まで様々な武器を使ってきた。

 1度目の人生では剣を。

 2度目の人生では法器を。

 3度目の人生では肉体を。

 4度目の人生では剣だけではない、様々な近接武器を使い分けていた。

 そんな俺だが、弓を扱うのは初めてだった。誰に習ったこともない。


 けれど、体が勝手に動いていた。神器を使う度によく陥る感覚だ。自然と使い方が分かる、勝手に体が動く。自分の一部かのように、意のままに使いこなすことが出来る。それだけでは誰よりも優れた戦士にはなれなくても、十二分に戦えるだけの技術を、その身に刻んでくれるのだ。


 つるで張られた弦は想像以上に硬く、矢を構え、引くその動きは重い。しかし確実に、そして的確にニケロイアへと狙いを定めた。


「食らえ!」


 俺の叫びと同時に放たれた弓は、音速を越えて風を切る。爆発のような音が響くと同時に射出され、一直線にニケロイアへと放たれた矢は雷を貫き、ニケロイアへと向かう。


「ぬぅっ⁉」


 ニケロイアは慌てて魔法の制御を手放し、体をねじってギリギリで躱す。だが、俺はマントの一部が矢にかすり、千切れたことを見逃さない。

 これなら、通用する。


 ニケロイアは危機感を覚えたのか雷のような速度で木の合間を動き、距離を取る。俺もまた、その雷の軌跡をたどって森の奥へと入っていく。

 あれだけの素早い移動、相当の魔力を使っているはずだ。そう、長続きはしない。


「逃げるのか!」

「これは逃げではない、戦略的撤退だよ! 《ライトニング・カオス》ッ!」


 網目のように雷が迫り、俺は思わず体を止める。一気に減速し、残った慣性を下へと向けて急降下。何とか雷を躱し、再び背中に魔力を纏って加速する。

 こちらのエア・フライトも走るよりは断然速いが、ニケロイアとの距離は広がるばかり。


「どれだけ継続力あるんだよ、あの魔法! クソッ、逃がさない!」


 俺はもう1度矢筒に手を伸ばす。すぐに構え、狙いを定める。高速で移動していて到底当たるとは思えないが……俺の手は、正確に狙いを定めていた。

 そして、迷わず矢を放つ。音速を越え、周囲の草木を大きく揺らして突き進み、木にぶつかることもなくその合間を抜けていく矢はニケロイアに迫る、が、直前で躱された。明らかに速度で劣っている。


「クソッ!」


 悪態を吐きながらも、俺には追い続ける以外の選択肢は無かった。

 もう10万字越えてるってマジ!? 文字数だけ聞くと多そうなのに、いざ書いてみると実際少ないですよね、10万字。だってこれだけ書いても文庫本にはちょっと足りないくらいなんだもん。少ないに決まってるじゃん。でもこれ感想用紙250枚分なんですよ? 小学生たち泣いちゃいます。

 実はこれくらいの字数で第1章終わらせる予定だったんですけどね。いやぁ見切り発車の良くないところ。書きたくなってどんどん増えてっちゃう。本当ならもっと色々書きたかったんですよ? 大分はしょったんですよ? そう考えると、物事を端的に伝える能力に欠けているんですよねぇ、私。精進します!


 それでは!

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