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リアサの本音

 どうもシファニーです! クラスマスだって!


 第33部、第1部第33話『リアサの本音』です。どうぞ!

 それから、どれくらいが経っただろうか。

 リィナに体を貸しながら、俺はリンゴ畑を眺め続けていた。

 リィナの体は軽くて、どれだけ支えていても疲れることはない。柔らかく、暖かい温度感に、むしろこちらが安心してしまうくらい。

 けれど、そんな平穏もそこまで長くは続かなかった。


「リネル様!」


 少し遠くから名前を呼ばれてそちらを向くと、慌てた様子のレイカが走って来ていた。その後ろにはリアサの姿も見る。レイカの表情はかなり焦っていて、その動揺が伝わってくるほど。


「んっ……」


 今度は耳元で声が聞こえたかと思えば、ふいに肩が軽くなった。どうやら俺が体を動かしてせいで起こしてしまったらしい。

 振り返れば、寝惚け眼のリィナと目があった。

 まだ焦点が合っていない瞳で、顔もだらしなく緩んでいる。不思議なものを見るようにこちらを見つめていて、口が小さく空きっぱなしになっている。


 それが数秒ほど続いただろうか。リィナの目が突然見開かれ、大仰に仰け反った。


「リ、リネル⁉」


 それから立ち上がって距離を取り、顔を真っ赤にした。


「も、もしかして私、今、寄りかかっ――!」


 発せられた声は悲鳴のようで、最後には声にならなくなって消えてしまった。あわあわと動揺していて、目が回っているってこういうことなんだ、と思わされた。そんな様子でも面白いより先に可愛いが来るのって、ほんとにつくづく得してるよなと思う。


「リネル様、突然申し訳ありません、緊急事態で! ……リィナ様? お顔が赤いようですが、まさか熱でも⁉」

「ち、違うわよ! いいから! 早く話して! 何があったの⁉」


 リィナが誤魔化すように大声を上げ、それに驚きながらもレイカが頷いて真剣な表情を浮かべた。


「見回りに出ていた斥候がスピアーモンキーの群れを見つけたそうです! それもこの前の比じゃない数だったという話で! 森中のスピアーモンキーが集められたんじゃないかと言う話だそうです!」

「な、何よそれ! あの魔族、シンラシンラで相当好き勝手やってるみたいね!」

「少しまずいな……スピアーモンキー以外の魔物も操られている可能性もあるとすれば、数で押し切られかねないぞ」


 森の中でのエルフは強い。だが、如何せん数が多いとは言えないのだ。弓と魔法という武器を扱う関係上連続した戦闘は苦手だし、対処しきれなくなる。ニケロイアのやつはこちらの弱点をしっかりと把握しているらしい。

 にしてもまさか、この短時間でそんなに戦力を補充するなんて。それとも、あらかじめ第二波として準備していたのだろうか。


「そのことで少し、リネル様に相談があります」


 俺の呟きを拾ってそう言ったのは、レイカより少し遅れて到着したリアサだった。相変わらず気だるげな声で、表情が一切変わっていない。リアサを見ればレイカの慌てようが大袈裟に思えるが、どちらかと言えばおかしいのはリアサの方なんだろうな。


「ん? リアサ、どうかしたのか?」

「はい。もし失礼でなければ、リネル様と1対1でお話ししたいのですが、よろしいですか?」


 と尋ねた先は俺ではなく、リィナだった。つまり、俺を借りていいか、とリィナに許可を求めているわけだ。


「好きにしなさい。私はお母様のところに行くわ。レイカ、ついてきて」

「か、かしこまりました! それではリネル様、リアサ先輩、またお会いしましょう」


 レイカは深々とお辞儀して去って行った。しかしまたお会いしましょうとは、少し大げさではないだろうか。それとも、俺たちがすぐにでも戦場に向かうとでも考えているのだろうか。だから、生きて帰ってこいと言いたいのかもしれない。


 そんなレイカの心配性に呆れ半分、嬉しさ半分でいると、リアサが正面に入ってきた。


「あ、ああそう言えば話だったな。どうした?」


 と聞いたが、リアサは何も答えない。代わりにベンチに腰を下ろし……足を組んだ。

 その給仕としてそれでいいのかと言う態度に驚いていると、リアサが口を開く。


「リィナと何かあったの? いー感じぽかったけど」


 とてもフランクな口調だった。


「え? ああいや特に……ってリアサ、そんな性格だったか?」

「あーしは元からこーだよ。魔眼病のせいで疲れやすくて、四六時中ダルいんよね」

「あ、なるほど、そうなんすね……」


 なんとも言えない雰囲気だった。気だるげで、声や仕草の端々から重たさを感じる。鈍いというかなんというか。確かにそんな様子は見せていたけど、ここまであからさまになるとは……。

 そんな俺の動揺を知らない、もしくは見て見ぬふりをしているらしいリアサは、さっさと本題に入ることにしたらしい。


「それで魔物のことだけど、操ってるやつ、別にいるから」

「……え? えっと、話が見えないんだが」

「だーかーらー、あのニケロイア? っての意外に最低でももうひとり魔族がいるんだよ。そいつが魔物を操ってる」

「そうなのか?」

「そーだって言ってるっしょ?」


 確かに俺は魔物を操っているのはニケロイアだと思っていた。

 でも、別の魔族が操っていたとして、それはただ相手の戦力が想定より増えたというだけの話で……あれ、待てよ?


「まさか……その操っているやつを倒せば魔物たちは自我を取り戻すってことか?」

「そーゆーこと。いーねリネルっち、冴えてる」

「リネルっちって……」

「イヤ? かーいーと思うけど」

「いやまあうん、好きに呼んでくれ」


 なんか凄いリアサのペースに乗せられている気がする。


「まー他の人の前では呼ばないから」

「それはもういいから……で、話を戻すがつまり、リアサはその操っているやつを倒せば、魔物たちは解放されるって言いた」

「せーかい。この前はあーしも操られてる魔物を制御し続けなきゃいけないとは思ってなかったから魔物を倒した。でも、戦闘中にそうじゃないって気付いた。ずっと魔物に伝わる魔力の流れが変化し続けてたから、間違いない」

「なるほどな……それじゃあリアサは、それを俺に任せたいって言ってるのか?」

「惜しい、リネルっちに8点」

「10点満点?」

「100」

「低すぎないか⁉ 絶対惜しくないだろ!」

「いー突っ込み、気に入った」


 なんか求められてる気がして全力で返したら、リアサが口元に笑みを浮かべた。なんだかんだで初めて見た気がする笑みは自然なもので、無表情だと思っていた分驚いた。


「であーしが言いたかったのは、あーしが操ってるやつ倒すから、リネルっちはその間例の魔族の邪魔が入らないようにして欲しいって話」

「そういうことか。操ってる大元を倒しに行っても邪魔されたら意味無いもんな。分かった、そうしよう。その代わり、ちゃんと大元の方は倒してくれると思っていいんだよな?」

「まーね。これでもあーし、強いから」


 締めにそう言って、リアサは立ち上がる。


「さてリネルっち……いえ」


 気だるげな雰囲気が一気に消え去り、普段のミステリアスさを取り戻したリアサが口調を正した。

 丸まっていた背中が伸び、指先までぴんと張る。


「リネル様。私たちも参りましょう。いつ戦闘が始まっても不思議はありません」

「そうだな。今度こそ、守り切って見せる」


 リアサを前に、拳を握る。


 もう2度と、あの日を、炎に包まれた村の姿を見ないで済むように。大切な人を失わないで済むように。そんな決意を固めながら、リアサと共にシンラ・アースを後にした。

 クリスマスらしいですよ。無論私は部屋で小説書き続けてます。どうせならクリスマスにちなんだお話を書きたいところではあったんですが、書いているお話し的に難しいのと、世間一般的にクリスマスと言われて想像する恋愛的なあれの経験が無――

 この話はやめましょう。


 それでは!

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