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嵐の前の静けさ

 どうもシファニーです! 今週も終わりましたね……明日明後日模試らしいです12連勤ってマジ?


 第22部、第1章第22話『嵐の前の静けさ』です。どうぞ!

「レイカ? それにリネル様ではありませんか。見つかったのですね」


 リーヴァが普段いる部屋の前にいたのは、おっとりとした雰囲気を漂わせる女性だった。彼女はレイカと同じ服装をしており、確か名前はライラ。リーヴァの傍付きのひとりだったはずだ。

 両手を合わせ、安心したようにそう言ったライラに、俺はすぐさま用件を伝える。


「すぐにリーヴァ殿下に会いたい。急ぎなんだ」

「……かしこまりました。殿下は部屋の中におられます」

「ああ」


 多くを聞くことなく通してくれたライラに会釈しながら部屋に入ると、そこには何やら資料に目を通している最中のリーヴァがいた。


「あら? リネル君! よかった、見つかったのね! 私もすっごい心配して――」

「そんなことより話があります」

「――え?」


 リーヴァの言葉を遮り、俺は彼女に要点だけを手短に伝える。


「今このシンラ・カクに向かって何者かが襲撃しようとしています。昨夜、その集団を発見して逃げようとしたところリーダー格らしいやつに見つかって襲われたんです。何とかこうして戻ってきましたが、時間がありません。すぐにでも対抗する準備をしてください」

「そ、それってどういう……それに傷だらけだし……」


 リーヴァは目を見開き、動揺を隠せていない。目線は俺の体の傷へと移り、さらに表情が曇る。


「とにかくすぐに戦う準備を。でないと、ここが危ない。奴らの狙いは神林弓、その破壊だ。そのためならどんな犠牲もいとわないと言っていた。一刻の猶予もない」

「わ、分かったわ。すぐにリチャードに知らせるわね」

「お願いします」


 リーヴァはすぐにライラを呼び寄せ、リチャードに伝えるよう指示を出した。リチャードは確か、軍事顧問だったはずだ。ライラは無言のまま一礼し、駆け足で去っていく。それを見届けてから、リーヴァは大きく息を吐き、ソファに深く腰掛けた。


「もう、びっくりしたよ。あと、とりあえずリネル君は医務室に行ってね。後で詳しい話を聞きに行くから」

「いえ、このくらいの傷は――」

「いいから、ね?」

「……分かりました」


 諭すようなリーヴァの声に、俺は渋々頷く。

 現状、すぐに襲撃が始まる気配はない。ここは大人しく医務室に行くのが得策だろう。いざとなればすぐに駆けつければいい。


「レイカ、リネル君をよろしくね」

「かしこまりました。リネル様、こちらへどうぞ」

「ああ」


 レイカに先導され、シンラ・プライドの廊下を進む。俺は医務室の場所を知らなかったので当然の形になるが、レイカの足取りは心なしか早い。怒っているのだろうか。


 そりゃそうだ。自分が気にかけている人が突然いなくなり、ボロボロになって帰ってきたのだ。謝罪のひとつもなければ、無礼と思われても仕方ない。

 意を決し、俺はレイカの背中に声をかける。


「レイカ、その、少しいいか?」

「……なんでしょうか」


 少し間を置いてから、レイカが振り返る。その表情は平静を装っているようだが、目元は赤く、無理をしているのが分かった。胸が痛む。申し訳なさが全身に広がる。


「その、悪かった。心配かけて。すぐに帰ってくるつもりだったけど、面倒ごとに巻き込まれた」

「謝る必要は、ありません。リネル様は、リネル様のお好きなように行動すればいいのですから」

「っ」


 突き放すような言い方に、胸の痛みが一層強くなる。体の傷とは違う痛みが、心をじわじわと締め付ける。その痛みが何なのかは分かっていたが、どうにもできなかった。


「ただ……私たちのことも、少しは考えて欲しいです……リィナ殿下だって、きっと心配されていたはずです。私よりも、ずっと……おそらく突撃してくるかと思いますので、リィナ殿下に謝るお言葉を考えておいたほうがよろしいかと」


 レイカは冗談っぽく言った後、微笑みなが前を向き、再び歩き出した。


 胸の痛みが不思議と癒えていく。体も心なしか軽くなった気がした。


「そうだな、そうする」


 小さく呟き、レイカの後に続く。


 シンラ・プライドの2階にある医務室で、俺は一通りの診察を受けた。緑色の医務服を着た小柄な女性――ローラが担当してくれた。リーヴァやレイカと比べて幼く、俺やリィナと体格が変わらないほどだが、れっきとした医師らしい。


「はい、もう大丈夫ですよ~。怪我は多いですが、全部軽傷ですね~。転んだんですか~?」


 間延びした声に、エルフの女性には珍しい短髪が印象的だ。


「まあ、そんなところです」

「なるほどですね~。受け身が上手に取れたみたいで偉いですね~。動かないでくださいね~、今から治癒魔法を使いますからね~」


 言われた通り目を閉じ、何度か深呼吸する。心が落ち着いた頃、ローラの魔力が全身を包み込んだ。


「《エア・ヒーリング》~」


 間延びした声が響いた直後、俺の傷が柔らかな魔力に包まれる。痛みが徐々に消えていく感覚に、心も落ち着いていった。


「もう大丈夫ですよ~。お大事にしてくださいね~」

「ありがとうございます」


 ローラは一礼すると、前線に呼ばれていると言って去っていった。すでにリーヴァの采配で軍事行動が始まっているらしい。エルフの統率力は流石だな。


 感心しながら、自分の体を改めて見る。

 かなり短い治療となったが、全身の傷が癒えていた。ひとつも余すことない完治だ。

 治癒魔法は極めて習得難易度の高い魔法だ。魔法への理解、人体への理解、医療への理解。年を重ねるうちに魔法式を簡略化してなお専門的な知識と技術が必要な魔法で、俺も習得はしていなかった。それをローラはかなりの練度で扱って見せてくれた。実力は確かなのだろう。


「ローラさんがいるなら、きっと大丈夫ですよね」

「……多分な」


 レイカが心配しているのは、これから始めるであろう戦いについてだろう。

 ローラが前線に行くと言っていた通り、戦いの準備はすでに進んでいる。彼女がいれば負傷者の傷は問題なく癒せるだろうが、それで安心とは言えない。まだ戦いは始まっていないみたいだが、これからどうなるのか、まったく見当がつかない。


 そんなことを考えていると、レイカが改めて聞いてきた。


「リネル様、具合はいかがですか?」

「ローラのおかげでだいぶ良くなった。痛むところもない」

「良かったです」


 レイカが自分事のように笑顔を浮かべたその時、医務室の扉が勢いよく開かれた。


「リネル! ここにいたのね!」


 声の主は不機嫌な顔をしたリィナだった。その後ろには相変わらず無表情なリアサがいた。

 この作品を書いていると執筆を初めた頃のように続々とアイデアが浮かんでくるんですよね。何度かあった経験ですので、この作品は長く書き続けられるなと勝手に確信している次第です。というわけですので読者の皆様には末永くお付き合い願いたいと思います。


 それでは!

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