ヴィゲラ
どうもシファニーです! そろそろ大学生活も2週間。段々慣れて……は、来ないですね。
第148部、第4章第12話『ヴィゲラ』です。どうぞ!
草原を歩いていると、少しずつ城壁の頭が見えて来た。それは灰色で、レンガ造りの壁。俺も1度だけ、確か1度目の人生の時に来たことがある。俺が勇者として活動していた頃だな。
魔獣やエルフに対しては、結構厳しい国だった気がする。
その名はヴィゲラ。人間諸国と魔の荒野との境界線を敷く、鉄壁の城砦都市だ。
「こんな大きな壁……シンラシンラに憧れてるのかしら」
「そうじゃないだろ、流石に」
「ですが、この大きさ。シンラシンラを覆う木々にも勝るとも劣りません」
「ん、おっきい」
街までの距離は目算2キロ。これだけの距離が相手いてもてっぺんが見えているのだから、流石の大きさだ。これは50年近く前からずっと変わっていないらしい。
「これ、普通に入れるの?」
「分からないな。検査を通れば入れるはずだけど。それ、人間なら、って限定される可能性もあるんだよな」
「そうなんですか? まあ、私たちエルフは森の中にいるのがほとんどで、知れ渡っていないので、仕方ないかもしれませんね」
「というか、エルフだけじゃなくて獣人とか、人間は亜人って括り方をしてるんだけど、人間以外全部認めてないって場合があるんだよな」
思えば、そういう国は結構多かった気がする。当時人間だった頃の俺からしてみれば普通ではあったのだが、こうしてエルフになると不便極まりない。
自分たち以外の種族を嫌う。それは極めて自然な発想だと思っていたが、いざ少数民族になって避けられる側になると、いい気はしないな。
「まあ試しに行ってみましょ。怒られたなら別の場所に行ってみればいいわ」
「それもそうだな。物は試しだ」
「優しいかもしれませんからね」
優しいかも、か。
優しいには優しいのかもしれない。国民を守ろうって考えている衛兵ばかりだろうから。ただ、だからこそ、俺たちのことを歓迎してもらえないような気がしてしまう。
先のことなんて予想は出来ない。一先ず行ってみることにした俺たちは、都市の入り口、正門に続く街道を辿るように歩き始めた。
程なくして、正門がはっきりと見えてきた。前に並んでいる人影は見えない。まあ当然と言えば当然で、こちら側は魔の荒野とシンラシンラ側の入り口。一般人なら縁もゆかりもないような場所だ。こっち側の入り口を利用する人なんて、滅多にいないだろう。
となれば当然、衛兵たちは俺たちの姿が見えてすぐ、警戒するわけで。
「そこの亜人たち、止まりなさい!」
「亜人って……ああ、私たちのこと?」
どうやら言葉は通じるらしい。
いやまあ、同じ言葉だなぁ、とは思っていたのだが。
エルフは完全に独立した種族のはずだ。聞き馴染みのある言葉ではあったが、生まれ変わった影響だと思っていた。スノアの言葉が通じたのも、まだ辛うじて納得できる部分があった。どちらかと言えばシンラシンラに近い場所だったから。ヒセだってまあ分かったのだが……ここまで来ると、ほんとうにどうしてなんだろう。
これまでも多くの学者が人間と亜人との関係について研究を続けて来た。祖は同じなんじゃないか。いや、それぞれがまったく別の種族だ。いやいや、地域によって肌色や髪色が違うように少しの違いがあるだけですべて人間だ。
どれも的を得ないような、確信を持てないような理論ばかりではあった。それでも、言語や文化をさかのぼればいろいろな可能性が見えてくる。
ただ今ここでエルフと人間の言語が同じだと判明した。これは、この研究分野において大きな進展を生むのではないだろうか。
なんて、呑気なことを考えていると。
俺たちは、衛兵たちに取り囲まれていた。
「ちょ、ちょっとどうするのよ」
「知るわけないだろ? 俺だってここに来るのは初めてなんだよ」
「使えないわね!」
「そんなこと言われてもな……」
槍を向けられ、10人くらいに囲まれている。ヒセは臨戦態勢を整えていて、レイカは俺とリィナの後ろに隠れている。
さて、どうしたものか。
言語の差って、この世界だと当たり前ですよね。特に日本に住んでいると、私たちの国ってすっごいちっちゃいんだなってくらい、世界では日本語が通じないわけで。英語も話せるようになりたいなぁとは思いつつ、言語学習をする時間があったら小説を書いてしまうという。
難しいですね。
それでは!




