人間の国へ
どうもシファニーです! 今日1限遅刻しました! 2度寝って致命的ですね!
第147部、第4章第11話『人間の国へ』です。どうぞ!
「では、わたくしはここまでということで」
俺たちは、リオネルの運転する風林車に乗ってシンラシンラの外にまでやってきていた。
レイカは風林車に乗るのが初めてらしく、ずっとテンション高めだったのだが、こうして降り立つ頃には少し背を曲げ、疲れている様子だった。
「ありがとな、リオネル」
「いえ、これくらいは。……くれぐれもお気を付けください、みなさま方」
「ありがとな」
荷物を下ろし終え、支度を始めるリィナたちを横目に、俺はリオネルに挨拶を済ませる。
そうすれば、リオネルはそそくさと去っていく。
こういう割り切りが上手いところ、参考にしたいな。
「リネル行くわよ。日が暮れちゃう」
「ああ、分かってる」
それにしても懐かしいな、人間の国。ここから一番近い国だと、ウィゲラ辺りになるだろうか。詳しい行先は、まだ決めていなかった。
ひとまず、目的も持たずに歩き始める。そう遠くない位置に城壁都市があったはずだ。人間の国と、魔の荒野やシンラシンラとの間にそびえたち、魔獣やエルフの強襲に対抗するための都市だったはずだ。
リィナが進む方角を見ればその通りになるだろうけど、あそこは果たして、俺たちを歓迎してくれるのだろうか。してもらえないならまあ、それはそれでいいだろう。また別の国に行けばいい。神器があるかどうかは運しだい。多少流されるままに旅するのも、反っていい結果に結びつくかもしれない。
そんなことを言ったら、ノエルは真面目にやれとでも怒るのだろうか。
その答えも分からないまま、俺たちは2時間ほど歩き続ける。小さな丘や雑木林、川を越え、平原に出る。シンラシンラの中を生きて来た俺たちエルフ、高い身体能力を持つ獣人であるヒセにとって、この程度は障害にはならない。
特に足止めを食らうことも無く歩き続けて、やがて、広い草原に出た。
「これは……壮観ね」
「ですね。一面の草原。こんな景色、見たことないです。空もこんなに青くて、白い雲がふわふわと」
「ん、気持ちいい」
特段、特徴も無い普通の平原だ。けどそうか。ずっと森の中で過ごしてきた種族と、荒野で過ごしてきた種族にとって、こんな景色でさえ、珍しいものになるのか。
地面に生え渡る青は、膝半ばまでの高さで乱雑に映える。風に揺れ、わずかな花の揺れる、確かな彩を纏ってる。
空に晴れ渡る青は、爛々と輝いて俺たちを照らす。悠々となびく雲は大きくて、地面に斑点模様を描く。
その広大な草原の中で、俺たちは佇んでいる。
ああ、そうか。ちょっとだけ、忘れてた。
草原に吹く風って、こうも心地いいんだった。どんな雑念も消え失せて、清々しい気分にしてくれる。そんな風のことを忘れていたなんて、正直信じられないな。けど、それも仕方ないんだろう。
「でもやっぱり、落ち着かないわね。こうも広いと」
「ん? 魔の荒野だって広かっただろ」
「あれはなんか、違うわ。殺風景だったもの。どこかに終わりがあるって、なんとなく分かった。でもこっちは、例え終わりがあったとしても……どこまでも、続いてしまいそうじゃない」
「そう言うのがいいんじゃなかったのか? だから、抜け出したいと思ってたんだろ」
「それは……いえ、少しだけ違うわね。私はただ、外の世界に行きたかっただけ。見たことない景色が見たかっただけだもの。ここまで広大である必要はないわ」
そうなのだ。
この景色は俺たちに達成感を与えてくれると同時、無限の可能性を示してくれている。それを祝福ととらえるか、呪いととらえるかは、人それぞれだ。リィナは俺と同じ意見だった。
こんなに広い世界は、俺には少し、勿体ない気がしてならないんだ。
「さ、行きましょう。十分堪能したわ」
「だな」
「ん」
「ですね」
草原を歩く。風が頬を撫でる度、草が足を撫でる度。妙なくすぐったさと、ほんの少しの居心地の悪さに襲われる。
ほんと、なんでなんだろうな。
何度やっても慣れないな。新しい場所に行こうとすると、いつもこんな気分になる。でもそれが、新しいってことなのかもしれない。
4月もラストスパート。1人暮らしも始まってそろそろ1ヶ月ですが、何とかやってます。ただこれがあと4年も続くと思うと憂鬱だったりはします。やらなきゃいけないこと、多すぎるんだもん。でもそれが大人になるってことだと信じて、頑張って行きます。
それでは!