家族の時間
どうもシファニーです! 奨学金申請が何とか終わりました。一安心です。
第145部、第4章第9話『家族の時間』です。どうぞ!
ヒセ、そして荷物を背負ったレイカを連れてリーヴァの所に戻りながら、リィナは頭を抱えていた。
「ちょっと、リネルも何か言ってくれなきゃ困るわよ。レイカを守れる自信があるの?」
「こういう時、何を言っても聞かない性格の持ち主は困るんだよな」
「なんで私の方を見ながら言うのよ。私はレイカと違って王族だから魔力は多いし、魔法の教育だって物心ついた頃から受けてきてるの。でもね、レイカはそうじゃない。魔力だってよくて人並みだし、魔法を扱う才能だって、伸ばしたところで高が知れてるわ。正直戦力として期待できる部分はひとつもないわ」
「あ、あのぉ、私に聞こえないところで、言ってもらえません?」
「あえて聞こえるように言ってるのよ。諦めてもらうためにね」
「う、うぅ……」
レイカが泣きそうだった。まあ、これだけボコボコに言われては敵わないだろう。ただ、リィナの言うことももっともである以上、レイカをただ庇うってわけにもいかない。
ヒセは何か意見はないかと思って見てみると、りんご飴を舐めていた。どっから持ってきたんだ。
「リ、リネル殿下ぁ。リィナ殿下を説得してください!」
「ちょ、リネルを頼ってるんじゃないわよ!」
「い、いいんです! 私を助けてくれるのかはリネル殿下が決めることです!」
「生意気な……! リネル!」
「リネル殿下!」
「いやいや……」
他人事のように見ていたら、一気に矛先がこっちに向いて来た。
「そもそも2人も自分のやりたいことをやっているだけだろ? いいじゃないか、好きにして」
「そ、そうですよね! 私は付いて行きます!」
「……ねえリネル、やっぱりあなた、私のこと嫌いでしょう?」
「レイカのことも好きなだけだ」
「ふぇっ!?」
「……あんたねぇ」
レイカはゆであがったかのように顔を赤くして目を見開き、何なら頭から湯気が出ているように見える気もする。
リィナは冷たく貫くように目を細め、腕を組み、力を籠める。
「あんたは仮にもこの私、一国の王女の婿なのよ? 私の目の前でそんなこと言って、即刻死刑にならないことを感謝しこびへつらいなさい」
「しないって分かってるから、言ったんだよ」
「……気に入らないわね」
「気に入らないとどうするんだ?」
「今度、私が満足するまでナイトゲームで勝負しなさい」
「なんだそれ、聞いたことないな」
「ボードゲームよ。それぞれ特性のある駒を交互に動かす。最終的に王の駒を守りきったら勝ちよ」
「ふーん、面白そうだな。好きなのか?」
「やったことないのよ。相手がいなかったから」
「分かった。やろう」
「約束を違えたら、その時こそ死刑ね」
「分かったよ、王女様」
満足そうに頷いて、リィナは歩みを再開する。
「そ、それで結局、私は付いて行ってもいいんでしょうか?」
「それで結局、あんたの好きにしなさいってことになったのよ」
「本当ですか!? なら絶対付いて行きます! お料理とか、お役に立てることはあるはずです!」
「ん、ご飯」
「おっ、ヒセは興味あるみたいだな。腕を振るってくれよ、レイカ」
「はい!」
一体どれだけ嬉しいんだろう。レイカの浮かべたう顔は、今までになく楽し気で、綺麗に見えた。
こんなことを言ったら今度こそ死刑にされかねないから、絶対に言わないんだけどな。
それから結果的にみんなが上機嫌になって、リーヴァの部屋まで帰って来た。
部屋に入り、見えたのはバルコニーで紅茶とお菓子を楽しむリーヴァと、それに付き添うローラ。
「ローラ、元気にしてたかしら?」
「はい。おかげさまで。リーヴァ殿下もこうしてお元気にしていらっしゃいますから」
「別に、私のおかげではないでしょう?」
「いえ。リィナ殿下がいらっしゃるからこそ、リーヴァ殿下もお元気なのです」
「そうね。リィナと、リネル君。2人がいてくれるだけで、私は元気でいられる自信があるわよ?」
「……はいはい、親バカはいいから。この子が話してたヒセよ」
照れ隠し、だろうか。視線を遠く背けながら、そちらを見ることなくヒセを指差す。
「ん、ヒセ」
「ヒセちゃんって言うのね? よろしく。私はここ、シンラ・カクの王女、リーヴァよ。リィナとリネル君がお世話になってるみたいね」
ヒセはふるふると首を振る。そうじゃない、と言いたいのだろう。
「ヒセが、お世話になってる。ご飯貰ってるし」
「あら、そうなの? ご飯を貰うって、リネル君から? リネル君って料理も出来たのね」
「ちょっと、どうして私が選択肢にも上がらないのよ」
「だって、練習したことないでしょ?」
「無いけど……言い切られるといい気はしないわ」
「ふふっ、だったら練習すればいいじゃない。リィナだって要領は良いんだから、きっとすぐに覚えられるわよ」
「そうだな。せっかくだしレイカから教わればいいんじゃないか?」
「私でよければ喜――」
「リネルに頼むからいいわよ」
「どうしてですかっ!? リネル殿下のお手を煩わせるまでもありません! 私がお教えいたします!」
「良いって言ってるじゃない。リネルで妥協するわ」
俺は妥協枠かよ、と突っ込むか迷ったが、やめておこう。レイカやリーヴァに背を向けて腕を組むリィナの横顔を盗み見れば、わずかに微笑んでいるように見えたから。
手続きを熟すの、しかも自分1人でやるのは初めてすぎて大変でしたが、何とかギリギリ通用しました。これからこういうことから増えると思うとぞっとしますが、大人になるための第1歩と思って頑張って行こうと思います。
それでは!