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お出掛けの支度

 どうもシファニーです! やっと金曜日です! 大学生活始まってまだまだ短いですが、ほんっと大変ですね。1人暮らしもしてますし、大変なことばっかり。けど、楽しいのでおっけーです!


 第144部、第3章第8話『お出掛けの支度』です。どうぞ!

 俺たちは、レイカを探してシンラ・プライドを回っていた。

 というのも、ヒセはレイカと一緒に部屋を出たわけではないらしい。静かに出て行ったレイカを見て、しばらくしてからヒセは出たんだとか。だから行先は見当もつかないという。


「まったく、あの子はどこまで行ったのよ。主人を置いていなくなるなんて給仕として失格ね」

「まあそう言ってやるな。気を使ってくれたんだろうから」

「それもどうか怪しいとは思うけどね」

「いやいや。レイカのことだし、そうじゃなかったとしても、なんか理由があるんだろうさ」

「たぶん、リネルはレイカを買いかぶり過ぎよ」


 そうは言うけど、レイカは気が利くし、いろいろ考えて行動してくれるので今回もそうだと思うのだが。

 たまに抜けているところもあるが、基本的には優しくて賢いのは間違いない。


「なんにしても、あとはここだけ」

「ここって何の部屋なんだ?」

「レイカの個室よ。給仕と言っても、それくらいはあるわ」


 なるほど。それはそうだ。レイカだって、俺の給仕をやっているから俺と一緒の部屋で寝る、なんてことはない。俺が寝る時には帰っていくし、朝起きる頃にはやって来る。部屋があるのは当然だろう。


「で、勝手に入っていいのか?」

「入って問題があったとして、レイカが私に何か言えるとでも?」

「そう言う考えもあったかぁ……」


 呆れを通り越して関心である。権力の横暴ここに極めりだな。


 リィナはそれ以上何を言うでもなく、ずかずかと部屋の中に入っていく。カーテンをくぐり、部屋を見渡した。


「えっと、これと、これと……。下着は……こ、これは大胆過ぎるでしょうか」

「そうね、レイカに余るものよ」

「ひぃっ!? リィナ殿下!? リ、リネル殿下まで! み、見ないでください!」


 レイカが一瞬にして頬を染め、手に持っていたものを抱え込んで蹲るのを、俺は何とも言えない心持で少し見た後、背を向ける。

 まあ、レイカも女性。性別を持つのなら、それ相応の感情や欲求があっても何もおかしくはない。

 レイカに恋人が出来た時には、喜んで祝福しよう。


「で? 何をしてるのよ。どこか出かけるの?」

「そ、それは……そうです! 私は、出かけます!」


 ゴソゴソ、と何かを片付けるような物音がする傍ら、リィナがレイカに問う。


「へえ、どこに行くのよ。友人なんていたかしら」

「いますよ! ラミだってロキシーだって! ……じゃないです!」


 それは知らなかった。レイカの個人的な話についてはあんまり聞いたことが無い。友人がいたなんて、そんな素振りは見せたことが無かった。これからはちゃんと、友人との時間は大切にして欲しいな。

 いや? もしかしたらこの数年、俺たちと会わなかった間に作った友達だったりするのだろうか。


「私、付いて行きますから!」

「いいわよ勝手にしなさい。で? 誰とどこに行くのよ」

「違います! そうじゃなくって!」


 バンッ、と強く何かを叩く音が聞こえた。たぶん、声のタイミング的にレイカだろう。でも、レイカが物に当たるなんて珍しい。

 思わず、レイカの方を見てしまった。


「私、リィナ殿下たちに付いて行くんです! 行かせてもらいます!」

「……は? 正気?」

「正気ですし本気です!」

「な、なんで?」


 リィナがうろたえている。それはそうだろう。レイカが声を荒げたところなんて見たことはない。

 普段起こらない子が起こると怖い、なんて話はよく聞くが、レイカの場合は別に怖いわけではない。目を吊り上げているわけではないし、むしろ頬を膨らませていて子どもっぽくリィナを見つめているだけ。睨んでいる、という風にも見えない。

 これはたぶん、レイカが普段優しすぎて、怒り方を知らないのが原因だろうな。


「これ以上お2人が私の見ていないところで危ない目に逢うのは嫌なんです! 傷ついて、悲しんで……それを一緒に感じることも、慰めてあげることも出来ないのが、嫌なんです!」


 それはたぶん、レイカが長い間抱えて来た本音だ。

 俺たちは今まで、レイカを置いて戦いに行くことが何度もあった。レイカがどれだけ俺たちのことを大切に思ってくれているのかを知りながら。

 それはたぶん、リィナも俺も、レイカを危険な目に逢わせたくないって思っていたからだ。リィナは絶対に認めないだろうけど、そうに違いない。

 

 でもたぶん、リィナや俺よりもレイカは素直だから。感情に素直で、膨らみやすいから。

 その感情がいつか爆発するのなんて、当たり前のことだったんだ。


「だから嫌と言われても付いて行きます! もう逃がしたりしません!」

「……そんなこと言われても困るわ。誰が、レイカのことを守るのよ」

「その必要はありません! 私、リアサ先輩に魔法教わったんです! 邪魔になったりはしません!」


 レイカの力説に、リィナは眉を顰めて考え込む。


「そもそも、私たちはこれからどこかに行く予定は――」

「行くのは知ってます。リィナ殿下がそう言うお方だと言うのは、知っていますから」

「……」


 レイカが途中でいなくなったのなら、リィナがリーヴァに伝えたことを知らないはずだ。でも、レイカはそれを言うより早くリィナがどう行動するか考えて、支度を始めていたのか。

 よく見れば、荷物もあれが最後だったらしく、木で編んだ背中に背負える程度の鞄にまとめられている。


「ほんとに気が利いてたな」

「言ってる場合じゃないわよ」


 リィナは、不満っぽくじと目を向けて来た。

 この前コンビニに自転車で行って買い物してたら、自転車の籠の中にたばこの箱を捨ててって気違いがいまして。私は何ともない顔でコンビニのごみ箱に捨てましたが、都会ってやばいですね。嫌いになりそうです。


 それでは!

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