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帰省

 どうもシファニーです! 大学が始まってから実に1週間が経ちました。明日からは本格的な授業も始まります。期待半分、不安半分ながらも頑張って行きます!


 第141部、第4章第5話『帰省』です。どうぞ!

 ここまで誰も触れてこなかった。いや、触れないようにしてきたことがひとつある。

 それは、リーヴァの容体について。

 俺とリィナは聞かなかったし、レイカも、たぶんあえて言わなかった。まさか忘れていたなんてこともあるはずはない。


 俺たちはリーヴァを救うために旅に出た。けれど、それは出来なかった。

 今こうしてリーヴァの部屋を目の前にした時、こんなにも緊張してしまうのは、罪悪感を抱いてしまっているからだろうか。


 筋肉が固くなるのを自覚していると、肘の辺りに軽いチョップが飛んできた。

 隣を見れば、リィナが腰に手をついてこちらを見上げている。


「なに緊張してるのよ。これから母親に会うのよ?」

「母親って、まだお母義さんとは呼ばないぞ?」

「その必要はないわよ。お母様はきっと、すでにリネルのことを息子のように思っているはずだもの」

「それは……そうかもしれないな」


 確かに、リーヴァは俺を母親として愛してくれた。優しくして、気に掛けてくれた。どうしてそこまでするのかってくらい。

 そこら辺から拾われてきただけの子どもだって俺に、そこまでのことを。

 でも多分、なぜって聞くのはお門違いなのだろう。さっきのリィナとのやり取りの中で再認識した。

 信頼に、信用に。大切にしたいと思う感情に、明確な理由なんて必要ないんだから。


「さ、行きましょ」


 リィナは、きわめて軽い調子でカーテンをくぐった。俺とレイカ、ヒセもそれに続いた。

 そう言えば、ヒセには待っておくべきだったかもしれない。きっと、面白いものではないから。


「あっ! リィナにリネル君! 帰って来たのね!」


 なんて思っていた時期が俺にもあった。


 カーテンの向こう側にリーヴァがいた。ベランダに出て、容器を浴びながら、カップを口に付けるところだった。足音を聞いて俺たちに気付いたのだろう。カップを置き、驚きに口元を抑えて立ち上がった。

 それに、俺とリィナも驚かされる。


「お母様? 立って大丈夫なのですか?」

「うん、今は凄く調子がいいの。2人ともこんなに大きくなって……私、嬉しいわ」

「って、無理しないでください。私たちがそちらに行きますから」


 向かって器用としたリーヴァをそう言って止め、リィナは駆け足でリーヴァに近づく。俺も、動揺を隠しきれないまま背を追った。


 そう言えば、ローラは言っていた。10年後、その時が来るまでは日常生活に支障がないほどだ、と。

 どうやらその言葉は本当だったらしい。


 でも、それは逆に、ローラの言うとおりであると言うこと。

 それ以上先のことを、俺は考えられなかった。それはあまりに恐ろしい想像だったから。

 今はただ、リーヴァの健康を喜ぼう。


「リーヴァ様、ただいま帰りました。元気そうで何よりです」

「リネル君こそ良かったわ。リィナに振り回されて、大変だったでしょ?」

「お母様、私は振り回してなんていません。……でも、本当に良かったです。お元気そうで」

「2人とも固いわよ? もっと緩い口調でいいんだから」

「そうは言われましても、私たちくらい立場を弁えておかないと、王族の意味がなくなりますよ」

「ですね。そこはリィナに賛成です」

「もう、2人ったら」


 リーヴァは頬を膨らませて不機嫌を露にする。腕を組む姿勢はリィナと似ている。ベランダに風が吹き抜けて、長い髪をかきあげた。その姿は、本当に絵になる。

 けど、どうしてだろう。


 その絵が、あまりに儚く見えたのは。


「……2人とも、本当に大きくなった。見ないうちに、大人っぽく。この前まで、あんなに小さかったのに」


 優しく目を細めて、リーヴァは微笑んだ。両手を広げて、歩み寄って来る。


 俺たちは顔を見合わせ、動かないことを選ぶ。むしろ、近づいておく。

 リーヴァは目を輝かせた。感極まったように、微笑んでいた表情が、満面の笑みに変わる。


 リーヴァが目の前まで来て気付いた。

 俺よりも大きかったはずのリーヴァの背は、俺よりも一回り小さくなっていた。大人びていると思っていた雰囲気が、こんなにも子どもっぽく見える。

 思わず頭を撫でたくなるような背丈で、細く、柔らかそうな肌をしている。目の前まで近づいて来て、ふわりと華の香りが漂った。


「ここまで育ってくれて、ありがとう」


 リィナとまとめて、力強く抱きしめられる。でもそれは痛くはなくて、むしろ温かい。むず痒くて、恥ずかしい。レイカにもヒセにも見られてる。たぶん、レイカは嬉しそうに微笑んでいるに違いない。ヒセは……あんまり気にしてないかも。


 隣を見る。リィナはどうしていいか分からなそうな表情で、リーヴァのことを見下ろしていた。そこでようやく、リィナもリーヴァの背を越していたことに気付く。

 俺たち、本当に成長したんだな。


 俺の視線に気づいたのだろうか。リィナがこちらを見て来た。

 しばらく目が合ってから、困ったように微笑んでくる。でも、嫌そうではない。むしろまんざらでもなさそうだ。まるで、困った母親ね、とでも言いたそう。


 ならせめて、俺は心の中からだけでも思っておこう。


 こちらこそありがとう、って。

 流石は4月。忙しすぎて目が回りそうです。何かやらなければいけないはずの大切なことを忘れているような、そんな不安が常に纏わりついてきます。正直小説どころじゃない程に。けど、逆に小説があるからこそその忙しさを少しの間だけでも忘れることが出来ています。

 今は息抜きのために。それでもいいと思いながら、必死に食らいついていきます!


 それでは!

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