最高のパートナー?
どうもシファニーです! 自転車がパンクしたので明日から電車通! 朝起きられるかなぁ……。
第140部、第4章第4話『最高のパートナー?』です。どうぞ!
シンラ・カクの街を歩くだけで、俺たちは当然のように目を引いた。
将来の女王と王となれば当然のことではあるが、やはり慣れない。ここで声をかけに来たりしないの、逆にエルフらしいと思う。
距離が近いからこそ会おうと思えばいつでも会える。偶然見かけたからと言ってそれをチャンスとも思わないのだ。
ただまあ、今回はわけが違った。そこかしこから好奇の視線が向けられる。
もちろん、ヒセに対してだ。
「なんか、目立ってる」
「まあエルフだけの街だからな。ヒセみたいな獣人は珍しいんだ」
「そうなんだ」
何十年、何百年って生きてても見たことが無いエルフがほとんどだろう。先程、来客に対する認識については更新されたが、エルフ本人に言われないと分からないくらいエルフは隔離された社会に住んでいる。
人間や獣人は今でも近づいただけで追い払われると思い込んでいて、寄り付きもしないはずだ。着たとしても、それこそ数百年に数度程度だろう。
「私も獣人の方をお迎えするのは初めてですね」
「そうは言っても緊張なんかはして無さそうじゃない」
「リィナ殿下とリネル殿下のお客様ですから。お2人の目に違いなんてあるわけありませんから」
「へえ、信頼されてるのね」
「当然です。でなければ、お2人は互いに婚約なんてしませんでしたよね?」
シンラ・プライドに入る。昇降機に向かいながらそんなことを問われて、思わず俺とリィナは見つめ合う。
「見る眼、あったか?」
「怪しいわね」
「ええっ!? 冗談ですよね!?」
「冗談か?」
「いえ」
「えぇ……」
レイカは信じられないものを見るような目でこちらを見て来た。そんな目を向けられましても。
「私、正直リネルのことを買いかぶってたわよ。別に強くないし、私を導いてくれたりなんてしない」
「ただの我が儘姫だからな。どれだけ振り回されてきたか」
「で、でも、それを打ち消して余りある魅力を感じているんですよね?」
「打ち消して余りある……?」
「失礼ね。私にはあるでしょう」
「俺にはないみたいな言い方だな」
「2人とも、喧嘩は、め」
「別に喧嘩じゃないぞ。意見交換だ」
「そうね。特にイラついていたりはしないわ」
「それがむしろ怖いんですよ」
たぶん、俺たちの共通認識として、互いに頼れる戦友ではあるのだ。たくさんの苦難を一緒に乗り越えてきて、息も合うようになってきた。大切な相棒であるという点では肯定以外ありえない。
「けど異性として魅力的かと言われると、なぁ?」
「男たるもの女よりも強くあるべきよ」
「リィナよりも弱いつもりはないんだけどな」
「あら? 火力では私に頼りきりなんじゃなくて?」
「リィナが攻撃に集中できるのは誰のおかげだと思ってるんだよ」
「あれぇ? お2人ってこんなに仲悪かったです~?」
レイカは頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。どうやらイメージとの食い違いが激しすぎたらしいな。
「仲が悪いなんてことはない。リィナは必要な存在だ」
「そうね。絶対に失くしたくないパートナーよ」
「じゃあどうしてそんなお互いずばずば傷つけあえるんですかぁ」
「「あー、そういうことか(ね)」」
「ん、2人とも、仲良し」
「急に息が合いましたね」
今のレイカの言葉を聞いて、俺たちの中にあった違和感の正体がわかった。
昇降機はやがて止まり、開いた扉から俺たちは外に出る。最上階。静けさが漂うその廊下で、俺たちは答え合わせをすることにした。
「俺はリィナのことが好きだぞ」
「ええ、私もよ。嫌いなんてことはない」
「異性として、愛してるはず」
「間違いないわね」
「よ、よく恥ずかし気もなく言えますね」
「別に恥ずかしくないからな。たぶん、レイカが思ってるのとは違うから」
「私はリネルのことが男性として好き。けどそれは結婚するならリネル以外ありえないってだけで、リネルが男らしいとか、理想の男性像ってわけじゃないわよ。だって私の理想様はお父様のような偉大な男性だもの」
「俺も似たような感じだな。子どもっぽくて可愛いとか思うこともあったけど、今となったら毒舌なだけで可愛げも無いし」
「何よ、この美貌で我慢しなさい」
「リィナこそ、俺はこれでも多才なんだぞ? 他にないくらいにな」
気付けば、思っていることを全部吐き出していた。
言いたかったこと、言うべきだったこと、全部。リィナが合わせるように吐き出してくれたから、すらすらと口から出て来た。
俺、こうして口にして分かったけど、本当にリィナのことが好きなんだな。
でも多分、仕方ないことだ。10年も一緒に成長してきた。支え合って、強くなってきた。好きにならないほうが無理というものだ。
あの子に抱いた淡い恋心とも、あいつに感じた抱擁感とも、あれが放った不思議な優しさとも違う。
そうだな、言うなれば。
「「心の支え、だな(ね)」」
「やっぱり、仲良し?」
「……みたいですね。まあ、やっぱりお互いに見る目が合った、ということでいいんじゃないでしょうか」
肩をすぼめて、レイカはそうまとめる。
どこか投げやりそうに見えたのは、気のせいじゃなかったと思う。
大学生活に慣れきっていないというのに高校時代からの相棒が傷ついてしまうとは。心の支えが小説とパソコンとスマホくらいになってしまいました。十分すぎますね。
そんなこんなではありますが、第4章お楽しみいただけているでしょうか。久方ぶりにしっかりと帰省。これからリネルとリィナ、ヒセがどんな風に成長していくのか私自身も楽しみです。
それでは!