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内部事情

 どうもシファニーです! また明日から大学ですよ。


 第139部、第4章第3話『内部事情』です。どうぞ!

「と、とにかく! 無事で帰って来てくれて、私は本当に嬉しいです! もう危ないことはしないんですよね!?」


 レイカは明るく微笑み、拳を握って力強く見つめてくる。それは確信と言うより期待に近かい感じなのだろう。どこか懇願しているようにも見える。


「それは、リィナしだいだな」

「そ、そんなぁ……」


 肩を落とし、今にも膝から崩れ落ちそうだ。何なら涙目ではある。よっぽど俺たちのことが心配なんだな。

 けど、その心配に適切な温度感で返すことが出来ない。自分の身を案じられた時、どうするべきか分からない。どうしたって他人事になってしまう。ここはまだ、慣れない感覚だ。


 自分の身を案じたことが無いってのが、1番の理由なんだろうな。


「まあしばらくは大人しくしているつもりよ。……色々と、謝らないといけないこともあるしね」

「謝らないと……?」

「ええ。……この話は置いておきましょ。とりあえず、みんなに挨拶しに行くわ」

「そう言うことでしたらご一緒しますよ。みんな、私と違って特段心配していないようで。もしかしたら、何ともなさそうに接してくるかもしれませんが」

「そうでしょうね。レイカじゃないんだから」

「わ、私がおかしいみたいに言うのはやめてください! た、確かに心配性なのは、そうかもしれませんが」


 なんて、レイカは恥ずかしそうに身を捩り、せわしなく視線を彷徨わせる。

 こう言う感情豊かな姿を見ていると、なんだか懐かしくなってくるな。このシンラ・カクに来て、初めて親しくなったのはレイカだ。いつも飽きさせない表情を見せてくれていた。

 きっとまだ、たくさんの表情を見せてくれるに違いない。


 そんなことくらいは、期待できるんだけどな。


「じゃ、早速行きましょうか」


 道中、当然の流れでヒセを紹介することになった。


「獣人……結構可愛いんですね?」

「ヒセは特別だと思うぞ。歳は俺たちより上なのに幼体だからな」

「あ、そうなんですね。ヒセ様、でしたか。よろしくお願いします」

「ん、よろしく」

「ちなみに、厳密に言うよ幼体じゃなくて、ステージ2って言われている。人間で言うと青年期って感じなんだけど……エルフってそう言う区分あるんだったか?」

「区分って言われても分からないわよ。そんなのあったかしら」

「ないん、じゃないですかね。エルフは寿命が長いですし、リチャード様のように1000年近く生きられる方もいて、どれくらい生きるのが常識、みたいのも聞きませんから。むしろ、今リネル殿下に言われてそう言う文化もあるんだなと思ったくらいです」


 なるほどな。そもそもエルフは20歳を超える頃には容姿の変化も無いわけで。

 それまでのことを子どもとしても、それ以降をどう分ける、みたいな考えは生まれ無さそうだよな。エルフの文化を考えれば子どもも大人も同等に扱うわけで、成長具合によって呼び方を変える必要も無さそうだ。


「えっと、そうなるとヒセ様は来訪者と言うことになりますよね?」

「だな。……大丈夫だと思うか? 急に連れてきちゃって」


 ここまで連れてきておいてなんだが、駄目と言われてもおかしくはないと思う。

 エルフってのは閉じた社会を形成している種族だ。他種族を拒み、エルフのみで社会を形成したがる。代わりにエルフ内での結束は強いという、典型的な。

 だから俺が人間の頃はエルフの集落にだけは絶対近づくなって言われてて、というのも近づけば命はないなんて言う風に考えられていたのだ。

 その考えに則るのなら獣人であるところのヒセも駄目なわけで。


「え? 別にいいと思いますけど」

「やっぱりそうだよな。……え、いいのか?」

「はい。まあ一応、みなさまが驚かれないように周知しておく必要はあるかと思いますが、そちらは私が手配しておきましょうか?」

「出来るなら頼むわ。そこがちょっと心配だったのよね」


 話を聞いていると、リィナもヒセを拒まれるかどうかより、手続きを面倒くさがっていただけのような物言い。


 あれ? 過剰な心配をしていたのは俺だけだったのか? そう言えば、リィナがヒセと出会った時、獣人と言うだけで避けたりは一切していなかったような。俺はリィナが特別なだけだと思っていたが、どうやら違ったらしい。


「あれ、ここって他種族禁制の街って感じじゃなかったのか?」

「違うわよ。ただ客人を招くのが嫌いってエルフは多いけどね」

「私たちとは価値観が違うことが多々あり、揉め事が絶えないのは事実らしいですね。過去には、他種族が来る度武力で追い払っていた時期もあるらしいです。ですが、例えば今回のように招待した相手なら、ある程度は受け入れられていますよ。数が多いと拒まれるのが一般的なんですけどね」

「そうだったのか」


 どうやら、過去の出来事が尾を引いていただけらしい。珍しいことではないが、情報の精査の大切さは大事ということを、なんとなく感じてしまった。

 明日1限から体育らしいですよ。高校が終わって、芸術系の大学に行ったのに体育とは。しかも必修、種目は抽選と来ました。時間割すら決めさせてくれません。大学って大変ですね。


 それでは!

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