ただいま
どうもシファニーです。大学初日から遅刻しそうになりました。
第135部、第3章第43話『ただいま』です。どうぞ!
ノエルとの会話を、すべて思い出した。
俺は、スノアの顔を見た。
明らかに喜びとは違う涙を、流しているように見えた。
「どうして……」
思わず零した問いの意味を、スノアは正しく理解してくれただろうか。
ただ一瞬涙が止まり、代わりに曖昧な笑みがこぼれた。
いや、今の俺になら分かる。
それは、悲しさを誤魔化すための笑みだった。
「フェーがね、もう疲れたって、言ったの。これ以上生きてたら、傷つけたくないものを傷つけてしまうから。私を、失ってしまうかもしれないから。そう言って」
リィナを見る。すると、静かに首を振った。
きっと、言葉を喋ったわけではないのだろう。スノアにだけ伝わる何かで、思いを告げたのだ。
「そしてもう1つ。新しい仲間を、友達を、大切にするといいって。……だからリネル。もうこれ以上は、聞かないで。お願い、だから……っ」
堰を切ったように涙が零れだす。俯き、体を苦の字にして泣きじゃくる。
これが、俺には出来ない決断。
1度も出来たことはない。大切な人を、殺すという選択。いや、違うのだろう。
苦痛から、開放する。
俺は今までずっと、その逆をして来た。大切な人を苦しませるくらいなら、俺がすべての苦痛を受け止めたいと、そう思って来た。
ああ、そうだな。確かに俺には出来ない決断だ。
力が入らなかった。ひとりで立つのも、たぶんままならない。
「ちょ、リネル!?」
「リネル、安静に……」
リィナとヒセの声を無視するように体を起こす。立つのは無理だから膝をつき、這いずるようにスノアに近寄る。
スノアは俯いていて、気付いてない。そんなスノアの小さな体の前で、膝立ちになる。
正しいやり方なんて知らない。効果があるかも分からない。だけど、そうせずにはいられなかった。
だって、俺が苦しい時に救ってくれたものだから。
「……へっ?」
分からないながらに腕を広げ、力加減も知らないままに抱きしめた。スノアの体は震えていたけれど、その震えを抑えつけるつもりで。
「リ、リネル?」
スノアは戸惑いの声を上げる。けれど、声は震えていなかった。
体の震えも次第に納まる。むしろ、同様に固まってしまう。動けなくなったスノアの体を、俺は抱き続ける。
「う、動けないんだけど……。な、何か言ってよ。……って、リ、リィナ!? や、やめ、やめて!」
スノアの小さな悲鳴の後、横から何かに圧迫される。いや、抱き着かれる。
というか何かと言うのもおかしな話か。
「まったく、しょうがないわね」
リィナは俺とスノアを、丸ごと両手で包み込む。
「ん、ヒセも」
「ヒ、ヒセまで……もうっ」
ヒセは、小さな体でスノアに身を寄せる。でもその両手を精一杯に伸ばして、俺とリィナに届かせた。
スノアは不満っぽい言葉を告げる。けど、その声音は明るく輝いているようだった。
「ありがとね、みんな」
そして、不安げに宙を漂っていたその両手で、力いっぱい抱きしめた。
今日から各授業のガイダンスです。1限ごとに90分。高校の50分と比べて2倍に近しい長さで、正直眠くなったりもしました。でも、やっぱり初めてのことって楽しいんですよね。サークル体験含め、全力で楽しんできました。
なんだかふと創作意欲が湧いて来て、また新作のプロットに手を付けたりしてたりしてなかったり。
慌ただしい日々になるとは思いますが、これからも頑張ってまいります!
それでは!