雪山の真実
どうもシファニーです! 明日また大学! 今日は新しいノートPCも買ってきましたし、モチベは多少回復傾向です。
第133部、第3章第41話『雪山の真実』です。どうぞ!
「リネル!」
俺が目を開くと同時、歓喜に溢れたような声が聞こえて来た。
焦点の定まりきらない目で周囲を見渡し、しばらくしてから金髪を見つけた。横に伸びる長い耳と、宝石のように青く輝く瞳を持った少女だ。
「リィナ?」
瞳の淵に涙をため、ぐちゃぐちゃになった表情でこちらを見下ろすリィナの声は、酷く震えているようだった。
「ほんとに、ほんっとうにバカッ! 私を庇って死にかけてんじゃないわよ!」
目覚めて早々罵声を浴びさせられるとは、思っていなかった。
どうやら俺は今リィナに抱き抱えられているらしく、俺の背中には細く柔らかい腕の感触がある。
それ以外にも触れられている気がして視線を巡らせると、左手にはヒセが、足元にはスノアがいた。
さらによく見てみると、奥の方には丸くなって小さくなったフェーの姿も見えた。
「本気で、本気で心配したんだから!」
ぎゅっ、と強く抱きしめられる。
リィナの全力の抱擁。圧迫感はなく、柔らかく、暖かい。まるで神林弓から伝わる温かさのよう。
いや、それよりもずっと直接的で、全身にふわりと広がって包まれる。
泣きじゃくり、弱音を吐くリィナの姿は何度も見てきたことがある。けれど、こんなに直接的な感情を向けられたのは初めてだ。
「良かった……無事、だよね? 痛かったりしない?」
「……リネル、大丈夫?」
スノアとヒセからもそんな言葉が投げ掛けられる。
スノアは俺に触れることなく、ヒセは左手を強く握りしめながら見上げてくる。
お互いに、その手に神器を握り締めて。それも、協力な魔力を放ち続けた状態だ。今は少しずつ開放が収まりだしているみたいだが、普通の人じゃ耐えられない程じゃないだろうか。
俺は3人に生存を喜ばれる中、ノエルとの会話を思い出す。今こうして衝撃が少ない状態なのは、ノエルがすべてを教えてくれたから。
最初の驚きは、俺の生存を知らされた時だった。
「貴様は、まだ死んでいない」
「……は? いやいや、嘘だろ? あれで死んでないなんて。それに、生きてるならここには来ないだろ?」
「嘘などつくわけがない。貴様は死んでおらず、現世で生きている。ただ、仮死状態ではあるがな」
「仮死って……なんでそんな状態なんだよ」
確かに俺は胸を貫かれた時、今まで死んできたのと同等の苦痛を感じたはずだ。
何度も死んできた俺だからこそ、死ぬときの感覚は分かっている。もしそれで死んでいないんだとして、死ぬ寸前の端だ。仮死状態なんて、そんな中途半端なことはないだろう。
「ふっ、いいだろう。貴様はずっと勘違いをしていたようだから、すべて教えてやる。どうせ、時間はあるのだしな」
「あるのか? というか、その言い方だと俺はリネルのまま現世に戻る、ってことか?」
「そうなるな」
「そうなるなって……それで? 結局どうなんだよ。何を勘違いしてたんだ?」
「そう焦るな。順に話す」
言われ、焦る気持ちを静めるように席に座り直す。
「まず、貴様は大きく勘違いをしていた。フェーと呼ばれる魔獣。その名の由来は太古に存在したドラゴンに匹敵する強力な魔獣、フェンリルから来ている。が、何の共通点もない。あの魔獣は、神器の加護を受け強力に成長した特殊変異個体だ」
「特殊変異って……そんなものがいるのか」
「ごくまれに発生することがある。主に、強力な魔力に触れ続けることが原因となるが、フェーの場合は氷血の槍から発生する魔力を得続けた結果だ。そして、その副作用として、氷血の槍の権能である無限修復を受け続けた。結果として、かの魔物は氷血槍の傍にいればいくらでも自己蘇生が可能になった」
「……氷血槍の周りにいれば?」
「そう。今回フェーが暴走を始めた理由は、体に受けた傷が、氷血槍が遠く離れたことで歪に治癒され、魔力の乱れが生じたためだ」
「じゃあ、周囲に溢れてた生命力は、フェーじゃなくて氷血槍が原因だったってことか?」
「そうだと言っているだろう」
……言い方はムカつくが、答えてくれてはいる。
つまりは正しいと言うことだ。
「じゃあ、俺たちがスノアを連れ出したことで、フェーはああなったって言うのか? だとしたら、俺たちはフェーを苦しめた挙句、手をかけたって言うのか?」
「そうだな」
「……」
そのあまりにも淡白な反応に、俺はどう返すべきか、言葉を見失った。
こっちの都合で弄び、殺す。そんなむごいことをしておいて、平気な顔なんて出来るだろうか。
「……貴様は今まで幾度となく命を奪い、更にはあざ笑うかのように転生を繰り返した。その貴様が今更高々1体の魔獣の命を奪う程度で消沈するとは、皮肉だな」
「うるさい……まだ聞きたいことはあるんだ。全部答えてもらうぞ」
「いいだろう。こちらからも、伝えておかぬことはあるからな。では、どこから話すとするか」
俺は、ノエルの話に耳を傾けた。
推理小説に答え合わせ編ってあるじゃないですか。それです。
それでは!