スノアの挑戦
どうもシファニーです! エイプリルフールではありますが、ネタは用意できませんでした! 来年は用意しておきます。
第128部、第3章第36話『スノアの挑戦』です。どうぞ!
俺は、目の前に迫った大きな爪を間一髪のところで躱した。
足を止めることなく距離を取り、3本の矢を引き絞り、放つ。
攻撃直後の隙を見せるフェーに命中するも、どれも氷に弾かれて地面に散らばる。フェーは苛立つように唸り声をあげ、俺へ向けて跳躍する体制を整える。そして跳ぶ直前、何度目かの爆風が吹き荒れる。
それはフェーの体表を削り、意識を乱す。
これと似たような攻防を何度行っただろうか。フェーの怒りは、頂点に達しようとしていた。牙を出し、威嚇するように喉を鳴らす。
「……リィナ、大丈夫か!」
「問題ないわよ! そろそろ休ませてくれてもいいと思うけど!」
「だな。ヒセはまだか?」
状況を一変させるだけの策に欠けていた。ずっと平行線。
それも、俺の予想だとフェーに疲労感はない。生命力を放ち続けるフェーにそんなものがあるわけがないから。
希望を求めてヒセを見る。そろそろ目覚めてくれただろうか、と。
そして目を疑った。そこには武器を持って立ち上がる小さな女の子がいた。
だが、そこに立っていたのはヒセではなく、スノアだった。
決意を固め、戦う目をしたスノアだ。
「スノア……? いや、分かった。スノア! 行けるんだな!」
「リネル? うん、いける! 戦う!」
「スノア? ……へえ、いいわね! じゃあ一緒に行くわよ!」
「お願い!」
スノア。神器に選ばれし者。その実力は中途半端なれど、その素質は本物。
いいじゃないか、賭けてみよう。
その、何度打たれようと立ち上がる意思の力を。
「スノア、俺が隙を作る! 角をぶっ壊して見せろ!」
「うん!」
「私も援護するわよ!」
スノアが駆け寄ってきている。ならばそれまでに、大きな隙を作って見せようじゃないか。
「フェー! 今すぐ解放してやるからな!」
矢を手に取る。引き絞り、放つ。
その矢はやはり貫通力を持たないが、フェーの意識を十分に惹きつける。
「リィナ、全力で足止めだ! スノアに攻撃させる隙を作るぞ!」
「分かってるわよ! 特訓の成果、見せてあげるわ! 《アース・バインド》ッ!」
リィナの詠唱と同時、舞台の足場が揺らぎ始める。
フェーが四肢を踏ん張り、周囲を警戒する。地震をも彷彿とさせるその揺れに、フェーとは言えど動揺を露にする。
その動揺が命とり。フェーの体を覆うように地面がはい出し、無数の細い縄のようになってフェーを拘束する。その拘束を解くことは決して困難なことではないかもしれない。
けれど、拘束を解くのには時間がかかる。それだけの時間があれば、十分なはずだ。
「スノア! 今だ!」
「うん! フェー、行くよ!」
スノアがその槍を高く掲げる。そして、その槍先を角に全力て叩きつけた。
ガラスの割れるような甲高い音が響く。スノアの槍が破片となって飛び散る。
着地と同時、スノアの似て再び槍が握られる。
「っ、それでも!」
握り直す。横に振るった槍は、角に打ち付けられて四散する。
「まだ、まだっ!」
歯を食いしばる。
スノアの目は死んでいない。
もう1度槍を握り、今度は下段から上段へ。四散。
左から右へ。四散。右から左へ。四散。上から下へ。四散。
それから何度、攻撃を繰り返しただろうか。その場の皆が、動きを止めていた。フェーですら、拘束を解くことをやめて立ち尽くした。そして見つめる。何度打ち砕かれようとも立ち上がり、何度も何度も挑戦し続けるスノアのことを。
まるで、初めから正気を保っていたかのように。
「もっ……と! フェーの、ために!」
もう1度振り上げた槍の先端が、強く輝いた。今まで感じていなかった壮大な魔力が、淡く放たれ始めた。
「はああああああっ!」
槍は角の先端に触れ、刃の根元から砕かれる。
手元の槍が消え去った。けれど、スノアの手はずっと握る形のまま。
すでに足は震え、息は切れ切れ。白い息を吐き、肩で呼吸していた。両手は赤く凍傷し、髪はボロボロに乱れている。
「それっ、でも……私は、フェーを……っ!」
再び、スノアの両手に槍の柄が現れた。けれど、それより先が形にならない。固まるようになった瞬間、淡い白となって霧散する。何度かそれを繰り返した後、スノアは膝をついた。
槍の柄を支えにするように、前のめりに俯いた。
エイプリルフールと言っても私今日一日部屋にい続けたので誰にも嘘をつかれていないっていう。
来年は、もうちょっと人との関わり増やそうかな……。
それでは!