すれ違い
どうもシファニーです! 引っ越しの準備を始めたのですが、教科書を片付け終えた段階で疲れちゃいました。
第115部、第3章第23話『すれ違い』です。どうぞ!
「これって勝手に閉じるものなのか?」
「分からない。私も見たことないから。でもふたりが入ってきた時は開いたままだったよね?」
「ん」
どういうわけだろうか。閉めた覚えのない扉がひとりでに閉まるなんて。
「フェーが起きて閉めた……とか?」
「ありえない話ではないな。開けてみるか?」
「そうだね。じゃあ、手伝って?」
スノアもこの扉はふたりで開けなければいけないことを知っているのだろう。だからそう言って扉の方へと近づいていく。
そこで疑問が沸いた。
「あれ? スノアはここに初めて入る時どうやって開けたんだ? ひとりだったんだろ?」
「え? ……ううん、違う。私をここまで送り届けてくれた子がいたの」
「その子は……そういうことか」
「うん」
俯きがちにスノアはそう答える。
つまり、すのあを守るためにここまで一緒に来て、扉を開けてくれた人がいたが、その人は外に戦いに出てしまって帰ってこなかった、ということなのだろう。
きっと辛い思いをしているに違いない。
これ以上深堀するのもよくないだろう。そう考えてしまうと黙り込むことしかできない。
俺たちはそのまま扉へ向かい、一緒に扉を開くことにした。右が俺、左がスノアで扉に手を添え、力いっぱいに押す。
「……あれ? 開かない……」
「ほんとだな。ヒセ、スノアの所を手伝ってやってくれるか?」
「ん」
ヒセにお願いし、スノアを手伝ってもらうことにする。ヒセがスノアの隣まで向かい、俺たちは息を合わせて扉を押す。が、開かない。何かが使えているというよりは、端からまったく動かない。
まるで金具が固定されているかのようだ。
「どうなってるんだ?」
「分かんない……でも、ここを管理できるのはフェーだけのはずだよ」
「そもそもフェーって狼以外に誰もいなかったしな」
「あ、それは違うよ」
「え? 他に誰かいるのか?」
誰もいなかっが気がするけど。
「人じゃない。フェーの子どもたちがいる」
「そんなの居たか? 見えなかったが……」
「この雪山全体を徘徊してる。それが時々帰ってきたりはしてた」
「全体を? それなら、確かに見たかもしれない。俺たちが雪崩に巻き込まれた時に」
「え? じゃあもしかして、その子たちも巻き込まれちゃったの?」
「た、たぶん」
どこか焦るように聞いた来たスノアに、俺は罪悪感から言葉を詰まらせながらも答える。出会ったときは敵として認識していたが、スノアやフェーの話を聞いて敵とは思えなくなっていた。
それを倒そうとして、その上雪崩に巻き込ませてしまったのは心苦しい。
だが、スノアはそれを責めていたわけではないらしい。
「……みんな、臭いを覚えて群れの中で共有するの。吹雪だったって言うしそこまでちゃんと覚えてないはずだけど……。その、リィナ、だっけ。リネルの仲間。ふたりは私と一緒にいるから大丈夫だったけど、そのエルフの人だけ狙われてるって可能性はある」
「え? それは狼たちに、ってことか?」
「うん。外から来た敵だ、って思って攻撃してるかも」
「マジかよ……でも、それと扉が閉まっていることとは何も関係ないよな?」
「……もしかしたら、あるかもしれない」
少しの間を置いてスノアは答える。何か嫌な考えが浮かんだのだろうことはすぐに分かった。
「フェーも敵視しちゃったのかも」
「敵視すると、どうなるんだ?」
「リィナはここに来たんだよ。それを察知してフェーがここを閉じちゃった。で、リィナは今フェーの子どもたちに追われてるんじゃないかな」
「嘘だろ? だって、フェーはずっと寝てたじゃないか。それともやっぱり起きたのか?」
「寝ててもなんとなく分かるのかも。フェーは凄い魔物だから」
「それは……なるほどな」
確かにフェーは砂の王や巨大蛇と同等の力を持つ魔物のように思えた。つまりドラゴンとも同等の力を持っている。それならそんなことが出来ると言われても不思議はない。
「……ん? リネル、あれ」
「ヒセ? あれって?」
ヒセが何かに気付いたらしく、その方向を指差した。
何だろうとそちらを見ると、扉のある部屋の壁に不自然な穴があった。あなたと言うよりはむしろ出入り口のようで、壁の向きが変わって開いた扉にも見えた。
「なんだあれ……あんなのあったか?」
「無かったと思う」
ヒセはふるふると首を横に振る。
「だよな」
「あれは私たちが使ってた通路のひとつ。ここに繋がる通路がいくつもあるって言ったでしょ? でもフェーがいる部屋を簡単に見つけられたら困るから隠し扉に下の。そのひとつ」
「じゃあ、リィナはそれを見つけてここまで来たってことか」
「たぶん」
だとすると俺たちと入れ違いになったわけだ。動かなければよかったと思ってしまうが後悔しても仕方はない。どちらにしてもリィナがこの近くにいることは分かったのだし探す場所が減ったことに変わりはない。
「行く?」
「もちろんだ。リィナが襲われているかもしれないなら助けるしかない。……その時狼と戦うことになったら……」
どうすればいいか。
その意思を込めてスノアに視線を向けると、スノアは気まずげに微笑んでから口を開く。
「フェーはともかく、子どもたちはそこまで賢くない。言葉が分かったりもしないから、戦いになっても仕方ないと思う」
「そうか。なら、その時は覚悟を決めるとする。ヒセも、極力戦わないようにしてくれるか?」
「ん。頑張る」
「よし。じゃあ出発だ!」
俺たちは、その隠し扉の中へと歩き出した。
ガスの契約やら何やらやらなきゃいけないことが多くて大変ですね。
ひとり暮らしってそういうものだと分かっていながらもそう思わざるを得ないのは、私が実家暮らしに慣れすぎちゃってるせいなんでしょうね。居心地がいい家を作ってくれた両親やその他に感謝感謝です。
ってなわけで引っ越しが近いです。何とかして書きだめを作っておかないと更新できない日があるかもしれません。そうなったら、大変なんだなぁ、と温かい眼差しで更新を待っていたくださると嬉しいです。
それでは!