氷血槍
どうもシファニーです! 今日のテンポの関係上短くなります!
第106部、第3章第15話『氷血槍』です。どうぞ!
氷の槍が目の前に迫ったその時、とっさに半身になって槍先を躱そうとしたのだが、その直前にヒセが割って入って来た。
槍が魔剣に触れると同時、ガラスの割れるような音と共に槍が砕けた。
それを見て、少女はすぐにバックステップを踏んで距離を取る。
「神器だと思ったのは、気のせい?」
神器だったらあんな簡単に砕けるはずはない。ただ魔力が絶大だっただけかと思っていたのだが、それはそれで不思議だ。
あの少女は、どうやってあれだけの魔力を持った槍を生み出したのか。
そこまで考えて過ぎった俺の予想は、少女の行動によって正解を裏付けられる。
「……強いけど、フェーは傷つけさせない!」
より一層険しい表情を浮かべた少女は、再びその手を強く握った。その直後、先程見たのと同じ氷の槍が出現した。
「直った?」
「いや、もう1回作り直したんだ。たぶん、そうな力を持っている神器だ」
「神器。……ヒセたちと、同じ?」
「ああ」
神器は世界各地に散りばめられている。
例えば魔剣は荒野に、神林弓は森林に。そして、少女の神器はこの雪山にあったものなのだろう。
それぞれその土地に根付く信念や力を持っている場合が多く、魔剣ならどれだけ過酷な環境でも生き残るための力。神林弓なら広大な自然で共生するための力。
ならば、彼女の神器は何を司っているのだろうか。
「なあ、待ってくれ。俺たちは本当に傷つける意思はないんだ。なあ、せめて君が俺たちを敵視する理由を教えてくれないか?」
「だって、外の世界の人! 外の世界の人はフェーを傷つける!」
「それは誤解だ! 俺たちは誰も傷つけたりしない!」
やっと分かったが、フェーと言うのはあの狼のことだ。
俺たちの他にもこの雪山を訪れた者がいて、その者らがあの狼を傷つけた。少女はそのせいで外から来た俺たちを警戒し、狼を守るために戦おうとしているということなのだろう。
「嘘! 雪山が、叫んでる。あなたたちは強くて、この雪山によくない影響を与えるって!」
「叫んでる? この雪山は生きているのか?」
「吹雪いているのは叫びの証。そのことが分からないあなたたちのことを、やっぱり私は信じられない!」
「っ、待つんだ! ヒセ! 怪我させちゃ駄目だ!」
「む、難しい……」
少女は再び向かって来る。
その手に握りしめた槍は、勢いよくヒセに向かって振り下ろされた。
ヒセはそれを剣で防ぐ。それと同時に、槍が砕け散った。
間髪入れずに槍が造り直される。叩きつけ、再び壊れる。また造る。
それを何度繰り返しただろうか。
少女は白い息を吐き、肩で息をした。
距離を取り、膝に手をついて息を整える。
「っ、つ、強い! その剣も、特別なの?」
「ん。命の恩人から貰った」
「この特別は、やっぱり私だけのものじゃなかったんだ……でも、でも、それでも、諦める理由にはならない!」
「……まだ、来るの?」
少女はすでに疲労困憊の様子だ。
この寒さの中、ほとんど着込んでいないのにも関わらず動いているのは凄い。けれど、体力や筋力に関して言えば普通の少女と変わらないらしい。
槍の握り方はなっていないし、体の使い方だってド素人。正直なんでこんな子が神器に選ばれたのか分からない程だ。
それでも挑んでくる。力量差は歴然で、勝ち目なんてないはずなのに。それなのに、向かって来る。
両手で握りしめた氷の槍は、その矛先を真っ直ぐヒセに向けていた。
一点を貫く一撃は強力かもしれないが、攻撃面積があまりに小さい。そんな攻撃は、当然ヒセに当たらない。
そのはず、だったのだが。
ヒセが大きく体を動かした後、少女の槍はヒセにぶつかる。
少女の目が見開かれ、歓喜に揺れる。
それから間もなく、力なく倒れた。
「ヒセッ!」
槍を当てられたヒセの体は、静かに佇んでいた。
明日はみんな大好き初音ミクちゃんのお誕生日……ではないんですね、これが。誕生日は別日ですが、まあミクの日です。だから何ってわけじゃないんですけど、いつか、初音ミクを題材にした短編を書いてみたいんですよねぇ。私、ミクって大好きなんです。
だって、世界で1、2を争う2次創作作品数を誇るコンテンツですよ? 私も手を出したいじゃないですか。
てなわけで、いつか書くぞ! って思っときます。
それでは!