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8 綱引き

綱引きです。オーエス、オーエス!

「夕飯までもう少し時間がありますけど、どうしますか?」


 楽しそうなみんなを見ながらアレクさんに聞くと、うーんという顔をしてから


「できればもう一つくらい教えてほしいな」


と言ったので、大玉運びとローハイド…綱の先に網に入ったボールが付いた物を振り回して缶などの的に当てるリレー式の競技だ…のどちらがいいか聞いてみた。


 大玉運びはけが人や武器・物資を運ぶ担架が使えそうだが、大玉があっちこっちユラユラするのが肝なのでそれが準備できない今日は無理そう。


 ローハイドは鎖の先に鉄球が付いている武器とかがあるのかと思いきや、そういうものは無いそうで、逆にアレクさんに


「そんな物騒な武器をなんで知ってるんだ…」


と怪訝な顔をされてしまった。


 そうか、あれって本当にはないんだ…。ゲームとかの世界だったらありそうなのものだけど、ないなら鉄球じゃなくても網に石でも入れて、と思ったところで「そこまで危険なもので戦わなくてもいいよね」と考え直して「機会があれば次回」ということにした。そんな機会があるかどうかわからないけど。


 そこまででちょっと時間がかかってしまったので、単純にできる「綱引き」をすることにした。「綱」は討伐…なんのかは訊かなかった…とか伐採とかに使うこともあるそうで、とても立派なのものがあった。


 切れたら大変なので、よく見て弱っているところがないか確認し、真ん中とそこから両脇それぞれ1m弱くらいのところに包帯を結ぶ。背の高いモーガンさんに真ん中に立ってもらって手を大きく広げてもらったので大体合っていると思う。適当だけど。


 ということで、綱引きの準備が整った。地面にも結んだ包帯と同じ間隔で3本線を引き、綱を置く。10対10なのでやや寂しいがみんな体格はいいのでいい勝負になるだろう。


「両手をあげて、私の合図で綱を持って引っ張ります。絶対に手を離してはいけません。勝負が決まっても、です。私が合図をしてから、綱を持ったまま静かに力を抜いて、綱を置くようにしてください。勢いがついたまま離すと大怪我につながりますからね!」


 うるさいくらい注意してから用意させる。私は落ちていた木の枝、先に葉っぱがついていていい感じに旗の代わりになりそうだ、を持って綱の真ん中を指し示し、


「ヨーイ、ドン!!」


と同時に枝をあげた。


 みんなが素早く綱に取り付いて持ち上げ、必死で綱を引く姿に、


「フレー!フレー!み・ん・なー!!オーエス、オーエス!」


と声援をおくる。


 綱引きなんて見たことがないはずなのに、みんな身体を後ろに倒してグッグッと呼吸を合わせて引いている。徐々にモーガンさんのチームが下がり始める。私も手に力が入る。包帯が外側の線を越した。


「そこまで!」


 枝をビャッとあげて終了を告げると、みんなからハーともフーともアーとも言えない声が出て綱が緩んだ。


「只今の勝負、…こちらの勝ち!」


 チーム名を考えていなかったので、枝で勝った方を示すという微妙な結果発表になってしまった。それでもみんなは嬉しそうでお互いの肩を叩き合っていた。次は紅組・白組で分けよう。それはそれとして、


「みんな頑張りましたね!すごくいい勝負でした!!」


そう拳を握る私にみんなの目が何やら生温い。


「…なんですか?何か問題でも?」


「…いや、さっきのさぁ」


「さっきの?」


「フレーフレーとかオーエス?とか…聞いててなんだかおかしくて」


「あ、やっぱり?ピョンピョン跳ねてるし…俺も笑いたくなっちゃって大変だった」


「力抜けそうだったよな。エリカ殿、大人しそうなのにあんなに大声で…っ」


「うん…エリカ殿、あの掛け声は一体?」


「…!」


 なんと、私の全力の応援はちっとも伝わっていなかった。それどころか笑いのネタになっていた?そこで私は『応援団』について説明した。リレーとともに選ばれし者たちについて。そして『応援合戦』について。


 学校によっては『応援賞』をもらえるし、何より応援団長はその年度で各組1名しかなれない重要な役だ。騎馬戦の大将と応援団長…これは兼ねる時もある…、そしてリレーのアンカーは花形なのですよ!私の剣幕にみんなはちょっと引いていたけれど、重要性はわかってもらえたようで、


「わ、わかったよ、応援団は重要ってことだな」


「うん、で、オーエスは綱引きだけの掛け声…?」


 まだなんとなく伝わっていない気がする。彼らに応援団のカッコよさを感じてほしくて必死に考えた私がひねり出したのは


「そうだ、皆さんの隊には旗はないんですか?ほら、カッコいい紋章みたいなのが入ってたりする」


「旗?ああ、隊旗はある。エンブレムが入ってて普段は街の本部に仕舞ってあって時々虫干しする。ここに持ってきてあるのはもっと簡単な薄いものだけど」


「他の隊と合同で何かする時に、うちの目印として地面に刺しているな」


「それですよ!そのエンブレムが入った大きな旗を持てるのが運動会では団長と副団長。ここでだったら、皆さんの中のトップ…隊長さんになるのかな?その人かその次に強い人が旗を持つことができるの。二人並んで、それでもって旗が風に翻っているのはものすごくカッコいいの!」


 ちょっと違うところもあるけれど、まあ大体ということでそう言ってみればみんなの顔つきがちょっと変化した。そしてアレクさんを見つめた。


「隊長と副隊長が並んで立つ…」


「隊旗を持って…」


 あ、アレクさん、やっぱり隊長だったんだ。


「そう、そしてその二人がみんなに言うの『みんな、これまでのことを思い出せ。どんな時も全力を尽くしてきたんだ、俺達は絶対に負けない。いや、絶対に勝つ。いいな?』って感じに」


 ちょっと声色なんて変えて低めに出してみたりして、どう?ステキでしょう?とドヤ顔でみんなを見回す。


「…」「…」「…」


 私の説明に、みんなの顔が紅潮してなんだか可愛い。斜め上を見てるけど、何か妄想している?と、視線の先を見るとアレクさんはちょっと赤い顔をしている。するとみんながハッとしたように話しだした。


「隊長!旗を!旗を持ってください!」


「いや、それは副隊長に!隊長はさっきの言葉を!」


「やめろ!しない!」


「隊長〜!」


 みんなに懇願されて、アレクさんは渋々並んだみんなの前に立ち、その横に隊旗を持ったモーガンさんが並び立つ。モーガンさんが副隊長だった。私に言われて二人とも脚を軽く開き背筋を伸ばしている。さすが本物はカッコいい!


「…」


『アレクさん、言葉を』


 黙っているアレクさんに耳打ちする。


『何を言えって…』


『さっきのセリフじゃなくていいんですよ、みんなへの気持ち、隊長としていつも考えていることを伝えてあげてください。みんなにやる気と自信をもってほしいんでしょう?』


 困った顔をしていたアレクさんだけど、ちょっと目をつぶって考えた後みんなに静かに言った。


「あー…我々は平和なこの時代に軍事訓練を行っている。平時にそれは無駄だと言う者もおり、それを耳にするお前たちの中に、自分たちの存在意義を疑う気持ちが生まれることもあるのは知っている。しかし、有事はいつあるかわからない。そして戦い以外にも人々の平和や安全のためにできることは無数にある。愛する人々の笑顔を守るために、これからも我々は努力し続けよう」


「…隊長っ!」

「うっ…」

「隊長…」


 アレクさんの言葉を聞いたみんなの頬には涙が流れていた。良かったね、みんな。いい人たちだなぁ。単純過ぎる気もするけど…。


 私もちょっとだけウルっとしてしまった。アレクさんはちょっと顔が赤くなっていた。可愛い。そう思って見ていたらますます赤くなった。やっぱり可愛い。

お読みくださり、ありがとうございます!もう少しで完結です。

ところでオーエスってなんだ?っていうのは名作「あずまんが大王」で「大阪」さんも言ってましたね。

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