テスト返却 1
とある学生の日常です。
男の心情描写を鮮明におもしろおかしく執筆いたしました。ぜひ一度、お読みになられてください。
今日は定期テストが返却される日だ。
男の胸は、不安にも期待にも躍っていなかった。
赤点ぎりぎりな平凡な点数を維持していく毎日に、いつしか彼の心の波風は立たなくなっていたのだ。
今回もそんな感じなんだろう、と男はタカをくくりながらダルそうな足取りで校門をくぐっていった。
一時限目、政治経済。
49点と刻まれたテスト用紙も、男にとっては白紙同然であった。
おもむろに鞄からファイルを取り出してた男は、無愛想にテスト用紙をそこに入れ込んだ。
そしてもう二度と、そのテスト用紙に目を通すことはなかったのである。
可もなく不可もない毎日。そんな日常に男は満足していたのだった。
二時限目、英語表現。
赤点ではないだろう、という半端な自信を持ちながら、彼は大きなあくびをかいていた。
(早く帰ってゲームをしたいな。読みかけの小説の続きをみたいな)
様々な雑念の思考に更けていた彼の意識が戻ったのは、自分の名前を呼ぶ音が聞こえたからだった。
「出席番号12番 男くん」
我に返った男は、慌ててテスト用紙を取りに教卓へ向かった。
やっと教師と対面する距離まで近づいた男は、用紙を受け取ろうと手を伸ばした。
しかし、そんな男に向かって、教師は実に神妙な顔をしながら目線を合わせてきたのだった。