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飛竜を探せ

昨日まで夏だったのに急に秋になりやがって……

許せん



「上空でメシを食うってのも、なかなか悪くないもんだ。……相変わらず味はしねぇけど」



水気のないパンを頬張りながら、ようやく見えてきた陸地に視線を向ける。


今日の間に俺がすべきことは、レンタルしたワイバーンに変わる足を調達することだ。

彼らは非常に賢く調教されており、レンタル時間が終了すると、一人でに宿舎へと帰っていく。

しかし、このタイミングで帰られては俺が離島に幽閉されることになるので、この飛竜を直接業者に返却しに行くついでに、情報屋に会おうと思っている。

家に帰るたびに騎竜をレンタルしていては、金が底を尽きるまでそう日数はかからないだろう。

できれば買い切りがいい。

調教師から買うのが一番確実なのだろうが、レンタルですらそこそこな値段したし……まともに買えば一体いくらかかるのやら。



「お前はどう思う?」



「……」



当然、ワイバーンから返事はない。

彼らは「右」や「左」、「降りる」や「速く」といった、飛行に関する言葉をある程度聞き分けているが、それ以外の人語は雑音のように感じているらしい。

やがて町が見えてくると、飛竜はゆるやかに高度を落とす。

……捕まえる選択肢もなくはないが、こうした人体に対する配慮はまずできないだろう。

野生の個体なら、こんな距離は急降下して終わりだ。



「おや、お客さん、わざわざ返しにきてくれたんですかい? 飛竜は自力で戻る訓練を受けているのに」



「えぇ。ついでに聞きたいことがあったんでね」



「はぁ、どんなことでしょうか?」



「わけあって飛竜を手に入れたいんだが、どうにか安く手に入る手段はないだろうか? 種族は問わない」



「あー……なるほど。そうですねぇ、オークションは穴場だと聞いたことはあります。直接調教師や業者から買うよりも、相場が安くなりやすいとか。あと、【調教師】のスキルをお持ちでしたら、自分で調教する手もあります。竜と戦って勝てる自信がある場合、ですが」




「なるほど。スキルはなくとも金がかからない方法……なんて、あるわけないか」



「はは、そんな方法があったら私が欲しいくらいですよ」



「だよな。悪かった」



「ご利用、ありがとうございました。今後ともご贔屓に」



それはそうだ。

正規の手段では、今すぐに竜を手に入れることはできない。

そう、正規の手段、では。

やはり、あいつを頼るしかないか。

覚悟を決めた俺は、しばらく王都とは遠ざかる方向に歩き、路地に佇む薄汚い酒場へと足を踏み入れる。

ここは表向きは普通の酒場だが、裏口の扉を特殊なリズムでノックすることで、王都の闇を請け負う「情報屋」に会うことができる。

……どんな弱みを握られているかも知れない相手なので、極力会いたくはなかったのだが。


……コン、コココン、ココン、コン、ココン。

ノックしてからしばらく待つと扉が開き、中から容姿の整った好青年に出迎えられる。



「はい、いらっしゃ……おやおや、誰かと思えばリベルか。珍しいな、君はこんな薄暗い店とは無縁な人間だと思っていたよ」



「よぉアメリオ。奇遇だな、俺も昨日までそう思ってたよ」



「……まぁ、あんなことがあった後だもんな」



かつてカリストで同級生だったアメリオは、持ち前の隠密スキルや高い諜報力を活かして家業を継いだ。

その家業というのが、「酒場の裏の顔」というわけだ。

こいつがカリストに入学した目的は、最初からカリストに入学してくるであろう貴族や要人の子息と繋がりを持ち、情報源を増やすためだった。

そして、多くの実力者から一目置かれていた俺の存在は、こいつにとって利用勝手が良かったらしい。

……ちなみに、「アメリオ」というのが本名なのかすら定かではない。謎多き男だ。



「で、今日は何が聞きたいんだい。君のことは学園で利用……コホン、仲良くさせて貰ったし、流石に退学の件は可哀想だと思っていたから、ある程度なら無料で引き受けてあげよう。まぁ、その情報がどの程度のものかにもよるけど。うーん……そうだな、まぁ、王女殿下のパンツの色くらいなら、今日中になんとかするよ」



「相変わらず化け物みたいな情報網だな。恐れ入る」



「はは。カリストに入学できたおかげで、仕事がやり易くなったよ」



「じゃあ聞くが、とある事情で遠出するための足が欲しいんだ。しばらく往復することになるだろうから、レンタルじゃなく専用の竜が欲しい。とはいえあまり金はかけたくない。……俺が言ってることは無茶か?」



「うん、普通は無理だね。でも、君ほどの実力者ならあるにはあるよ。……いや、それを知っていたからか。つまり君は、最初から『竜』が景品、あるいは対戦相手になっている興行がないかと遠回しに聞いていたわけだ」



「話が早くて助かるぜ。で、今はあるのか?」



「リベル、君は運がいいね。王都の闘技場で、ちょうど黒竜への挑戦者を募集してるよ。今からならまだエントリーも滑り込めるはずさ。場所は……」



詳細な場所を聞き、俺はその闘技場ですぐさまエントリーを済ませた。

闘技場の見世物は明日開催されるらしく、本当にギリギリで滑り込んだ俺は最後の出場希望者だったらしい。

アメリオの情報網ならもしやと思ったが、まさかの大当たり。その上、来る時間まで完璧だ。

あの退学で全ての悪運を使い果たしていたのだろうか?

……だと、良いのだが。



ーーそして一夜が明け、ついに見世物の開始時刻が訪れた。




評価・ブクマ等よろしくお願いします!(定型文)


ようやく涼しくなってきましたね。

皆様、お体にはお気をつけくださいな。


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