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賭けを見守っていたら未来が拓けた アランの婚約者1

番外編です。

アラン編を書きたくて追記です!

「な?悪役令嬢の断罪なんて、なかっただろ?」

そう告げたが、クレアは呆然自失だった。

「いくらなんでも、何もなさすぎでしょう?ドロドロ展開は?聖女覚醒は?悪役令嬢の断罪、もしくはざまぁ展開は?」

「だから、そういうのはないって。アマリエ嬢は善人だよ。少々厄介な男に執着されただけで。」

「モブの活躍する機会すらない!」

(はあ。もう、いいか。)

俺は、クレアを庭園に連れ出した。

…話は一年前にさかのぼる。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「留学生?」

「そう。留学生。受入れが決まってね。君に頼みたいんだよ。」

そんな会話があったのは、2年生の終わりごろの生徒会室にて。

先輩の卒業パーティーの準備を整えて、一息ついていた時のことである。

フェルナンド様は生徒会長として如才無く仕事をこなし、問題なく2年間が過ぎた。


この2年で分かったことがある。

賢いクール系の男は、惚れると面倒くさい。


フェルナンド様は、やたらとミレーヌ様と二人きりになりたがり、邪魔をすると、仕事という報復が待っている。

レオンは、アマリエ嬢の笑顔を引き出す男には容赦がなく、嫌味や皮肉でメンタルを削り、氷点下の視線で凍らせてくる。


そのどちらもが、普段は、仕事のできるクールな天才として人気が高いのだから、嫌になる。

(現実は器のちっさい男たちですよー。)

まあ、思うだけで言わないが。


特にレオンは、アマリエのためならばなんでもしてしまいそうな危うさがある。


数々の女性と噂があり、実は学園入学前の記念にアマリエ嬢にチャレンジするという噂があったミヒャエルが、学園の入学式にいなかった上に、名前を一切聞かなくなったことも、実はアマリエとレオン絡みではないかと、俺は密かに思っている。

まあ、アマリエ嬢はいい子なので、それが救いか。


だから、油断した。


たまたまだったんだって!

ミレーヌ様とアマリエ嬢は、ちょっとその辺りの認識が甘く、時々悪気のない罠を仕掛けてくる。


その日はちょうど、誰ともつるまずに一人でいるところに二人が通りがかり、何やら贈り物がしたいとかで、フェルナンド様とレオンの好きなものを知らないかと聞かれたのだ。

そんなの、二人がなにかする以上何でも喜ぶだろうし、何でも独占しようとするに決まっているのだが、そのまま言うのははばかられ、無難に相談に乗った。

…ちゃんと周りに気を配り、フェルナンド様とレオンがいないことを確認しながら。


二人は、何でも嬉しそうに聞くから、(レオンも充分に脈アリじゃないか?)とか、俺なりに友情を発揮してアドバイスしたのだが。

そのお礼にもらった焼き菓子が良くなかった。


気は使ったんだ。カバンに入れて、ちゃんと帰ってから食べようとしたんだ!


「…?カバンに何か入ってる?甘いにおいがする。」

打ち合わせたいことがあり、待ち合わせたレオンに、開口一番そう聞かれるまで、若干その焼き菓子の存在も忘れていたくらいだったのに。

その場にはフェルナンド様もいた。

彼らは勘が鋭くて、ちょっと怖い。

そうなると隠す方が怪しまれると思い、素直に出したのだが、においや装飾、使っている材料やこね方の特徴などを並べられ、それがミレーヌ様とアマリエ嬢の新作であることが看破された。


いや、あいつはやっぱり、かなりヤバい。


その結果、二人のサプライズはあらいざらいばれ、俺は全て喋ったにも関わらずつるしあげにあった。

一口も食べないまま、焼き菓子をフェルナンド様とレオンにおさめて、何とか打ち合わせに入れたのだが…。


理不尽だ。


しかし、異性にはあまり慣れていない二人がまずまず打ち解けて話す相手は限られている。

あの二人は悪くない。しかも、別に浮気とかの心配はないのだ。冷たくするのも、俺なりの騎士道精神に反する。


好きな相手からプレゼントもらえるんだぞ?

独り身の友人にもっと優しくするべきだと思うぞ。


…俺にも、春はこないものだろうか?


そんな風にため息をついた次の日、留学生の案内役という、非常に気力と労力を使う仕事が、割り振られたのである。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「なんで、俺に?」

「メンバーから最善の人選をしたまでだ。」

フェルナンド様は微笑む。

「留学生は三人。男性二人に女性一人。文化も習慣も慣れないだろうから、いろいろ調整してあげてほしい。」

「女性一人なら、同性のミレーヌ様がいいのでは?」

「聞いてなかったの?男性も二人いるんだよ?ミレーヌと何かあったらどうする?」


あ、そういう…。


「レオンは?」

「初めは僕がする予定だったんだけど、最近忙しくてやりたいこともできなかったし、今回は下りることにしたんだ。アランは、人の相談に乗る余裕があるみたいだし?…僕なんて、一週間アマリエとまともにしゃべってないのに。」


あー、そういう…。


「…ちなみにフェルナンド様は…?」

「僕もミレーヌとの時間が必要なんだよ。しかも、留学生の中には女性がいるんだ。万が一にも誤解されたくないしなあ。」


独り身に優しくしろよ!!


いろいろ考えたが、誰に割り振っても俺が恨まれる。

しょうがなく、引き受けたのだが。

この留学生というのが、なかなかだったのだ。



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