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閑話 記憶持ちヒロインの言い分

ポイントが1000いったら、物語を続けてみよう、と密かに願かけしていたら、ある日越えていて泣きそうになりました。


好みは別れるかもしれませんが、やっぱりフィリアも幸せにできたらと思います。

また、もうしばしお付き合いください!

よく、悪役令嬢が主役の物語で、逆説的に悪役になるのが、記憶持ちヒロインである。

だけど考えてもみてほしい。

前世で、特にちやほやされることもなく、平凡に生きてきた人間が、見た目も能力も最高のヒロインに生まれ変わる。

奇跡的なチャンス。

そのすべてを活かす方法が目の前にあったなら。

やれるだけやるのが筋じゃない?


ゲーム。ここは私が主役のゲームの世界。

それなら私は、プレイヤーとしてベストを尽くさなくては。

クリアしさえすれば。

もしかしたら…………できるかもしれないじゃない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「へえ。それで?どうしたらクリアなの?」

ミヒャエルが微笑みながら聞く。

クリア条件…クリア条件か。

「エンドを何かしら迎えるのは確実だけど、一番クリアした感じがするのは、逆ハーエンドかしら?」

「逆ハー?」

「逆ハーレム。攻略対象が全員ヒロインを好きになって、みんなで幸せに暮らすの。」

好感度のさじ加減が難しい。

選択肢を間違えずに選び、みんなの好感度を適切に上げていかなければならない。

「その分、達成感があるっていうか、クリアしたなって思えるのよね。カッコいい男性たちに取り合われる快感っていうか…あれ?ミヒャエル先生どうしたの?」

一応家庭教師として来ているので「先生」をつけて、呼びかけたのは、ミヒャエルがものすごいかおをしていたからだ。

台詞をつけるなら、

「うわあ………。(絶句)」

みたいな。


「…何だか、自分を別性で見せられてるみたいだ。僕って、こんな感じなんだ…。」

実際に発せられた言葉は、なんだかむしょうに癪に障った。

「どういう意味よ?なんか悪い?」

「やめといたほうがいいよ、逆ハーエンドなんて。本当にみんなが不幸だからさ。」

妙に実感がこもっていたので気がついた。

ミヒャエルって、既にハーレムに近い状態だったんじゃない?

「あなたに言われたくないわ。」

「いや、むしろ僕にしか言えないよね。まあ、僕を愛してくれたご令嬢は、均等な愛じゃ満足できなかったわけだけど。…ある意味彼女達のほうが、すごくまともな感覚なんじゃないかな。」

言外に私はまともじゃないと言われた気がしてムッとする。

「なんで?誰か1人が勝者じゃなくて、愛を分け合えるのよ?そういう形があってもいいじゃない。」

「君には向かないよ。だって君は、相手に合わせて自分を変えていくんだろ?相手の一番望むように、相手が、一番君を愛するように。」

当たり前だ。それがヒロインだもの。

「君が君のままでいられるならいいさ。でもそうじゃないなら、君は相手が嫌な気持ちになれば、それを自分の失敗だと思い、相手は勝手に幻滅して裏切られた気持ちになる。そんな関係でもやっていけるのなら…。」

「…なに?」

「そんなやり方でみんなを本当に平等に愛せるとしたら、それは、全員ゼロってことだ。誰も愛していないのと同じさ。」

難しい。わけがわからない。

「ミヒャエルは、ヒロインに本当の愛を教えてもらうのよ。なんでミヒャエル先生から愛を教わらなきゃいけないのよ?」


ミヒャエルはフッと笑った。

「それは、君より先に、僕のほうが本当の愛を知っちゃったからかな?」

「…何よ?」

「君だって、可愛いしいい性格してるみたいだし、意外とすぐ側に愛はあるのかもしれないよ?」


「お茶をお持ちしました。そろそろ休憩にしませんか?」

耳と尻尾をふわっと揺らしながら、セシリアが入ってきた。

彼女は、私の侍女として屋敷にいる、獣人の女の子だ。

「ありがとう。…リオネルも一緒にお茶にしましょう?」

そう言って振り返れば、部屋の入り口にいる護衛の獣人の男の子が近づく。

「フィリア様。毎回言ってるけど俺は…。」

「毎回言ってるけどぼっちでお茶しても美味しくないし、楽しくないのよ。」

「…ぼっちじゃない。」

「そうだよねー。僕の存在は?」

ミヒャエルが上目遣いでなんか言っている。

「セシリアと二人の世界をすぐ作ろうとするじゃない。つまんないわ。」

「フィリア様、私はそんな!」

セシリアがふるふるしている。泣きそうな顔をして。

…可愛いわね。


「セシリアはいいの。ちゃんと美味しいお茶の準備をしてくれて、ただただ可愛いだけだもの。ミヒャエル先生が勝手にデレデレなだけ。…その顔、ヒロイン限定じゃないのね。」


ゲームのスチルでも、免疫がなくて、すぐに恥ずかしがるヒロインにそんな顔をする。

確か、最初はヒロインの友だちを落とそうとするんだけど彼女が塩対応過ぎるのよね。

何と言うかすごく割り切っていて、ミヒャエルの軽薄さも見抜いているから動じないの。

けど実はミヒャエルは、彼女を落とせと命令されていて。

(えーと、友達の名前はたしか公爵令嬢の…ミレーヌだったっけ?命令するのはアマリエとレオンよね。)

ヒロインは、そんなミヒャエルを見ているだけだったんだけどいくつかきっかけがあって急接近して。

ヒロインを愛してしまったミヒャエルは、命令に逆らいつつ打開策を見つけて…というストーリーだ。


まあ、まだ学園生活すら始まっていないのだから、どうでもいい…というか、何をどうすればいいのかなんて、分からないもの。


結局強引に誘い込み、なんだかんだ押しに弱いリオネルは、立ったままという条件でお茶会に参加した。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


セシリアとリオネルは、双子の獣人だ。

私たちがいるラルフェン領は、北の方に隣の国との国境がある。

その国境を越えて、仕事を求めてやってきた二人を、私が父に、雇い入れてほしいとねだったのだ。

二人ともめちゃくちゃ可愛かったし、学園が始まるまで、したいこともできることもなく、おしゃべりできる相手がほしかった。


その時は瘴気はまだ発見されていなかったが、獣人は、かつて、魔物が跋扈ばっこしていたときの名残り。

多くの個体が存在すると、中には人に近い姿かたちや、心を持つ魔物だって現れる。

そんな相手と秘密裏に交わり、たまたま魔物の特徴を持たずに生まれた子どもは、魔物が追いやられ、絶滅したあとも生き延びて子孫を残した。


その後も人間と交わり、魔物の血は限りなく薄くなっていくはずなのに、ごく稀に先祖の遺伝子が見た目に現れることがある。それが、耳だったり、尻尾だったりするのである。

つまり、この世界において、獣人は魔物の子孫。

禁断の象徴のため、迫害に合うこともある。

親から見捨てられ、二人で肩を寄せ合って何とか生きてきた双子が、何度目かの迫害にあい、逃れてきたのがこの国。

比較的穏やかで、裕福なこの国でも、獣人をよく思わない人は多い。

(意味がわかんない。)


擬人化されたキャラクターの多い世界にいた私からすると、かなりのナンセンス。


だから、本当に純粋に側にいてほしくて頼んだのだけど。(そして、娘に激アマの父は、最終的には聞いてくれた。)

セシリアとリオネルは初めは警戒心の塊みたいだったのだけど、いつからか打ち解けて、何故か忠誠を誓われている。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


その日の会話は、勉強の途中、貴族の家系の話からの脱線だったと思う。

「そういえばさ。君の言う攻略対象だっけ?かなり無理があると思うよ。」

そう、ミヒャエルが切り出したのだ。

ミヒャエルの話は、興味深いけど、嬉しくない。

(まあ、情報収集は必要よね?)

適当に相づちを打ちながら、フェルナンド王子やレオン、アランなどの近況を聞く。別に意外じゃないエピソードが多かったけれど、とある情報が、私をうちのめした。

「…アマリエが、王子と婚約してない?」

しかも、私と仲良くなるはずのミレーヌは、アマリエの親友らしい。

(そんなところから、ゲームのオープニングにつながる?さすがにそれはない!)

「そんな。まさか…!うそよ!!」


あしもとが揺らぐ。

ゲームが記憶どおりに始まらなかったら、私はどうなるのだろう?

選択肢を間違えたら?

誰のルートにも乗れなかったら?

あのゲームには存在しなかった、ゲームオーバーがあったら?

(そんなことになったら、もう、絶対に……できない!!)

「今日はおしまいにしようか。」

言葉を失った私を見て、ミヒャエルは席を立った。

「…ごめんね。僕も、君に攻略させてあげることはできなさそうだ。」

そう、呟くように言って。


私はひどい顔になっていたらしい。

「フィリア様…ちょっと休みませんか?」

リオネルが気遣わしげに言う。

それに応じて、立ち上がろうとして、上手く立ち上がれずにリオネルに抱きとめられる。

「っごめん。」

慌てて離れようとしたら、そのまま抱き締められた。

「フィリア様、震えてる。」

暖かい腕。弱い自分は嫌だけど、すがってしまう。

「……かもしれないって思ってたの。」

「ん?」

「私が、この世界でちゃんと役割を果たせたら。元の世界に帰れるかもしれないって思ってた。」

よくあるもの。召喚された聖女が、平和をもたらすお話。

帰れない話もあったけど、帰れる話も読んだことがあった。


でも、どこかでは分かってもいたのだ。

私は転移ではなく転生。

前の世界で、おそらく人生を終えている。

でも最後の記憶はなく、未来がまだまだ続くと思っていた時の記憶しかない。

私はまだ、高校生だったのだから。


「フィリア様。泣かないで。」

リオネルが頭を撫でる。

「なんのために生まれてきたんだろう。私と会うことで幸せになる攻略対象が本当に学園にいないんだとしたら、私がいる意味はどこにあるの??」

堰を切ったように言葉が出てくる。

本当は、レオンとミヒャエルが来たときから不安で仕方がなかった。

自分が本当にヒロインとして生きられるのか。

怖くなってレオンやミヒャエルの言うことを全部都合よく言い換えて。

何度も鏡を見て、恵まれた容姿を確認して自分に言い聞かせた。

私はヒロイン。この世界の主役。

学園に行きさえすれば。

選択肢さえ間違えなければ、みんなから愛されて、幸せになる未来が約束されているのだと。

(約束…一体誰と?)


寒い。

体の中が寒くて、冷たくて震えると、リオネルの腕に力が入った。

「フィリア様。…俺は側にいるからね?フィリア様の言う、攻略対象じゃなくても、あなたに幸せをもらったのは確かだから。フィリア様がいたから、俺は希望を失わずに生きられているんだから。意味ないなんて言わないでよ。」

そんなふうに震える声で言いながら、リオネルの手がまた背中に回って。リオネルの尻尾が私の背中を撫でる。

「…リオネル…。」

「帰るなんて言わないでよ。この世界にいてよ。フィリア様。じゃないと、俺、守りたいものをなくしたらどうなるかわかんないよ?」


そう言うリオネルの声には熱がこもっていて。

私の冷えた心臓を温める。


(だから、逆ハーエンドを狙おうと思ったのよ。)

ミヒャエルの言ったことはある意味正しい。

均等な愛の究極は、誰も愛さないこと。

それで良かったのだ。だって、この世界で誰かに心を揺らされたら。

帰れなくなってしまうことが分かっていたから。


リオネルの熱に気づかないふりをしながら、私を捕まえていてくれる腕から離れられない。

(こんなわがままなヒロインなんて、ありえない。)


私は学園に入学せず、ミヒャエルから勉強を教えてもらいながら、領地の勉強をすることにした。


数年後、真実の愛というものに目覚めて聖女になり、私はたった1人の護衛と共に瘴気を払い、魔物を鎮める旅に出る。

女男爵として領地を継いで、その後、息子が世界初の獣人の領主として、世の中の常識を変えていくことになるのだけど…。


それが、ゲームとはなんの関係もない、私のわがままから始まったことを、この時の私はまだ何にもわかっていなかった。

フィリアを幸せにしたいと思ったら、ミヒャエルではなく、リオネルが頑張ってくれました。

記憶もちヒロインが、悪役になるとは限らない!


セシリアとリオネル視点も書けたらと思います。

少し完結させずに寝かせます。


彼らサイドの物語まで、できればお付き合いいただければ嬉しいです。

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