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賭けで未来が拓けるなんて クレアの誤算5

やっと完結?

クレアも頑張りました!

「おはよう。気分はどう?」

目を開けると、女神様がいた。ぼやけていても分かる神々しさだ。

「…ここは、エデンですか?」

夢見心地で尋ねる。女神様は少し沈黙して、それからくすくす笑い始めた。

「大丈夫、ちゃんと現世よ。はい、眼鏡。」


渡された眼鏡をかけると、そこにいたのはやっぱり女神様だ。ただし、この女神様の名前を私は知っている。

「アマリエ様…」

「あなた、卒業パーティーでアランに迫られて倒れたのよ。介抱のために、家に運ばせていただいたの。ちなみにもう朝よ。最近眠れていなかったんじゃない?」

そう言われて、パーティーでのことがフラッシュバックして、危うくまた倒れそうになる。

そんな私を見るアマリエの目はキラキラしていた。


「クレアさん。もう察しているかもしれないけれど、私も前世の記憶がある転生者よ。レオンの許しも得たし、秘密のお茶会をしましょう?」

その言葉が終わるかどうかで、私のお腹も盛大に鳴って。

またもやくすくす笑われながら、アマリエは侍女にお茶と軽食の用意を頼んでくれた。


悪役令嬢アマリエは、よく笑い、表情をくるくると変えながら話す。

「ちゃんと使い分けてるから大丈夫。こっちが素なの。お行儀が悪くても許してね。」

そういう彼女の指には、上品だけど手のこんでいることがよく分かる美しい指輪が光る。

私が、軽食を平らげてから、アマリエは、自分の記憶が戻ってから今日までのことを順に話してくれた。


それを聞きながら、レオンルートのあれこれを思い出して、アマリエが闇堕ちしなければそうなるのかと、妙に感心してしまった。

ゲームの強制力をどう出し抜いたか分からないが、今のアマリエは平穏そのものだ。


「…これで全部よ。でも、レオンから見たら、もっともっと長い物語になるんだと思う。今はまだはなしてくれないけど。」


それから、アマリエに促されて、私も順に話し始めた。

言葉を選ばなくても、解説しなくても分かってもらえるのが心地よくて。

途中で侍女さんが再び軽食を持ってきてくれて初めて、ランチの時間を過ぎていたことに気づいたくらいだった。


「クレアさん、これからどうするの?アランと婚約するの?」

アマリエからの問いに、言葉に詰まる。

「…自信が持てないんです。」

「自信?」

「はい。私なんかが、アラン様にふさわしいと、どうしても思えなくて。」

「それは、あなたが『モブ』だから?」


アマリエの口からそう言われると、ピシッと心がきしむような気がする。

でもそれは、紛れもない事実だ。

「なんの取り柄もない私が、うっかりアラン様を攻略してしまったせいで、彼が幸せを逃すんじゃないかって。この世界にはもっとヒロインにふさわしい人がいるかもしれないのに。」

アランを幸せにできる自信がない。

彼には、愛する美しい人と寄り添って、いつも笑っていて欲しいのに。

私が、それを壊してしまう。


「…ふふっ。」

悲痛な思いでいたのに、くすくす笑う声がして、思わずアマリエを見上げた。

「おかしいですか?」

「ええ。おかしいわ。」

(…悪役令嬢アマリエに、私の気持ちは分からない。)

モブではない人物から笑われて、ムッとする。

しかし、そのあと、アマリエから言われたのは意外な言葉だった。

「私から見れば、クレア、あなた、一番ヒロイン属性だと思うけれど。自分のことは、案外見えないんだなあって思って。」

「私がヒロイン属性?」

何かの間違いだ。この『普通』が歩いているような私に、何を言うのだろう。


「だって。小さい時から夢で見た素敵な男性に会いたくて、一生懸命勉強して、留学生にまでなって会いに来たんでしょ?運命的な再会をして、影で見守るつもりだった相手から、好きだと告白されたのよ?こんなにロマンチックな話の主人公を、ヒロインと言わずして何と言うのかしら?」

絶句だ。

(あれ?あれあれ?)

「しかも、本人はそのことに無自覚で、自己評価が低いの。周りはそんなヒロインに、顔を上げてほしくて頑張っちゃうのよ。」

(そんな、だいそれたことはしてな…くもないような?)


何かがガラガラ壊れていきそうで、思考を停止していたら、不意にアマリエが柔らかく微笑んだ。

「クレアさん。この世界は、ゲームとよく似ているけれど、ゲームじゃない。私たちはそれぞれの人生を生きているわ。そして、ゲームでも物語でもない以上、『モブ』という人間は存在しないでしょう?」


モブは、いない…。


アマリエの声には不思議な説得力がある。


「ゲームだったとしても、よ?私とあなたは、それぞれすごい人にもう攻略されてしまったの。私たちに必要なのは、自信じゃないわ。彼らに愛される、覚悟。」

私たち、とアマリエは言った。それは、私よりも長く葛藤してきた先輩の言葉だ。

「私はもう、覚悟をきめたわ。レオンが好きだもの。あなたは、どうするの?」


促されて、考えて。

言葉にしたら、涙が出てきてしまう。

「わ…わたしは、私だって…アラン様が好きです。いいのでしょうか?この気持ちが…恋だと認めてしまっても…。アラン様からの言葉が…嬉しいと伝えてしまっても…。いいの?」


「ですってよ?アラン。」

「へ?」


涙が一瞬で引っ込む。

アマリエが呼びかけた方をぐるんと振り返れば、そこに真っ赤な目をしたアランがいた。

「な、いつから!」

「心配で午後になってすぐに来てたのよね?おまたせ、アラン。あとはお願いね。…一応、ここ、私の家だから、節度は守ってくださいな。」


そんなセリフを残して、軽やかに去るアマリエ。

(待って…そんな!!)


はくはくするしかできない私の前に、アランが膝をつく。

「クレア。俺は、君がいい。君じゃなきゃ、嫌だ。俺のこと、ちゃんと選んで?」

(上目遣い!かすれた声!)

早く返事をしないと、と思うのに、声が出ない。

「いやなら、ちゃんと突き飛ばしてね、クレア。」

そう言ってアランの顔が今度は唇に近づいてきて…

(ごめんなさい、もうだめです…!)


「きゃああああ!」

叫び声はアマリエだろうか。

今度は鼻血付きで。

私は結局、またもや意識を手放した。


その後しばらく、アランがレオンから無視されて半泣きになったとか、フェルダートン家に出禁になったとか、いろいろ気になる噂はあったけど、甘く笑ってくれるアランの笑顔が消えるのが怖くて、婚約してからも、本人には聞けていない。

番外編。

アマリエの独り言。

「卒業パーティーの日、ミゲル君がブツブツクレアの名前をつぶやきながらお酒を飲んじゃって、よいつぶれるっていうニュースもあったのよね。どう考えてもミゲルってクレアを…。まあ、それに気づかない鈍さも、ヒロイン属性なのかな…。」


1人ずつ、ちゃんと幸せにしていくお話が書きたくて書き続けました。フィリアとミヒャエルも、ルイも、ちょっとしか出てこなかった面々も、また機会があればアイデアを温めて書いてみたいと思います。「面白い!」「続き読みたい!」など思っでくださった方がありましたら、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします!


また何かの突破記念があれば追加する予定です。気長に待ってくださる方がありましたら、ぜひまたお越しください!


またもや追加で書き始めたクレア編、最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

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