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56.逃亡中ですけど何か?

「追っ手の状況は?」


発信器も送り出し、ある程度俺の方は落ち着いたのですでに大型艦からは分離されている。そんな船の中で俺は、部下に追っ手の状況を尋ねた。

ドワーフを奪われたのだから相当敵も慌てていると思われ、その俺の予想通り、


『まだこちらへ迫っている敵も少なくありません。……ただ、発信器を追って分かれた部隊の数の方が多いため、かなり減った方だとは思われます』


「なるほど。……まあ、そう考えればそうか」


敵は血眼になって俺たちを探しているようだった。ただ、発信器は戦闘機体に載せて飛ばしたため効果の程はあまり期待していなかったが、俺の予想以上に敵は惑わされてくれたようだった。

あまりにも速度が変わって警戒するかと思ったのだが、よくよく考えてみればこの状況は当たり前かもしれない。

今となっては俺たちの痕跡などほとんどないし、唯一追える痕跡のようなものが戦闘機体だった。たとえそれが偽物だったとしても、追っていくしか選択肢は残されていないのだから。


「となると、問題は追っ手ではなく巡回や監視を行なっている敵か」


『はい。こちらも探知範囲はできる限り広げておりますが、敵がどういったものを持っているか分かりませんし。もしかすると、ドワーフに作らせた探知用の機材などもあるかもしれません』


「そうだな。警戒しておくに越したことはないだろう。……が、対抗手段がな」


たとえ敵の探知範囲が広くとも、こちらにできることがあるのかと言われると困る。今のように最高速度で本国まで帰還しようとしていると、強いエネルギーが必要になるものなのだ。このエネルギーは確実に探知されるが、これがないとあまり速く移動できない。

ジレンマだな。


『気付かれたと思ったら全艦の機能を停止して周囲と同化することは可能ですが……』


「却下だ。精密な探知を受けたらすぐにバレる。そんなことをするくらいならそのまま逃げた方がマシだ」


『ですよねぇ』


たとえ大雑把な探知では解析されなくなっても大まかな場所は割れているのだから、周辺の精密検査を受ければすぐにバレる。小規模なら非常に詳しく探知できる機械も知られてるからな。

そこでバレて慌てて逃げると起動発進までにロスが出るし、そうなるくらいなら最初から逃げてしまった方が良い。

そういうことをするのは、攻めてくると分かっている敵にゲリラ戦を仕掛けるときくらいだ。


『あっ。そんなことを話していたら早速バレてしまったようです』


「了解した。全艦突っ切るぞ。コースの割り出しを急げ」


『イェッ、サー』


敵が来てしまったようだ。すぐに俺の乗る船にも敵の包囲をかいくぐるための移動ルートが送られてくる。まずはギリギリ攻撃時範囲には入らないだろうと思われる程度の距離で迫ってきていた敵艦を回避し、


「……む。ルートが変更されたか」


送られてきていたルートに変更が入る。どうやらフィネークの強化したレーダーが敵の基地を発見したようで、それを迂回するようなルートを通ることになったのだ。

できるだけ早く敵の探知範囲からは出て行きたいからな。基地から離れていくように動けば、必然的に探知からも逃れることになるだろう。


……しかし、ここでバレたとなるとこの周囲が警戒されてしまうのが厄介だ。暫く敵との遭遇率が上がるかもしれない。

少し遠い宙域の敵が、この辺一帯に集まってくるんだろうな。


「……できるだけ足取りを追わせないようにするしかないだろう」


追っ手は今も来ている。これがついてくる距離が長ければ長いほど。時間が長ければ長いほど。敵は俺たちの位置を正確に把握してくる。

逆に言えば、俺たちにとって重要なのは何よりも早くこの追っ手達を振り切ることだ。


「近い敵には集中砲火を浴びせろ、遠くの敵には主砲を使え」


近い敵にはあまり強くない攻撃をこれでもかとたたき込む。それだけであっさりとシールドを突破し破壊できた。

逆に遠くにいる敵、攻撃はあまり効かないのに探知はされる絶妙な距離にいる敵には、大型艦から主砲をたたき込ませた。勿論、フィネークに強化させたやつをな。流石に1度でどうにかなる事はないが、数発繰り返し撃てば敵も沈んでくれた。


「……これで最後の追っ手。新たな追っ手の追加もなしか」


とりあえずレーダーの探知範囲にいた追っ手は全て倒した。一部は中破程度でとどまって完全に沈められなかったものもあったが、目的が逃亡であるため問題はないだろう。

俺たちはひとまず逃れられたことにほっとしつつ、これから増えるだろう敵のことを考えて気が重くなるのだった。


それから数日。

似たような日々が続き、


『これで何度目ですの?』


『今のが18度目ですね。累計70隻ほど敵を中破もしくは大破させた計算になります』


『あぁ。もうそんなにいったんですね。……聞くまで50隻を超えたの認識してませんでした』


通信の向こうからはセシルやダリヤといった3人娘たちの声が聞こえてくる。かなり真面目な仕事の雰囲気はなくなってきたようだ。

……シャキッとさせないといけない局面ではあるのだが、その前に、


『……緊急の連絡だ』

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ドワーフに作成したものを聞かないのはなぜ? リスト作成したら助かりそうだけど。 保安部とか手すきの人もいそうだけど。
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