51.咄嗟の判断ですが何か?
確かに俺たちの艦隊にいるどの戦闘艦でもあの防御陣を突破することはできなかった。
だが、それでも敵のシールドは減っていたのだ。というか、俺たちが大したことをしていないのに基地のシールドが削られていたからこそこんな防御態勢が取られたのだろう。そのシールドを削る敵に対処するために。
だが、そう簡単に対処することはできなかった。
なぜなら、
「これで私の仕事は終わりですね。私にできる最高だったと思いますよ。ええ」
若干自分は完璧な仕事をしたから責任はないとでもいいたげなことを口にしているダリヤが削っていたのだから。
無人機でシールドを削り、攻撃されればそれを避け、また敵のシールドにそれを当てて、フレンドリファイアを引き起こさせる。そんなことをしていく内にシールドが削れたのだ。
今回の結果は間違いなくお手柄だろう。
「……では、ダリヤ様。後は基地への直接攻撃の方をお願い致します」
「分かりました!」
敵が囲う中、敵艦とシールドの間にいる状態でシールドを削っていたダリヤの戦闘機体。それは当然今も、敵戦闘艦と敵基地の間にいる。
そんな状況で、戦闘機体がこちらの船まで戻って来ることができるだろうか?
俺はできるとは思わないし、ダリヤも無理だと判断した。だからこそ、
「……うわぁ。敵も、戦闘艦への被害お構いなしで武装を使ってきましたね」
「シールドまで破壊されてしまえばそうせざるを得ないでしょう」
敵からの猛攻撃を受ける代わりに、敵基地へと攻撃を仕掛けてもらっている。狙うのは、司令室がありそうな場所だ。
できるだけ、ドワーフやこちらのスパイがいそうな場所は避けてもらってもいるがな。
勿論その行動は敵の基地を破壊するという意味だけでなく、
「で?敵基地の全容は把握できたか?」
「現在8割が解析完了しています!敵の基地の系統から考え、残りの部分もほとんど無視して良いものかと!」
「分かった。……では、最優先破壊箇所をダリヤ様に」
「イェッ、サー!!」
戦闘機体から送られてくる情報。それを元に、敵の基地の解析を行なうのだ。できるのは表面の解析だけだが、それでも武装の位置などが分かれば大きく変わってくる。
そして、細かい武装の多い場所などは、
「……2機ほど破壊されましたが、提示された箇所はほぼ破壊し終わりました」
「ありがとうございます。後はご自由に動いて頂いて構いません」
「了解です!できるだけ役に立って見せましょう!」
とりあえず必要なことはしてもらったから、後は自由行動。ダリヤは基地の武装ではなく、敵基地のドックなどを中心に破壊活動を行なっているようだ。敵が逃げられないように、そして周囲の船が補給を受けられないようにするという目的だろう。
流石にそれはマズいのか、敵も先程以上に周囲の被害を考えずに武装を使用している。お陰で、敵の戦闘艦も数隻フレンドリファイアで沈んでいた。
「敵の薄くなっている場所へこちらからも攻撃したいと要請が届いていますが……」
「よし、許可を出せ」
部下が許可を求めてきたので、即了承して攻撃させる。そこに穴があれば、俺たちの船が突入することができるようになるかもしれない。
そんな考えは敵も予想できたようで、
「っ!敵が庇うように動いたようです!反撃が激しいため一時作戦は中止するとのこと!」
「分かった。少しでも敵に動揺を作れたのならそれで構わん」
流石にいいようにやられると言うことはないようで、周りがカバーしてきたらしい。それで耐えきれず部下たちはあえなく後退。
作れたチャンスは残念ながら一瞬しかこちらの有利には働かなかったようである。残念だ。
が、
「大佐!地点の割り出し完了しました!」
「よし!主砲用意!」
チャンスは、待つだけのモノでは無い。こちらからも積極的に作りに行くものだ。
岩の裏側から壁のない空間へ船体を踊らせた俺たちは、すぐに主砲を使い、
「命中しました!3隻の破壊が成功しています!」
作った。敵の陣形に、大きな穴を。
基地の外側をダリヤからの映像で確認している間、それとセットでその映像の端に映っていたりしたものを解析して、俺たちの船の近くにある小型艦の集まりを見つけ出したのだ。今防御力の低いそこに攻撃を仕掛けて、穴を作った。
ギリギリ、俺たちの船なら通れそうな穴を。
ここで全力で跳べば、突破はできるはずだ。前回作らせたブースターは何故かまだ残っているから、それを使えば絶対にいける。
だからこそ、このチャンスを逃さず、
「ブースター使用!」
そう言おうとした。だが、現実は違う。
ブースターのブの字を言う前に、背中に悪寒が走ったのだ。それはほぼ感覚で捉えたと言っても良いものであり、
「横だ!横向きにブースターを使用しろ!」
「「「っ!?イェ、イェッサー!!」」」」
俺はこのチャンスをみすみす逃すようなことを口にする。
だが結果的に、それは大正解だった。
まばゆい光が、俺たちから見えていた景色を真っ白に染め上げる。
説明が足りない部分があったので補足です。
ドワーフ製の量産武器よりも的の武装の方が圧倒的に高性能なのは、量産型か特注品かの違いです。敵国の方は資金などをあまり惜しまず兵器を作っておりますので……。




