48.計画に不安がありますけど何か?
「では、救助要請の詳しい内容を聞こう」
セシルが準備をしている間、俺たちはより正確に事態を理解するよう努める。今は少しでも救助のために情報が欲しい。
「送られてきた情報は、大まかな座標と敵側の最低戦力です。詳しい内容ですと……」
一応俺たちもドワーフたちとできるだけ近くなれるようには動いているつもりだ。だが。ステルスで行なわなければならないので細かいところは分からない。そのため、多少ずれていても座標を送ってくれるのは非常に助かる。
そして、敵側の最低戦力、つまり、最低限の戦力が分かるというのも助かるな。
何がいるのかが分かれば敵の構成もなんとなく予想できるし、俺たちとの相性も分かる。その最低戦力の中に俺たちにぶっささるのがいると分かれば、俺たちは深追いせずに逃げることを選択した方が得だと分かるしな。
とはいえ今回は、ある程度無茶しなきゃいけないから撤退するのもかなり遅れるとは思うが。
などと色々考える、座標に行くに当たってとか、敵をどう対処するかとかな。
そうしていると、
「……敵艦反応を確認」
「そうか。近いかもしれんな」
強化されたレーダーの端の方に敵艦の反応が映っていた。おそらく敵の警備用に配備された戦闘艦の中の1つだとは思われる。
問題は、ここで戦闘を仕掛けるべきかどうか、そして、近づくべきかどうかだ。
ここでもし敵に近づいても、敵本部を見つけられなければ非常に困る。敵本部が見つからないのにこちらのことは気付かれるというマズいことになるわけだ。
「ふむ。敵本部の探知範囲がどの程度かは分からんが、こちらの探知範囲ギリギリですり抜けるようにして動け」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
俺たちの船は強化されたレーダーでギリギリ敵艦を認識しつつ動いていく。見た限り敵艦にこちらへ気付いた素振りはないから、探知されてはいないと思うのだが。
俺たちは緊張感を持ちながら速度を上げて周辺を飛ぶ。……そして、
「っ!?敵艦!こちらへと向かってきます!」
「……そうか。敵の探知範囲に捉えられたのだな」
敵側に見つかった。これは、敵艦がいくつもこちらに向かっていることから明らかである。すぐに袋だたきに遭いそうだ。
だが、それと同時にこちらに有利となる情報も得られた。それはつまり、この近くに敵の本部があると言うこと。
そして、十中八九その中にドワーフなどはいるだろう。
「敵艦隊の射程範囲にはいる時刻は?」
「7分後です!」
「では、4分間敵艦から逃れつつ探知を行なえ」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
俺たちの艦隊が散開する。それぞれ探知を行ないながら、敵の本部を探していくのだ。
今回救助要請を出してきたのは軍に所属させられているドワーフに付けていた監視からのものだから、本部もおそらく軍用の何かだろう。
……と、思っていたら、
「発見しました!敵基地です!」
敵の基地が見つかった。現在それを発見した中型艦が周辺の監視、というか探知を行なっている。攻撃は一切行なわずに、ひたすら敵の動向の監視と周辺の敵の把握だ。
下手に攻撃しても中型艦は破壊されるだろうし、敵戦力を計測してもらった方が良い。
「結果が来ました!敵基地には大型艦20隻、中型艦60隻、小型艦650隻が配備されているようです!周辺の敵の数も、最低100隻はいるとのことです!」
「分かった。では、乗り込めそうな場所の探知を行なうように指示を出せ」
「イェッ、サー!!」
部下が中型艦に向けて通達を行なう。それに会わせて、中型艦は敵の薄いところや基地内部に侵入できそうなところを探し始める。
やはりドワーフたちを救出するには内部に侵入しないといけないからな。
……で、他にも侵入するためには、
「ダリヤ様。シールド破壊の準備をお願い致します」
「分かりました。任せてください!」
俺の言葉に大きく頷くダリヤ。
彼女が今回は、いや、今回も敵のシールドを破ってくれる。専用の近接装備を使ってゴリゴリとシールドを削っていくのだ。
あとは、そこにこの船が突撃していって、俺が内部に侵入してできるだけ早く奴隷を回収するor基地を奪って周囲の敵を一掃する。
「という計画ではあるが……」
「ん?大佐、作戦に不安がおありで?」
俺の呟きを聞いたダリヤが、不思議そうに見てくる。
ダリヤにしてみれば、この作戦は成功率が高いもののように思うのだろう。
自分は幾つかの強大な敵のシールドを破った経験があるし、艦隊は乱戦を切り抜けてきた。そして、俺は1人で惑星を制圧することまでできるのだ。
どこにもこの作戦で失敗する要素がない。様に思えないわけではない。
だが、
「懸念しているのは、敵の持つ兵器です」
「敵の兵器?」
ダリヤは再度首をかしげる。
なんで今頃そんなモノに懸念を持っているんだと言いたげな表情だな。
今まで敵とは何度も戦ってきたし、それほど過剰に恐れるような兵器はないと記憶しているのだろう。実際、俺たちの国でもこの敵国の兵器はそこまで質が高くはないと評価しているからな。
だが、考えてみて欲しい。
「敵は工作員とはいえドワーフを幾人も抱えているのです。おそらく兵器の開発も行なわせているでしょうし……」
この争いの間に言わせたい台詞がいくつも出てくるぅぅぅ!!!




