45.いじめたくなりますけど何か?
最近、できるだけ表現を細かくしようとして知識量の少なさを実感することが多いです。
ドッグじゃなくてドックだったり、かと思えばドックが思っていたものと違ったり………w
さてさて。俺が休暇を使って敵国で宙賊狩りをすることしばし。宙賊もある程度減らしたからミミの関わるドワーフの輸送も無事完了した。一応襲われはしたようだが、数の差で勝ったらしい。
それが成功して安心したし、宙賊を倒して金が得られたしで俺も死神の活動がかなり楽しくなっている。
そんな風に過ごしていると流石に、
「おっ。そろそろ帰還しないといけない時期か」
そういう時期になった。
かなり敵国内で暴れ回ったし。成果としては充分だろう。懐もだいぶ厚くなったからな。非合法だと思われる奴隷も数人解放したし重要そうな書類も手に入れたから、敵国としては痛いところを突かれるはず。
「さぁ~。おさらばだ。次は艦隊でくるから覚悟しとけよ?」
俺は笑ってそう告げ、敵国から脱出した。
そのまま帰りの船に乗り、
「おぉ~。また随分と一気に行動したな。流れに乗せられすぎじゃないか?」
俺がいないにときに船を管理しているAI,シグマから送られてくる情報を見て苦笑する。そこには、船から公爵や王子といった彼女らの本当の主に連絡を入れようとして、結局上手くいかずに見つかって触手君からの拷問を受けている奴隷達の姿が。
いつの間にか、捕まっていない奴隷は10人程度になっている。
「50人中約40人はスパイか。……このまま放置して、3ヶ月くらい何もしなかったら残りの2人と合流させても良いかもな」
残りの2人。
それは、先に買っていた5人の中で問題無かった2人のことだ。あの2人はまだ2人だけで行動させていて、新しく入った50人のことは映像でしか見せていない。
「このペースだと残るのは5人くらいと考えて良いか?そこにあの2人が追加されて7人として、……55人中7人しかまともなのがいないってのがなんともな……」
上流階級の闇が感じられる。
王族貴族って、やっぱりドロドロしてるんだな。配下にすらまっさらなやつはほとんどいないくらいに。
やっぱり必要以上に関わりたくない。最初から利用するつもりじゃないとダメだ。
「……しかし、いくら諜報部の人間とは言え触手君には誰も勝てんか」
俺は映像を見ながらそんな感想をこぼす。
公爵家や王家からの諜報部だから当然戦闘力的強さも兼ね備えたやつも混じっているんだろうが、誰1人として触手君に傷すらつけられていない。ひたすら一方的に分泌された成分で狂いそうになって、触手でその限界を突破されている。
「戦う前から分泌成分だけで負けてるしな……」
やはり触手君の種族を絶滅させる判断は間違っていなかっただろう。こんなのが大量にいたら、人間は壊れてしまう。
触手君は親友(意味深)だが、こういう光景を見るとその恐ろしさを再認識する。
「もしこんなのを敵が飼育していたらと思うと……」
俺は金食い虫を使用してきた敵軍のことを思い、自然と顔がこわばるのを感じる。
前回は運良くやり返せたが、今後また同じようなことが起こったとして対処できるかは分からない。大きな被害を受けてしまう可能性の方が高いように思えた。
「それなりの対抗手段を上が考えてくれると良いんだけどなぁ」
そんな他人任せなことを考えながら、俺は基地へと戻っていく。そして、また艦隊に加わり戦場へ……行く前に。
俺は呼び出しを受け、
「君を大佐とする」
「はっ。ありがたき幸せ!」
昇進が決まった。この間中佐になったばかりなのだが、もう大佐か。正直大佐とかになってくると今の程度の艦隊にいるなんて考えられないんだけどな。もう少し大きくなるはずなんだが。
しかも、隊長ですらないしな。大佐なのに小規模艦隊で副官か……非常に変わってるな。
なんて思っていたら、まるでそういえば今思い出したというように、
「また、次の任務終了後には更なる昇進があるものだと思ってかまわない」
「……はっ」
追加で昇進があるかもしれないと付け加えられた。
大盤振る舞いだな。
ただ向こう、というか俺の昇進に口添えしたのであろう上の連中の気持ちも分からないわけではない。俺は公爵にも王家にも借りがあると言うことになっているから、その借りを向こうはすぐに返したいわけだ。
そこで思いつく簡単な借りの返し方というのが、昇進だったのだろう。
金や物を直接手渡すと何かあったのかもしれないと勘ぐられる可能性もあるし、それよりは今回の惑星奪還などの功績を使って誤魔化すことのできる昇進にしたのだと思われる。
因みに昇進以外にも、俺は奪った惑星の数が10個を超えたとか言うことで勲章ももらった。また制服を彩るものが増える。………正直邪魔だな。
そして、勲章をもらったのは俺だけではなく、
「ダリヤ!お揃いですわよ!」
「そうですね。勲章がお揃いというのが少し悲しい気もしますが、嬉しいです」
ダリヤとセシルの2人も勲章を得た。セシルは基地関連のことで勲章を得て(隊長のため主導したセシルが自動的に取得)、ダリヤが敵兵を一定数討伐したというものを得た。
そのダリヤの得た勲章が以前セシルの得た物と同じものであったため、お揃いと言うことを言っているわけである。
2人のそんな姿を見ながら、フィネークは嬉しいような悲しいような複雑そうな顔をしていた。
……不憫だな。いじめたくなるくらいに不憫だ。




