43.深読みされてるかもしれませんけど何か?
単純な俺の手札の中では、国外へ影響を及ぼすことのできるものは非常に少ない。
だが、少ないと言うだけで全くないわけではない。2,3個は俺の個人的な手札の中にもできることはある。だから俺は今回、それを少し使ってみるつもりだ。
勿論、逸脱者達の力を借りれば手段の数は圧倒的に増えるのだが、今回は力を借りてまでやる必要はない。全て俺の個人的な手札だけですませるつもりだ。
「ということで。ドワーフに敵対した愚か者達には死神の恐ろしさを教えてやるとしよう」
死神。
そう。本日俺は、死神と呼ばれる宙賊狩りとして活動中だ。
現在俺たちの艦隊は一仕事終わらせた上に大戦果を上げたとして、休暇が与えられたのである。俺としてはかなり今回のことは長引くと思っていたのだが、予想以上に敵が自滅(俺に偶然策を利用されたりして)したり大きな問題を抱えていたりしたので予想以上に早く終わり、もう休暇だ。
では休暇に俺が何をするのかって言えば、この間もやったように宙賊狩りだ。特に今回は敵国がドワーフを攫っていたりしたので、敵国の中で宙賊と戦うつもりである。
え?なんでドワーフがいるからって敵国で宙賊と戦うのかって?宙賊は放置してた方が敵国の治安が悪化するから良いじゃないかって?
…………ちっちっちっ。甘いな。宙賊というのは、そんな簡単なモノでは無いのだよ。
宙賊というのは、実は貴族や王族の私兵だったりするのだ。それも、通常の私兵ではさせられないような危険だったり犯罪だったりする物事を行なわせるための名。
市民達には影響するが、貴族や王族と行った上流階級のものたちには都合の良い存在。それが宙賊という存在なのである。
「だから、潰すに限るんだよな」
俺はそんなことを呟きながら宙賊の船をいくつも破壊していく。
今回はドワーフ関連のことを調べるために、敵はできるだけ爆散させずに機体は残すようにしてある。時間は掛かるが、重要な証拠とかを手に入れるにはこうするしかない。
『ギャ、ギャアアアアアアァァァァァァァァァ!!!????』
『ふ、ふざけんな!殺せ!殺せよぉぉぉ!!!!』
『……嘘だ。嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
足を破壊され色んな物を奪われていく宙賊達は、狂ったように叫ぶ。彼らの中では今、いつ殺されるか分からないという恐怖が広がっているのだろう。
すぐに殺された方がよっぽどマシなはずだ。
「ふむ。良い具合に資料も集まってきたか」
俺は回収したデータを見ながらそんな感想をこぼす。
そこそこの数の宙賊を打ち倒してきたんだが、思っていたよりデータが集まったんだよな。もうちょっと厳重にこれ関係は管理されていると思ったんだが。
……まあ、集まったに越したことはないし問題無い。
ただ、しばらくは宙賊狩りを続ける予定ではある。なぜなら、
「あいつらは、俺のことをしっかりと認識したみたいだな……」
俺は1つのモニターに視線を向ける。
モニターに映し出されているのはこの船の1室。そこには、数十人の首輪を着けられた女達が呆然とした表情で船の外の状況を見ていた。
そんな彼女たちが誰かと言えば、その首輪からも分かるように奴隷である。
「俺が買っても問題無いと判断したんだろうな」
奴隷でもある彼女たちとは、前回買った5人と同じで王宮や公爵家の出身。スパイと疑われて借金奴隷としてタチバナ奴隷商会に売り出されたわけだ。
そしてそれを予約していた俺が購入した、と。
……で、そこで疑問に思うかもしれない。
なぜ、その購入した奴隷達の中に男がいないのか、と。スパイとして疑われた奴らの中には、男も当然いただろ、と。
その意見も正しい。間違いは何1つない。
実際王宮や貴族の家に勤める人間の男女比率なんて半々に近いし、女性だから疑われると言うこともない。
「が、買うのが俺だと知っていたからだろうな」
この見事なまでの女性限定の状況というのは、購入者が俺だったからだろうと思われる。そして、俺という人間が何人もの女性をたぶらかし関係を持つ存在だったから。
だから俺が女好きだとして判断され、そんな俺に何かしら仕掛けるために彼女たちが売られてきた。
「……まあ、あとはミミの個人的な思惑とかもあるか」
彼女たちを売ってきたのはミミだ。事前に予約をしていたとはいえ、その奴隷を買うかどうか決めるのはミミである。
だからこそ、彼女が男の奴隷を買わなければ俺に男の奴隷が売られると言うこともない。
「ミミも俺が奴隷達で遊ぼうとしていると判断したか?そこで、恋人関係などが構築されないように女だけにしたとか……」
ないとは言いきれない。ミミは詳細に関してはかなりのものを持っているが、変なところで頭が悪いから。
妄想して深読みしすぎた可能性も充分……
「まあ、どちらでも良いか」
俺は頭を振って一旦そこまでの思考を振り払い、また次の仕事に集中することにする。
奴隷達に、俺が死神であることをしっかりと示さなければならないのだから。
あぶり出しのためにも。
主人公の個人所有の船は宙賊程度ならどうにでもなりますが、中規模の正規軍の艦隊などは相手にできません。
もしかち合った場合は即逃走します。(逃げるは恥だがなんとやら




