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41.脳が震えますけど何か?

「……でしたら、小官から1つご提案が」


俺がそう言って前に出ると、周囲の視線が俺に集まった。

その視線に込められた感情はいくつもあり、困惑、怒り、軽蔑、驚愕、敗北感、などなど。だが、多くのものがマイナスな感情の乗ったものだった。

今までドワーフと会話をしていた公爵もその視線には呆れなどが込められており、


「なんだね?たかが一兵士でしかない君に何ができると言う」


そんな言葉を投げかけてきた。

俺程度に何もできるはずがないという思いなのだろう。公爵はその高貴さにより幅広い人脈と権力を持っているだろうし、俺をそう侮るのもよく分かる。

が、俺はその公爵の視線と言葉を一切無視して、ドワーフを見つめる。

俺が今言葉を欲しているのは、公爵じゃない。ドワーフなのだ。


「……ああ。なんか案があるなら言ってみてくれ。何も案が出ないままこうしてむだに悩んでいるよりはずっと良い」


俺の視線を受けたドワーフは、俺の発言の許可を出す。

この場において、その許可は誰にも止められない物となっていた。たとえそれが、公爵であったとしても。


対等な立場だとしても、潜在的な上下関係は存在する。そこに置いて、ドワーフは圧倒的に公爵より上にいるのだ。

俺は許可が下りたので早速口を開き、


「では提案をさせて頂きます。実は私に奴隷商人の知り合いがいるのですが、その者が敵国に販売する奴隷にも一部関わっているのです」


「ほぉ?」


ドワーフは興味深そうな顔をする。

因みにここで言う奴隷商人というのは、ミミのことだ。あそこの商会は色々な国で奴隷の販売をしていて、俺たちの国から直接は売りに行けないが敵国にも他の国から奴隷を輸出したりしているのだ。

だからこそ、敵国の内情も奴隷関連であれば詳しく、


「人間でもドワーフでも構いませんが、その者の協力を仰げば彼の国に奴隷として工作員を送ることが可能かと思われます」


「……ほぉ~」


ドワーフの感心したような声。それはまさに、俺の提案が有意義であったと言うことを表していた。

だが、勿論俺の言葉を全て鵜呑みにするのではなく、


「だが、その国だって広いんだろ?数人奴隷を販売してるからって、俺たちの同胞の居場所まで分かるか?」


疑問も挟んでくる。

ただ、俺はこの提案をするに当たってしっかりと調整をしてきており、


「問題ありません。その奴隷商人は、1年に約100人の奴隷を国の貴族や王族に販売しておりますので」


「100人。それはまた随分と多いな」


「ええ。ですから小官としても、このルートは使えるのではないかと愚考致しました」


俺はそこまでいって、ドワーフを見つめる。

ここで一切公爵に目を向けないのがポイントだ。公爵が何かしら俺をとどめるようなサインを出したとしてもそれに気付かなかったと言うことで終わらせられるからな。……あと、自分も噛みたいというのも無視できる。


俺に見つめられたドワーフは、少し思案顔になった。

それから俺の目を見つめ返してきて、


「よし。じゃあ、頼むぜ。工作員についてはこっちで用意するから、ルートさえ確保して貰えれば良い」


「分かりました。ただ、想定外の事態が起きた場合に備えられるようにはしておきますので」


「ああ。分かった」


正直に言って、ドワーフが潜入に入ったら警戒されるのは目に見えてる。絶対にスパイだと思われて、他の利用しているドワーフたちには会わせないようにするだろう。そして、スパイのドワーフたちは隔離されてしまうはずだ。


だからこそ、他のスパイをこちらで用意しておく。ここの部分の手柄を公爵に譲ることができれば、公爵からも文句は出ないはずだ。公爵がドワーフへ恩を売れるからな。

俺はそんな皮算用をしつつ、胸ポケットからとある装置を取り出し、


「では、こちらの機械を使うことで連絡が行えますので、お渡ししておきます」


「おう。ありがとよ……って、なんだこれ!?」


ドワーフは手渡されたものを見て驚く。

その反応が何か危険なものを渡したものによるのではないかと考えた数人が、俺を確保できる位置に動いたな。勿論俺は変なことをするつもりがないので、それは無視するが。


ドワーフの方は俺が警戒されているなんてことは全く気付かないようで。それよりもその渡された機械に対して、


「おいおいおいおい!!!!これはなんだ!どうやって作った!俺たちの技術じゃないだろ!お前たちの国はこんなもの作ってるのか!?見たことない組み方で……」


好奇心が抑えられないといった様子で俺の肩を掴み、前後に激しく揺さぶってくる。

の、脳が、脳が震える~(大罪教徒風)。


俺は流石に揺らされ続けると色々とマズいものをまき散らしそうだったので、


「落ち着いてください、そんなに一度に質問を頂いても返答できかねます」


「落ち着いてられるかよ!これが利用できるようになれば、世界が代わるぞ!!」


落ち着く様子はない。

やはり、渡したものの技術の価値は、ドワーフにとっても信じられなくらい高いものだったようだ。


「質問には答えますので、揺らさないでください」


「……ちっ。分かったよ。キリキリ吐け」

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