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39.議論は白熱し飛躍しますけど何か?

国王にまで話がいって、ドワーフに関しての偽装工作が許可された。当然ドワーフの方にもこの事情は説明してあり、了承を得てある。

流石にそんな少しの快適さの違いで同胞が殺されるのは嫌なんだそうだ。……ただ、できれば何か作るためのものが欲しいとは言われたがな。とりあえず捕虜であると言うことを忘れずに木製(植えられているものでは無く培養されたもの)のトンカチと木製の物品を色々と渡した。後は自分でどうにかしてもらうほかない。


「うぅん。この木の材質から考えると、この方向に上手く差し込むことができれば……」


ドワーフは早速楽しんでいるようである。見回りもかねて俺が食事を届けていたのだが、様子を見る限り元気そうだ。


「食事を置いておく」


「……いや、でもこういう動きが考えられるか……」


「仲間のためにも色々と活動は必要だろうし、身体には気をつけるように」


「……なるほど。こういう繊維か。それなら……」


俺の言葉は完全に無視されている。聞こえているのか聞こえていないのかすら分からない。

が、これがドワーフという生き物の基本的な習性だ。一度熱中しだすと暫くこのままになる。なまじ人間よりも身体が頑丈だったりするため、睡眠や食事を抜いても生きていけるんだよな。

中には、おむつをはいて排泄を完全に無視するものもいるらしい。


「……流石にそこまではしないで貰えるとありがたいのだがな」


俺はこのドワーフがそうでないことを祈りつつ、その様子を暫く見守ってからブリッジへと戻った。

もうちょっとしっかり声をかけて食事の存在に気付かせるべきだと思うかもしれないが、こういう職人タイプにはそういう対応はあまり良くない。普通にキレられて関係が険悪になってしまう。

こういうタイプは周囲に迷惑(心配を除く)をかけない限り、放っておくのが吉だ。特に害もないし、職人気質なら良いものを作ってくれるかもしれないしな。


「あっ。中佐、どうでして?」


戻ってきた俺の姿を見て、セシルがドワーフのことを尋ねてくる。

隊長に尋ねられたのだから俺が答えるのはその通りのこと。


「現在は木工作に集中しているようです。あまり干渉して癇癪を起こされるのはマズいので、放置しております。食事はおいておきましたので空腹を感じたとしても問題はないと」


「あら、そうですの?もう少し話をして貰えないと困るのですが……まあ、仕方ないですわね。ドワーフに人間の価値基準が通用するとも思えませんし」


ドワーフに人間の常識が通用しないのは当たり前のことだ。なにせ形こそ似ているか、実際の中身は全く別の生物なのだから。

この世界で、その違いの分からない愚か者などいない。多様性を理解しなければ頭が足りてないと判断され、ゴミと大差ない扱いをされるだけである。この広い宇宙に、替えの効く人材なんていくらでもいるんだから。


「この際、そういったことはきっぱりと諦めてしまった方が良いかと」


「ですわね。……しかし、そうなるとどうしますの?事情聴取を諦めたら、今回の事態の解決は図れませんわよ」


セシルの言い分はもっともだ。話を聞かなければ何も分からない。まだまだ聞いていない情報がいくつもあるのだ。

だからこそ、事情聴取を行ないたい気持ちはよく分かる。

だが、


「それは分かっております。情報が不足しているのも確かでしょう。しかし、これ以上聞き出したところで詳細の確認ができるだけで、大きな影響を与えられるような情報が出てくるとも思えません。できるようであれば事情聴取を行い、できないのであれば別の方向から検討することが賢明かと思われます」


今俺たちがドワーフに聞きたいことというのは、細かいことばかりだ。裏付けを取るための諸々とかな。だが、状況を大きく変えられてこちらが圧倒的優位になる情報というわけではない。

なのだから、できればラッキーくらいに思っていれば良いだろう。過度な期待はよくない。


「……そうですわね。中佐の意見が現実的ですし、私も諦めることにいたしますわ」


セシルも仕方ないといった様子で事情聴取を諦めた。

だが、ただ諦めるのではなく、


「では、ここから何ができるかを話し合うべきですわね」


「ふむ。そうですね」


「事情聴取以外で今私たちにできること、それを考えるべきだと思いますの」


良い考え方だな。

できないと分かれば、別のできることを探していく。諦めるだけじゃないっていう姿勢はとても素晴らしい、

この状況でできることなんてないのでは、とよく考えなければ思ってしまうが、


「では、まずは状況の整理を行いまして……」


俺たちは議論を進めていく。

常に状況を改善し続けようとする姿勢を持って。


そして、


「よし。では、私たちもドワーフとの会談に同席すると言うことで決定ですわ!」


「良いですね。お父様も快く承諾してくださりましたし、軍としてドワーフのことに関わることができます」


「国としては難しいことも、この艦隊なら小規模ですし細かく動くことはできるはず。ドワーフと無事交渉して、ドワーフとの関係を作りますわよ!」


……どんどん議論は白熱し飛躍し、なんかこうなった。

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