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37.ドワーフは貴重ですけど何か?

敵軍にいた、ドワーフの奴隷。

それが非常に問題だ。

本来ドワーフは戦いを好まず、戦争に出てくることなんてめったに無い。それを奴隷にして引っ張り出したのだから、意思など無視してのものだろう。

……ただ、問題なのがドワーフを奴隷にするという行為だ。


「ドワーフの価値を理解した上で敵はそれを行なったのでしょうか……」


「分かりませんわ。ただ、分からない様な国が存在するとも思えませんが……一応、その捕虜から色々と聞き出すことに成功しておりますの」


「そうなのですか?そういうものは主人からの命令で黙っているようにされるものだと思われますが」


奴隷に命令して、都合が悪いことはすべて言わせないようにするというのは普通なことだ。というか、そういう命令ができることも奴隷が人気である点だ。

機密を一切漏らさないのは、組織にとって大事なことだろう。


「それがですね……どうやら、主人が死んでいて命令が切れているようなんですの」


「あぁ。なるほど。……今回の戦場に主人がいた、ということですか」


奴隷の命令は、主人が殺されると全て白紙になる。そのため、主人が殺されれば機密を守る必要もなくなるのだ。

そのため、ドワーフから情報を引き出せたとのこと。

そうして聞き出したことによると、


「奴隷狩りが行なわれたようですわ」


「奴隷狩りですか。それはまた……」


奴隷狩り。一般市民を奴隷にするため襲う行為だ。田舎の防衛力が低い村とか、1人で人気のないところで活動していたりするやつとかが狙われる。

ドワーフの星のどこかの村が襲われたなんて言う話は聞いたことがないから、この奴隷狩りは1人で活動しているやつを対象にしたものだろう。


「1人で物作りの材料を運ぼうと船を動かしているところを襲われ、奴隷に。積み荷も全て奪われたそうですわ」


「なるほど。……そのようなドワーフは他にも?」


「ええ。他にもいるとのことですわ。……ただ、本人から話が漏れたとなると問題になりますから、そこは黙っていて欲しいとのことですわ」


「ふむ。……分かりました。では、隊長は公爵様を経由して陛下に直接この事を伝えるよう持ちかけて頂けませんか?」


「お父様を経由して、ですの?」


こういう事態になったときは、権力を頼るのが手っ取り早い。

本部のじいさん連中も頼れはするだろうが、国王に直接って言うのは無理だろうからな。絶対に何人かを挟むことになる。

そして、その挟む人数が多ければ多いほど、今回の話が外に漏れる可能性は高くなる。


「公爵様も、今回のように国にとって重要なことを拒否するとは思えませんが」


「……それもそうですわね。今回のことは私の我が儘というわけでもありませんし」


セシルも納得したようである。

すぐに移動して、父親である公爵と連絡を取り始めた。

そんな風にセシルに色々としてもらっている間に、


「ダリヤ様」


「ん?私も何か?」


ダリヤの方でもやってもらうことにする。

特に難しいことをしてもらう必要はなく、


「もしコンタクトが取れるのであれば、陛下に直接連絡をお願いします。内容を他の方に聞かれる場合があるのでしたら、やめて頂いて構いません」


「あぁ。なるほど。分かりました。やってみます」


セシルから公爵に行って、そこから国王に。……ってなると時間が掛かるから、できるなら国王に直接伝えてしまった方が良い。

国王も決してバカではない………………と思いたいから、ダリヤから聞いた話を周囲にばらまくことはないと思うんだよな。というか、ばらまいたら公爵から伝えても絶対問題起きるし。


「……はぁ。問題が起きないことを祈ろう」


未来のことを考え、ため息をつく俺。


ここで、少し補足としてドワーフについての説明をしておこう。

ドワーフというのはファンタジー等のイメージにもあるように、物作りを非常に好む傾向にある。それこそ争いとかどうでも良いからもの作らせろ。というか争いがあるなら俺(私)たちに武器作らせろ。とか言ってくるタイプの生き物だ。


そしてそんな物作りへの思いに比例して、その腕は非常に良い。それはもう、人間達とは比べものにならないほどにな。

今ドワーフが集まってドワーフ達の国となっている場所も、他の国では足元にも及ばないほどの生産力を持っている。もちろん、品質だって素晴らしいな。


ではそんな国がもしあったら、どうなるだろうか?

想像に難くないだろう。その国を巡って争いが起きるんだ。その国を手中に収めようとするものたちの手によってな。


だが、それはあまりにも危険すぎた。

宇宙全体が争いに巻き込まれ、いくつもの国が滅んで人が死んでいくことは予想できたのだ。

だから、流石に人類も踏みとどまった。

独占はマズいから、皆で分け合おうぜ。という話になったのだ。

誰もドワーフたちに手を出さない代わりに、ドワーフたちは全ての国と交易をしてもらう。そういう話に。


まあ、ドワーフたちにとっては一方的な話ではあるんだが、幸いなことに彼ら彼女らはそれに抗わなかった。

……何せ、全ての国と交易ができて、更に争いに人を割かずに済むんだぞ?それでより物作りができるようになるなら構わない、と考えたのだろう。


「……だからこそ、ドワーフに手を出すなんて普通はしないんだがな」


敵の考えが分からない。

生産能力のみを考えて行動したというのであれば、浅はかだと言うほかない。

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