32.機雷はとんでいくのも魅力ですけど何か?
敵の数を着実に減らしていく。
敵の増援も来てはいるが、このペースで増えるならどうにかなりそうな状況だ。
……そう思っているときに、敵が動いた。
「ついに来るか」
敵の中でも特に巨大な船。
圧倒的な威圧感を放つその船が、安全圏からチクチクとレーザーを発射するという方針を転換してきた。ゆっくりとこちらに近づき始め、威力の高い武装を使い始める。
動き出した理由としては、
「味方が劣勢になってきたように感じたか?……いや、違うな」
そんな理由で船が動くとは思えない。劣勢だと感じたのならあの船を出してくる意味はないからな。
あの船を活躍させるなら、優勢だと思ったときに参加すれば良い。劣勢を覆す英雄的存在になる必要があるようにも見えないし、そんなことを今頃したところでという話だ。今までいたんだからもっと早く参加しろよと言われるのが落ちだろう。
ならば、
「この星の武装が限界とみたか」
あり得る話だ。
敵は有名な船なのか有名な人が乗っているのかは不明だが、簡単に堕とされたくはないはずだ。ならばどうするのかと言えば、こちらが他の敵に強力な武装を使ってくれるのを待てば良い。
強力な武装を使わせて使わせて使わせ続け、弱い手札しか残っていない段階で圧倒的な火力を見せつける。
それを敵は狙っているのかもしれない。
「船の損傷も少なく済むし、敵を止めた英雄にもなれる、一石二鳥だな」
同じ戦場に出てきている船からは恨まれる可能性もあるが、本国に戻れば英雄扱いだろう。
多少の恨み辛みなど気にならないほどの名声と地位が得られるかもしれない。
……いや、流石にそこまではないか。惑星1つだから、名声は得られても地位は1つ階級が上がるくらいかもな。
「敵の事情も予想できるし、攻撃に備えた方が良さそうだな」
ここで敵は一気に片をつけようとしてくるはずだ。ここまでの慎重さを見れば、そのくらいの予想はつく。
出てきたからにはすぐに仕留めたいタイプだろう。
そんな風に思われた船は、俺の予想を知ってか知らずか主砲部分にエネルギーを集め出す。高火力のレーザーで壊滅的なダメージを与えてくるつもりのようだ。
あのエネルギーが集まっている場所に攻撃すれば逆に向こうに被害を与えることができるだろうが……この惑星の武装を全て集中させるくらいのつもりじゃないと駄目だな。攻撃力も相当だろうが、シールドも同じくらい強力なはずだ。
「対策を考えておいて良かったな。下手すりゃ俺も死んでた」
俺は胸をなで下ろしつつ、向こうの攻撃の結果を待つ。
勿論、他の船を沈めていきつつ、な。
「さぁ。来るぞぉ!!」
敵艦の主砲から放たれる光が一瞬膨張し、その直後に太いレーザーが放たれる。
それはまっすぐに惑星へと伸びてきて、
「……うん。上手くいったな」
レーザーは惑星を正確に狙ってきていた。もしも当たれば、最低でも武装の半分が消えることは確実だった。
だが、結果として惑星が破壊されることなくすんだ。
敵側はこれが予想外だったようで、動きが一瞬ぎこちなくなったな。お陰で仕留めやすくなったぞ。
「強い兵器が使われるなら、こっちも強い兵器を使えば良い」
今回全くとは言わずとも被害をほとんど受けなかったのは、この考え方のお陰だ。
何を使ったのかって言えば、前も敵の攻撃から身を守るのに使ったアレだな。
そう。アレ、機雷だ。
「あの爆発力は一時的な防壁として使うのに魅力的なんだよなぁ」
そんな扱い方をするやからは少ないが、俺は好きだ。普通にシールドを張るよりも何倍も効率が良い。
敵が攻撃をしてきたときに発動するから常時エネルギーを使う必要はないし、シールドと違って自分の周りにも使える。
そして何より、こういう惑星上に潤沢に機雷なんかがあるときには、
「良い具合に跳ぶんだよなぁ」
機雷が爆発するとき、連鎖的に周りの機雷も発動することがある。その場合普通に発動するものも有るのだが、多くは発動した機雷の爆発の威力で吹き飛ばされ、吹き飛ばされた先でまた爆発するのだ。
お陰で広範囲に爆発寸前の機雷がばらまかれ、
「機雷の周辺以外にもかなりダメージが入ってるな」
俺はシールドより機雷の方が好きだが、その分危険性も分かっている。そのため、敵の攻撃が来て機雷が発動すると分かったときに惑星周辺のシールドを強化しておいた。お陰でシールドにもかなりの被害が出ているが、惑星自体への損害がない。
逆に、俺のシールドがレーザーに対してのものだと勘違いした敵側は対策をしていなかったために大打撃を受けたわけだ。
機雷はかなり威力が高いから、あまりしっかりシールドを張っていなかった場合は大型艦すら消滅してしまう。この戦場でも大型艦や中型艦も多く沈んでいた。
「さて、とりあえず周辺に大打撃を与えたわけだが……またレーザーを使ってくるか?」
敵側は、レーザーを撃ったときに被害を受けている。
そのため、レーザーを撃つことに対して若干の恐怖が芽生えていることが考えられる。
その恐怖はあの大きな船に乗るモノで無いにしても、周囲の船の人間は必ず抱えている。ここで恐れずあの大きな船の艦長が撃つことを指示したとしても、周囲の船から確実に苦情が入るはずだ。
「くくくっ。これで1つ大技は使えなくなったな」
作者は機雷大好き人間です。
大抵のゲームで直接戦闘せずにひたすら罠を仕掛けています(キリッ!)




