30.フラグだったようですけど何か?
「小型艦は楽に潰せて良いな。実に素晴らしい」
現在俺は交戦中。
それも惑星上で、惑星を使っての交戦だ。
この星には防衛用の装備が沢山有って、戦うのには非常に便利な場所だ。他の星でも大抵はそうなのだが、こうして装備が多くある星と俺の相性は非常に良い。
何せ、俺は風の魔力を使っていくつもの兵器を同時に操ることができるからな。……まあ、やることなんて星の反対側にある兵器の起動ボタンを風の魔力でポチッとするくらいなんだが。
とはいえ1人でいくつもの強力な兵器を使えるのは有利なポイントであり、
「俺のキャパを超えるくらい敵が押し寄せてこない限りはどうにかなる」
そう。
幾つか考えられる俺の負け筋の1つがそれだ。
俺が惑星に降りて殲滅して惑星の支配を奪ったとしても、俺で対処できない数で押されれば俺は負ける。
他にも俺で対応できる数でもこの惑星の兵器では対応できない数の敵が来たりとか、星の防御では足りないほどの力で攻撃されたりとかすれば負ける。
だからこそ、俺はそうならないように気をつけている。
たとえ単身で今回のように突撃したとしても、駆けつけてくる敵の数を味方に抑えてもらったりして俺のキャパを超えないように調整する。
俺は強いが天才ではないため、1人でできることには限界がある。仲間に手伝ってもらうことも大切なことだ。
「……とか思ってるだけでもフラグになるのか、おい。口に出したのなんてほんの少しだけだぞ」
どうやら俺はフラグを立ててしまったようだ。
監視していたモニターが映す1つの区画の映像。そこには、巨大な船の姿が米粒程度ではあるが映し出されていた。
レーダーの方にも、強烈な反応を感知していた。他の船とは比べものにならないほどの強大さだ。
「大型艦、いや、この間の要塞レベルか?……絶対にこの惑星を利用はさせたくないって言うことだろうな」
惑星を奪い返すのは諦め、この惑星を破壊しようという考えだろう。
それほどまでに、惑星というのは重要なものなのだ。だからできれば俺としてもここは奪っておきたかったのだが……前回の戦場で戦った要塞と同等かそれ以上に巨大な船と真正面からはぶつかりたくないな。
新しい敵をよく知っている訳ではないが、おそらくあの船は敵国の船の中でもかなり有名なものなのだろう。
なんだか、あの船の姿が見えた当たりから敵軍の動きも少し変わってきたし。
「……いや、船ではなく中身が有名という可能性もあるか?」
中身、つまり、乗っている人物が有名という可能性もある。
例えば王族であれば、士気が上がるのも当然だろう。それに加えて巨大な船を指揮して敵を滅ぼしたなんて言えば……名声を得られるし支持率も上がるだろう。
「政治利用の可能性も高いかぁ……ここは惑星を残すことよりも巻き添えにすることを考えた方が良さそうだな」
敵の船なのか中身なのかどちらが大切なのかは分からないが、ここで惑星ごと敵の船を巻き添えにして倒した方が得なように思える。
ということで、
「あの船の周りには弱めのレーザーを使いつつ機雷設置で良いな」
弱いレーザーで、こちらの攻撃がたいしたことないと思わせる。そうして油断させつつ、近づいたところを機雷で大ダメージ……とする計画だ。
失敗する可能性もあるが、というかこの程度の作戦が成功する方がおかしいのだが、
「だが、相手もそう易々とは退けないよな?」
もし相手側が有名なら、そう簡単に引くことはできない。名声を得れば、それだけ傷つくことが危うくなるってことだからな。
当然士気やら支持率やらを保つためにたとえ何かあっても傷は隠そうとするだろうが、名のある者を追い落としたいやつなんて大勢いる。
「だから、撤退なんてそう簡単にできないだろう?」
敗北よりは撤退の方が幾分マシだ。
だが、たとえ撤退するにしてもその基準を決めることは非常に難しい。
名声を得て実績を積み重ねていけば、自分はまだいけるんじゃないかなんて言う根拠のない自信も出てきたりするし。
「来たら地獄だと理解しているだろうが、引いてもひどい事になるのは分かっているだろう」
ならどう出てくるのかというのは分からない。
だが、敵が最高に苦しんでくれるだろうことは予想できた。
「上手くいけば破壊できるし、駄目でもこの惑星を手に入れられる可能性はある。両方駄目でも、この惑星を破壊できたという功績にはなるだろう」
元からこちらに無かったモノなのだ。それを利用した末に破壊したとしても、褒められるのが当たり前で罰せられるなんてあり得ない。
今の状況で気をつけるべきことなんて、せいぜい俺が死なないようにすることくらいだ。
……まあ、それが今かなり難しくはあるんだけどな?
この敵に囲まれた状況で生き残るとか普通は無理だ。
「普通は、な」
俺は普通じゃない。
何度もとまでは行かないが、何度か経験はあるからな。こんな風にギリギリの状況で生き残ることにだって経験はある。
「ということでまずは手始めに」
俺は早速この状況を打開するために動く。地上特化殺戮兵器が今まで生き残ってきた理由を教えてやるよ。




