27.単身での突撃ですが何か?
艦隊と合流した。だからこそ、これからは仕事をしなければならない。
のだが、まだ何をするのか全く決まっていない。
ということで協議開始だ。
「どうしますか?」
「そうですわねぇ…………基地の奪還はどうですの?」
セシルは、襲撃されて制圧された基地の奪還が提案された。
無難な意見だな。だが、
「本格的な奪還を行なうのであれば、我々の艦隊だけでは足りないかと。そして、時間をかけすぎれば敵が万全の体制を整えるように思われます」
「うぅん。確かにそうですわね……」
色々と奪還には壁がある。敵も基地を本格的に自分たちのものにするためにかなりの数の船は揃えているだろうし、奪い返すならこちらも対抗できる数を用意しなければならない。
そうして時間をかけて数を揃えても、おそらく行なわれるのはこちらにとって不利な攻防となることは明白。
たとえ奪えたとしてもこちらの被害が大きいだろう。
「では、ちょっかいをかけて敵の開発の邪魔をするというのはどうですか?」
セシルが俺の反論を受けて悩んでいると、ダリヤが今度は提案してきた。
セシルの案とは違い、奪還ではなくあくまでもちょっかいをかけるだけというものであり、難易度は大きく変わる。
「最善とは言えませんが、この艦隊にできるのはその程度でしょう。1つの手かと」
悪くない手だ。俺たち程度のような小規模と言って良いような艦隊では、それくらいしかできないと考えて良い。上手くいけば大幅に敵の作業を遅らせることができるだろう。
コンスタントに実績を積み上げていくタイプの指揮官が考えそうな作戦だ。
「他に何か意見はありますか?」
「……中佐はどう考えておりますの?」
「小官ですか」
おっと。俺に振られたな。
考えていることは一応あるんだが、どう思われるか分からんな……言ってみるか。
「ダリヤ様の意見への付け足し、といったものなのですが、基地への攻撃を行なう間に小官が惑星降下を試みるのはどうかと思っております」
「惑星降下、ですの?」
「はい、事前の作戦でありましたが結局実行されていなかったため、おそらく大した対策がされていないだろうこの機会に行なうのはどうかと思いまして」
俺、というか俺たちの艦隊はそのために戦場まで来たのだ。結局その目的を達成する以前の段階で基地が奪われてしまい機会を失ったが、国としては惑星降下を行ないたいというのも事実。
できるのなら許可は下りるだろう。俺たちはダリヤが来てから自由裁量権がかなり認められてるし、許可もすぐに下りると思う。ほとんどはんこを押すのと同じレベルのことを上層部はすればいいわけだし。
「……なるほど。でも危険ではなくて?」
ダリヤは難しい顔をする。
降下となると俺1人で行なう可能性が高いため、俺の身の危険を案じてくれているのだろう。
だが、余計なお世話と言っても良いかもな。
「問題ないかと。何度か今以上に難易度の高い惑星降下は経験がありますので」
「あぁ。……そうですの。中佐がいけるというのでしたらいけるのかもしれませんわね」
セシルが遠い目をしている。
信じられないが、俺はかなりハチャメチャなことをしているからあり得ると思ったんだろう。それに、そのハチャメチャなことも俺なら上手くやれるとな。
「……他に意見もないようですし、それで良いかも知れませんわね」
ということで。
数日もかからないうちに俺たちは動くことになった。
移動しながら上層部に許可を取り、
「それでは中佐。お気をつけて」
「はっ。隊長もお気をつけて!」
艦隊から、1機の戦闘機体が離脱していく。
離脱とは言うが、ただ俺の乗る戦闘機体が別行動をするだけだ。
「……ふぅ~。流石にこれは気を引き締めないとな」
誰との通信も繋がらない中、俺は独り呟く。
俺も今までの任務などで経験はあるが、だからといって余裕なわけではない。失敗する可能性だって充分にあるんだ。
それでも俺は、
「やってやるよ。確実に、惑星を奪う」
俺はスロットルを全開にして、戦闘機体を前進させる。
ここからしばらくはよほどのことがない限りこの機体の向きを変えることはしない。少しもこの機体を曲げることをするつもりはない。
……なぜかって?それは、
「ぐおおおおぉぉぉぉぉ!!!!Gがきっつい!!」
激しく俺に力が掛かる。機体も、悲鳴を上げていた。
俺の乗る機体は、絶讃戦闘機体として想定されていない速度で移動中。例の個人用で作らせていた装備を使って、な。
というか、あの装備がなければ戦闘機体で機体が悲鳴を上げるほどの速度を出すことはできない。たとえ速度特化の小型にくくりつけられて移動しても耐えられる程度には強度があるからな。
……まあ、レーザーくらえば大破する程度だけど。
それでも速度だけでここまでになるのは相当なことだ。いかに使っているブースターが異常なのかが分かる。
「だがぁ!これだからこそ単身で突撃できるんだよぉぉぉぉ!!!!」




