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22.整備できますけど何か?

「あぁ。乗ってしまった。私、乗ってしまいましたわ……」


「乗りたくなかった。予備船なんて絶対に乗りたくなかったですぅぅ!!!」


涙目な2人。

予備船に詰め込んだは良いが、使い物にはならないな。予備船をあまりにも怖がりすぎている。

……まあ、スペックが低すぎるのは認めるがな?この船は本来、基地が何かの拍子に動かなくなって、他に乗る船もないときに使う本当に予備も予備な船なのだ。そのため移動の力がほとんどであり、戦闘の要素など全く考えられていない。


「ふむ。整備不良でしょうね。パワーが80%までしか出ません」


「「「「ノオオオオオォォォォォォ!!!!!!」」」」


絶叫が響く。これには2人だけでなく、護衛達も声を出したな。

ただでさえ性能の低い予備船なのに、それにプラスして整備不良でスペック低下とか最悪なコンボだろう。今はスペックの低下しか確認されていないが、下手なところが整備不良だと俺たちが死にかねん。

例えば、空気関係とかシールド関係とかに問題があったら即死もあり得るな。他にも壊れたり狂ったりしたらマズいところはいくらでもある。


「護衛の方々に、そういう知識のある方は?」


俺はダメ元で聞いてみた。

当然のように、全員から目線をそらされる。

……つまり、誰も整備とか点検とかできないってことだな。最悪だ、


「か、神に祈るしかありませんね」


「そ、そうですね。何も問題が起きないことを祈るばかりです……」


祈るような仕草をする2人。精神状態は非常に悪そうだ。

……仕方ない。


「では、操縦のできるものは?」


「あっ。それなら、わ、私が」

「私もできます」

「わ、私も……」


操縦の方はできる人間が何人かいた。

現在敵と味方が入り乱れる中予備船で逃げている最中なのだが、こうなったら仕方ない。


「では、頼む。小官は最低限の点検を行なう」


俺はそれだけ告げて、操縦席から立ってブリッジを出た。すぐに動力室や制御室を見て回る必要があるからな。

後ろからは、


「「「「嘘っ!?整備できるんですか(の)!?」」」」


驚きの声が聞こえてきたな。

これでも自分の船を持っている身だから、最低限船に関することは全てできる。流石にプロみたいに完璧な仕事はできないが、応急手当と点検くらいならできるぞ。

……俺の手に負えないほどの問題がないことを祈るばかりだ。


まずは、動力部、


「……うわぁ。ほこり凄っ!こんなの下手すれば発火するぞ?」


部屋にはほこりが積もっていた。

熱を持つ場所にほこりが積もっていたら、普通にほこりは燃える。かなりこれはマズいな。ささっと俺の風の魔法で、


「ほこりを掃除、っと」


こういう時にも風魔法は便利だ。ほこりを適当に角の方に退けておけるからな。発火のリスクはかなり落とせる。

そしたら今度は機械のトラブルなのだが、確認した限り大丈夫だと思われる。接合部が緩んでいるところはあったが、そこは接合を強くすれば良いだけの話だったし。


……さて、そしたら今度は移動して制御室なのだが。

ここで、予想外の光景を目撃することになる。


「……凄い臭いだな」


吐き気を催す強い臭い。

それは、腐敗臭だった。


「死体、か」


そこにあったのは、山積みにされた死体。それも、敵軍の人間のモノでは無い。俺たちの国の人間の死体だ。

ここに死体がある理由の予想はつく。ここに目障りな人間を始末して放り込んでいたのだろう。

流石に死体を完全に消滅させるのは手間が掛かるからな。この予備船とかいう人が来ない場所に入れておくのが手っ取り早かったんだろう。

そして、これで整備がされていなかった理由が分かるな。これがバレたくなかった基地の上層部の誰かが、整備が行なわれないようにしていたのだろう。


「全くもって面倒な」


不正に巻き込まれて命の危機に瀕するこちらの身にもなって欲しい。その愚か者をぶん殴りたいな。

……今頃蜂の巣になっているだろうことを気にしてはいけない。


「まずは空気を閉じ込めて保存。そこからどかして……」


苛立ちを憶えつつも、死体処理を行なう。

山のようにあって邪魔ではあるが、誰かさんが死後の英雄とならないように証拠は押さえておく必要があるのだ。あいつの関係者に金が行くとか、絶対にやってはいけないことだからな。


で、死体を退け終わったら点検と整備だ。

死体があったせいなのかは分からないがかなり制御装置の劣化が激しく、あと1時間動かしていたら壊れそうな状況だった。俺が見に来ていて良かったな。

とりあえず補強して、2,3日はもつようにしておく。


「さて、これで最低限のことはできただろ、っ!?」


独り言を呟くことを、途中で止める。そして、すぐに身をかがめて転ばないように壁に手をつく。


船内が激しく揺れたのだ。

おそらく敵の攻撃を受けたのだろうと思われる。

赤いランプが点灯し、あちこちからピーピーと警告音が鳴っていた。俺はすぐにシールドの装置を確認し、問題が起きていないことを確認する。


「……予備船に攻撃を仕掛けてくるとは、随分と暇なやつもいたものだ」

「乗りたくなかった」が「海苔たくあん買ったになった」になっていて笑いました。

ダリヤ、海苔とたくあんが好きだったんですねw

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