20.特注装備ですが何か?
俺たちは現在、次の戦場へ向けて移動中である。
前回の戦場は敵のトップでありながら貴族の血筋を引くものを拘束するといった普通の戦場では起こりえないことが起きた。だから早々に引き上げてくることができたのだ。だが、今回はそう上手くはいかず、そこそこ長い期間活動することになるだろうと考えている。
なぜなら、
「セシルにとっては、2回目なんですよね?」
「そうですわ。工場を占拠する手柄を立ててしまったせいで、疎まれて防衛に回されてしまったのが懐かしいですわ」
「セシル様、大活躍でしたよね!!」
工場を抑えた場所。基地の防衛をさせられた場所。そして、もう1度来て欲しいと懇願された場所。
俺たちは今、そこへ向かっているのだ。
行なわれるのは、敵が所有する惑星の占拠。そして支配。
作戦としては、敵の防御を無理矢理突破して俺に惑星降下を行なわせた後、俺に地上の制圧をさせるというものらしい。……非常に俺頼りな作戦だ。
この作戦、本来ダリヤが艦隊に加わった段階でやるはずだったものだ。
だが、誰かしらが介入したようで後回しになってしまったのである。あの小さな領域を争っていた国のことが嫌いな存在がいたのか、それとも……。
俺としてはどちらでも構わない。
が、1つ言えることは、確実に敵は対策を立ててきていると言うことだろう。
「すんなりゴトー中佐が落ちられるとは思えませんわね」
「ですよね」
「そこは私たちの援護が必要となるでしょう」
セシルが難しい顔で言い、フィネークが頷き、ダリヤが笑う。ダリヤは前回活躍したし、少し自信があるのだろう。張り付いた笑みが一瞬崩れる程度には自信があるみたいだ。
まあ、自信があるのと実際にできるのは別の話だが。
たとえセシルやダリヤが協力したとしても、対策してきた敵と戦うのは難しいだろう。セシルの情報はあるだろうから、当然戦闘機体対策も施されているだろうし。
「援護は勿論お願いしたいところではありますが、実際に何をしていただくかは向こうの指示を仰いでから決めることになります」
「あっ。それもそうですわね」
俺の言葉に、セシルは納得したような顔を。
セシルの実力を今から向かう先の戦場の指揮官も知っているだろうから、どこかの支援を求めるかもしれない。そうなると俺たちの艦隊が俺に協力できない可能性もある。
だからこそ、
「最悪艦隊から離れることになりますので、事前に突入用の武装を作ってもよろしいでしょうか?」
こういう時にこういうことを言っておくのが良い。
専用の装備と言われるとセシルも、
「え、ええ。構いませんわよ?」
頷くしかないわけだ。これが、罠だとも知らずに。
これで俺は、武装の作成許可を得られたわけだ。必要なものだと言い張れば、とんでも武装の作成をする大義名分を得られたわけである。
俺は早速、セシル達から話を聞かれないところに移動し、中型艦に連絡を入れる。
「聞こえるか?」
『……んぉ?隊ちょ、じゃなくて中佐じゃん。どした?』
帰ってくるのは、寝起きのような少し気怠げな声。
声の主は中型艦の艦長にして、権力だけで言えばこの艦隊の中でかなり上の方に入っている男だ。位がそこそこ高い家の生まれで、権力ごり押しで軍事学校に入って卒業した。が、当然戦闘能力や指揮能力は非常に低い。
所謂お飾りと呼ばれるタイプの人間だ。
だが、そんな彼は俺からスカウトを受けた過去を持つ。
能力が低いため誰からも見向きもされなかった彼。そんな彼を俺がスカウトしたのには当然理由がある。
「隊長から許可が下りた」
『……本当か!?』
俺が告げた言葉で、声色が変わった。彼は、そういうタイプの人間なのだ。
彼が行なうのは物作り、というか武装作成。それも、かなりクセの強いピーキーな武装の作成だ。
ある一定の性能は非常に高いのだが、それ以外を置き去りにした武装を作ることが多い。とはいえ、その中には俺が使うものも有るのだがな。
因みに、こいつの1番良い使い方は、最初に設計図を書かせてそれをまともなものに書き換えて作ることだ。普通に作るよりも若干性能の高いものが作れるようになるぞ。
ただしこの方法の唯一にして1番の欠点は、本人がすねて数ヶ月仕事をしないことだがな。
だが、今回その良い方法とは違う。
今回は、
「小官が使うものだ。好きにして構わない」
『っ!ほ、本当ですか!なら、全力でやらせてもらいます!失礼します!』
すぐに通信がきれる。作業に取りかかるために動き出したようだ。……まだ具体的に何を作るかの話すらしてないのにな。あいつ、きっとフィーリングがうんぬんかんぬんとか言ってとりあえず今まで作ってきた俺の装備の改良版を作るだろう。
どんな装備ができるかはお楽しみってところだな。
「……ん?ゴトー中佐?どうしましたの?」
「小官が使用する装備について話し合いをしておりました」
「ああ。そうなんですのね。楽しみですわ」
たまたま近くに来たセシルはそう言って笑う。
……この様子なら、完成までどんなものが作られるかは予想できないことだろう。クフフフフフッ!!!




