5.隊長が強いですけど何か?
「捕虜の確保に成功しました。ステルス装置の回収次第移動可能です」
セシルは戦闘機に乗ってどこかに行ったが、俺たちは倒した敵の処理を行なっている。セシルの護衛達から激しく睨まれているがそれは無視だ。
それよりも、
「調査したところ司令部の近くにステルス艦が集まっていたようです。発見に感謝するとの連絡が来ています」
「では、連絡が取れたついでに捕虜とステルス装置の件も報告しておけ」
本部に危機が迫っていないか確認することの方が大切。俺たちが小さく活躍したところで司令部が落とされたら終わりだからな。戦争は司令部では無く現場で起きているのは確かなのだが、司令部がなくなると困るのも確かなのだ。
本部とやりとりをして数分。回収作業も完了し、俺たちは前線へと進んでいく。
「まもなく前線へ突入します!」
「全武装発動用意!シールドの維持にも気をかけろ!」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
本格的に戦いが始まる。俺たちの船からはレーザーやミサイルなどが飛んでいき、周りの船からも同じように攻撃が飛ぶ。当然向こうも防戦一方な訳もなく、激しいレーザーの応酬が行なわれた。通常ならこのままひたすら打ち合いが続く所なんだが、
「敵艦の20,20,40方向から戦闘機体の反応を感知!敵艦のレーザーを避けながら接近!……シールドを突破し、砲門を破壊しました!」
一般の兵士にはあり得ないような動きで敵艦に近づき、攻撃を仕掛ける機体が。なんとなく予感がして、俺はそれを尋ねる。
「識別番号は?」
「A-2023-Gです!」
「……隊長か」
セシルが乗った機体だった。セシルが戦闘機体を動かし、敵艦に攻撃を行ない、攻撃手段を1つ奪ったわけだ。一般的な新人であれば昇進は間違いない働きだな。
ただ、残念ながら勲章が貰えるほどでは無い。確か戦闘機体で勲章を得るには100人以上命を奪うとかしなければならなかったはずだからな。セシルがどの勲章を狙っているのかは分からないが、どれを狙うにしてもこれだけでは足りないだろう。
ただそれでも、その光景を見た部下達が、
「す、凄い……」
「何だあの動き。敵の機体に囲まれても無傷だし……」
「というか、囲んだ側が全滅してる……」
目を輝かせて見ていた。ああいう風に単独で強さを見せるのは英雄的で憧れる者が多いんだよな。陸上で戦闘をしたときにはよく俺もあんな目を向けられたな。
因みにその光景を見たセシルの護衛達は固まっていた。自分の護衛する予定の者がもしかしたら自分たちより強いかもしれないと思ったんだろうな。護衛としてはショックだろう。貴族の、しかも公爵家の令嬢に戦闘技術で負けるなんて。
公爵家に雇われるような奴らは俺たちみたいなのと違ってプライドも高いだろうからな~。
「さて。隊長様は放っておいても大丈夫な様だ。こちらはこちらで堅実に攻めるぞ。破壊された砲門の方に回り込みながら攻撃を続けろ!」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
俺はできるだけ落ち着いた指示を出すように心懸ける。英雄的なリーダーがいる場合は、堅実な副官として働いた方が良いからな。
トップによってNO.2は動きを変えなければいけないのだ。目立たないかもしれないが、色々と努力はあるんだぞ。
「敵艦、ミサイルを積んでいた倉庫で爆発が起こり、誘爆によって大きな被害が出ているようです!」
運が良い。何が原因かは分からないが向こうのミサイルが内部で爆発してくれたようだ。向こうが慌てている間にどんどん破壊していってやろう。
なんて思って指示を出していると、
「っ!隊長が向こう側で砲門を破壊!さらにシールド発生部分を一部破壊したようでシールドが不安定になっています!」
隊長が活躍しているようだ。俺たちの船から敵の船を間に挟んだ向こう側、そこで敵の攻撃手段を奪い、防御性能をダウンさせている。
シールドが不安定になっているなら今が攻め時だろう。
「接近しながら攻撃しろ!」
「「「「イェッ、サー」」」」
事務的な返事が返ってきた。全員今は忙しいから、あまり元気よく返事を返している余裕は無い。
俺たちの艦隊はゆっくり敵に近づきながら、攻撃を繰り返す。因みに艦隊と言っているから分かるかもしれないが、俺が指示を出す船は俺の乗っている船1隻だけではない。俺たちが乗っている大型艦に加えて中型が2隻、小型が6隻ほどいる。
一瞬だが、その攻撃を全て弱った敵の船にたたき込んだ。
「ブリッジの破壊!及び脱出ポットの破壊を確認!敵艦機能停止しました!」
「副砲で戦闘機体の処理をしつつ主砲で他の船を狙え」
「「「イェッ、サー!!」」」」
敵の船を1隻落としたからか、部下達に少しだけ余裕が出てきた。返事にまた元気が出てきたぞ。このまま行けば少しずつ敵を減らしていって俺たちは勝てるだろうが……
「敵の増援です!小型艦が10隻やってきます!」