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19.公爵からも呼び出されましたが何か?

激しい夜どころか朝まで激しく過ごした日。俺は数時間ほど寝て休み、また日が暮れ始める前に起床した。

明日からまた仕事だし、少し作業をしてから二度寝すれば良いか、なんて思っていたんだが、


コンコンコンッ

「ん?誰だ?」


ノック(部屋の壁は分厚いため、ノックの音が鳴るボタンがある。勿論チャイムが鳴るボタンもあるぞ)の音が。カメラでノックの主を確認してみれば、


「……隊長?どうかされましたか?」


映っていたのはセシル。

彼女が、なんとも言えない気まずげな表情をしながら立っていたのだ。周りの護衛も何やら表情がいつもより硬い気がする。

何事かとすぐに扉を開けて見れば、


「中佐」


「何でしょうか?」


「お父様から、すぐに来て欲しいとのお話が」


「……公爵様からですか。分かりました。すぐに向かいます」


公爵からの呼び出し。普通ならばドキドキするものだろう。

だが、俺は慌てることはない。なぜなら呼び出される用件なんて分かりきっているのだから。


俺はすぐに服を着替えて身だしなみを整え、待ち合わせ場所へと向かう。夕方は帰宅ラッシュで道が混むのだが、公爵に会うために専用の経路が通れるようになっていたのですぐに行くことができた。

行ってみればすでに護衛や使用人を何人も控えさせている公爵が待っていて、


「遅くなりました。お久しぶりでございます」


「うむ。……呼び出された理由は、分かっているな?」


冷たい目が俺に向けられる。強い疑いを持った目だ。

だが、俺はその視線を全く気にせず、


「ええ。理解しております。先程おそらく殿下の手のものであろうものに呼び出されましたので」


「……そうか。では、話したまえ」


「はい」


聞きたいのは、昨日尋問してきたゴロツキと同じことだろう。

奴隷の5人をどこにやったのか。そして、その5人を買った目的は何なのか、


俺は、公爵にごろつき達へしたものと同じ説明をした。話し終わると、納得したようなそうでもないようなという微妙な顔をされたな。

全てが全て信用できる話には感じられないのだろう。……まあ、実際嘘ついてるしな。

それでも疑うための要素が少ないから、深く疑って聞いてくることはされていないが。


「……なるほど。そういうことか」


「ええ。タチバナ奴隷商会としても、下手に派閥争いに関わりたくはないようですし」


「だろうな……そちらの言い分は分かった。今回は不問としよう」


「ありがとうございます」


不問になるのは当たり前、と言いたいのをぐっとこらえて頭を下げる。ムカつく上役にも平然と頭を下げられるのは社会を生きていく上で大事なことだ。

とりあえずそれで公爵は納得したから、俺は帰ることに。……なるのだが、


「公爵。帰りは手配してくれてないのかよ……」


帰り道。

行きは短い時間で移動できたのだが、帰りはそう言った配慮がなかったようで一般の道を通るルートで帰らされた。お陰で、時間は掛かるし乗り心地はあまり良くないし……公爵が代金を持ってくれてなかったら、俺は確実に王子の派閥について公爵を蹴落としていたな。


「ふぁ……」


帰り着くと、思わずあくびが出る。

俺は予定外の疲れを感じながらも、二度目の旅へと出る。微妙な時間に起きたため二度寝できるか心配だったが、すんなりと寝れてしまったな。



さて、そんなこんなでどうにか王子と公爵からの魔の手(?)から逃れることができたわけだ。

ここから俺たちは戦場に出て活動するため、暫く干渉を受けることは少なくなる。

証拠が集まらないような細工もしてあるし、問題無いだろう。仕事の後どうなるかは分からないが、暫く自由の身だぁぁぁ!!!!


「……ゴトー中佐?」


「ん?何かございましたか?」


「いえ。特に何があるというわけではないですが……」


そう言って俺から少し視線を外すのはダリヤ。

二度目の戦場に出る彼女だが、その顔はまだ硬い。セシルの時はある意味覚悟が決まっててそういうのはなかったが、こういうのを見ると新人という感じがするな。

最初に比べると貼り付けた笑みが自然な笑みに変わってきたが、それでもまだしばらくは緊張した顔を見ることになるだろう。

……緊張していても笑みを浮かべる当たりは流石王族と言えるのかもな。


俺がそうしてダリヤの観察を行なっていると。

横から、


「今回は、主な主役は中佐ですわね」


「……計画通りにことが進めば私の労働が多くなる可能性は高いように思われます」


「ふぅ~ん?計画通りに進めば、と言うってことは、そうならない可能性が高いと思っているんですの?」


「まさか、そのようなことはございません。作戦を立案したのはプロなのですから、そんな彼らを疑うなど……ただ、世の中は思い望んだとおりはなかなか上手くいかないものだと思っているだけでございます」


「ふふっ。それは作戦が上手くいかないと思っているのと同じことですわ」


セシルが笑う。

その隣でダリヤも興味深そうな瞳を俺に向けてきた。

因みに、フィネークだけはよく分からないようで首をかしげている。


……今回の作戦、確かに不安があるのは間違ってないんだよなぁ。

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[一言] もう両方蹴り落としてもよくない?
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