16.スパイは危険生物で対応しますけど何か?
再アップです。
帰りの船の中。
俺は数日前に乗り回して宙賊共を狩っていた船から送られてくるホログラムを眺める。
そこでは、
『ひぃぃぃ!!!???』
『あぎゅぅぅ!!???むりむりむりむりむりむりむりむりむり!もうこれ以上は、あ゛ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!??????」
『許じでぇぇぇぇ!!!!!!死にだぐない゛いいいぃぃぃぃ!」
地獄絵図ができあがっていた。
俺の買った奴隷の内3人が、目から涙を流しよだれや鼻水をぶちまけ、それ以外にも体中から液体を放出している。出していないものは血液くらいだろうか?
……え?悲鳴とかが上がっているのに血液が出てないのはおかしいだろって?
まあ、その気持ちは分からないでもないが本当に血は出てないんだ。だって、
『『『も゛う触手やだぁぁ!!!!』』』
彼女たちを襲っているのは、触手なのだから。
因みに襲われていない2人は、この3人の様子が映っているホログラムを診ながら顔を真っ青に……しているかと思ったが、ほんのり2人とも顔を赤らめているな。
自分がこの状況になるのを想像するMなのか、泣き叫ぶ彼女たちを見て喜ぶSなのかは分からないが、変態の才能がありそうだ。
さて、ではなぜ今触手に見せられないような状態にされている奴隷がいるのか説明しておこう。
簡単に言えば、それは、
「あいつら分かるの早すぎないか?」
3人の奴隷が、国や公爵の手先だったからである。
今は誰の手先なのかを特殊生物である触手君に手伝ってもらいながら聞き出している最中だ。ちなみに触手君はとある星で危険生物として滅ぼされそうになったのを1体だけ助けて手なずけた存在だ。向こうが話すことはできないが、字は書ける上にこちらの言葉が分かるので意思の疎通はできるという優れた生命体である。
「んでもって、こういうのに非常に便利、と」
こういうのというものの詳しい話はしない。が、触手なんて言うものが出てきた時点で予想はつくだろう?つまりそういうことなのだよ。
触手君にかかれば圧倒的な快楽により諜報員達の口を割らせることなんて朝飯前(触手君が食べるものは植物から出る特殊な気体であり朝とか昼とか関係なく1日中摂取し続けている)だ。
「で、出てきた情報は、と」
俺は送られてくる情報も映像の隣に並べて読む。
彼女たちが快楽による拷問を受ける中、触手君以外にも働いてくれる存在がいるのだ。それが、俺が自作したAIである『シグマ』。格好よさげに書くなら『Σ』だな。
本来AIを作成することはこの世界だと禁忌とされているのだが、こっそり作ったから問題ないだろう(たぶん)。
で、そんなシグマの活躍により(触手君の活躍の方が圧倒的に大きいけど)3人の口からはボロボロと情報が出てくる。
自分がどこの手先なのかとか、何が目的で奴隷になったのかとか。
そういったことをまとめると、
「やはり、派閥争いの影響が大きいな」
派閥争い。
というか、例の王子とその取り巻きと、セシルの実家の争いだ。元々王子が優勢だったみたいだが、誰かさんの実績がどうこう、とだだをこねたらあっさり王子より優秀と言うことになって中立派が増加しているのが現状だ。
今の中立派の数を考えるとあの王子が王になったとしても、あまり主導権を握ることはできないだろうな。なぜ自分の指示に従わないのかと怒鳴ってキレ散らかしている姿が目に浮かぶ。
「……それでも、スパイをお互い入れ合ったりはするか」
どれだけ王子にカリスマがなくても、その実力や取り巻き達の力には関係がない。ある程度腕の立つスパイや暗殺者を公爵側に入り込ませたりすることもしていたようだ。
……もちろん、公爵も同じように自分の手駒を潜り込ませているようではあるが。
そうしてお互い入れたスパイが2人ほど触手に捕らえられた中にいる。
……ん?2人じゃなくて3人じゃないかって?
ちっちっちっ(キメ顔)
間違ってないんだな。これが。
じつは王宮から売られた奴隷の中の1人は、王宮側の手のものらしいんだ。王宮側は自分の手の物を奴隷にしたわけだな。
なんで?と疑問に思うだろうが、これには当然理由がある。
それは、奴隷の買い取り先を調べたかったから、だ。
「誰がスパイを買うのかって言うのは気になるのも当然か……」
色んな人間が俺の持っている奴隷を買おうとしていたらしい。
だが、ことごとく予約している人がいると伝えられて断られたせいでそれが誰なのか色んなやつが気になったそうだ。そこで1人場所を特定するために売られた結果、今こうなっているらしい。
こうなっているって言うのは、触手に絡みつかれているって意味だ。
「俺だって向こうにバレているだろうか……」
懸念するところはそこだ。
俺が奴隷を購入したことがバレたかどうか。
誰かしらタチバナ奴隷商会の中にスパイが紛れ込んでいてもおかしくはないし、俺が5人を買ったことがバレた可能性もある。……まあ、そういう風にバレないようにミミも裏口を使うことを許してくれたりしているのだが、バレるときはバレる。
「……対応を考えておかないとな」
宇宙生物で触手を最初に思いつく作者って……




