14.骨のある敵を求めますが何か?
隠し通路を通り抜けて。
「ぜ、絶対違法建築ですよね!?」
「あの隠し通路もそうですし、ここも明らかに違法では!?」
「そんな訳がないだろう。あそこは知り合いの土地で、許可もちゃんと取ってある。勿論ここもな」
隠し通路が違法だと言われたが、ちゃんと許可は取ってあるのだ。……持ち主の許可を取っただけで、建築関係の書類を提出したかどうかと言うのは話が別だが。
で、そんなグレー(ホワイトな要素は1つもないから確実にブラック)な通路の先には、またまた5人を驚かせるものが。
それが、
「何ですか!?このいかにも個人用みたいになっているドックは!」
「何ですかって、今言ったものそのままだが?俺と数人の知り合いのためのドックだ」
ドック。犬ではなく宇宙港だ。
2隻分の船が止まれる場所があり、1つは空いていてもう1つに宇宙船が入っている。今そこにある船は俺の所有している船だ。
「それじゃあ、そこの船に乗れ」
「「「「は、はい……」」」」
明らかに嫌そうだが、奴隷なので逆らうこともできずに宇宙船へ入っていく。そしてそのまま座っていられるスペースに誘導。
「そこに食料は入っているし、そこにお手洗いもある。好きに使え」
俺はそれだけ告げて、部屋に5人を残したまま移動した。1人で目指す先は、コックピット。
ここから俺がこの宇宙船を操縦するのだ。
この宇宙船は市販の戦闘用の船。普段使っている軍用の大型船とは違い、非常に小型で軽量。性能としては機動力で軍用の通常の小型船に勝てるが、防御力や攻撃力といった点で見ると非常に目劣りする機体だ。
……が、
「そこは武器で補えば良い」
この船、元々ついていた武装は取り外され、知り合いの手により魔改造が行なわれている。そのため、防御力は相変わらずペラッペラだが機動力がある上に攻撃力も高いという素晴らしい船となっているのだ。
「それでは、発進!」
船の操作は全て俺が行なう。移動も攻撃も他の船との通信も、全て自分でやる。
作業量は多いが、普段口で人を動かす暮らししかできてない俺としては良い腕ならしになる。これでも学校に通って鍛えた能力はあるんだから、この腕をさび付かせてももったいない。
一応シミュレーションの機会もあるのだが、それと本物の船を動かすのではかなり操作感が違う。だからこそ、こうして休暇になってはこういった場所に来て船を動かしているのだ。
「……ん」
暫く船を動かしていると、チィリリリというような少し高めの警告音が鳴る。どうやら近くに所属不明の船がいるらしい。
あやしい。おそらく宙賊(宇宙で戦闘艦を乗り回して民間船などを襲う賊)だろうな。
警戒しつつ近寄ってみれば、案の定、
『ひゃっはぁぁ!!!命が惜しくば大人しく出てこい!全部俺たちに差し出せば命だけは助けてやんよ!』
向こうの船からそんな野蛮な内容の連絡が入ってくる。
俺も人のことは言えないが、型落ちの船に乗っているな。数は5隻。
1隻を囲うには多い気がするが、元々俺のような1隻だけで動いているやつではなく複数で行動している奴らを狙うのが主なのだろう。
こうして宙賊らしき者に出会った場合は幾つかやることがある。
まずは、敵の船をスキャンすることだ。ここで違法船としての情報があれば宙賊と断定できる。……が、この場合向こうがすでに通信で脅しをしてきているからそれをする必要は。というか、こちらがスキャンされているくらいだ。
……おそらくこちらの積み荷なんかを探ってるんだろうが、煩わしいな。
「邪魔だ」
ということで面倒だし、掃除をしようと思う。
まずは照準をセット。この照準があうかどうかに関しても自分が狙われていると警告音が鳴るようになっているので、向こうもこちらが攻撃しようとしているのが分かるだろう。
『あぁ?そっちがそのつもりならやってやるよ!』
向こうから苛立った様子で通信が入ってくる。俺はそれを無視して……発射!
『え?おい!?』
『ちょっと待て!この船の武装は!?』
『う、うわあアアアァァァァ!!!????』
敵の慌てたような声。そして、悲鳴が響く。
直後、俺の船から発射されたミサイルによって1隻の船が破壊された。
ミサイルは実弾でレーザーなどでもあっさりと破壊されてしまうのだが、当たると強い。俺の船に搭載されているミサイルはシールドを貫通してそのまま装甲にぶちかませるタイプなので、当たってしまえばほぼ勝ち確と言って良い。
『う、嘘だろ!?』
『おい!気をつけろ!2射目が来るぞ!』
敵はすでにミサイルによって破壊されてしまった味方で混乱し、こちらに攻撃することを忘れてしまっている。……三流だな。
ここで瞬時にミサイルに対応して反撃してくるくらい骨のあるやつじゃないと腕ならしにもならないんだが。
……できないなら仕方がない。ザコはさっさと片付けるとしよう。
『『『『う、うわあああああぁぁぁぁぁ!!!!?????』』』』




