13.数日移動ですけど何か?
「用意できたみたいだね」
「おっ。そうなのか。それじゃあ、受け取らせてもらうぜ」
「はいはい。どうぞぉ」
5人の用意も終わった。
技術が発達し文明の進んだこのSF世界であっても、奴隷は首輪の着用が基本だ。どこまで発展しても結局は首輪なんだなって思うところ。
本来は何かしらの問題があると小規模な爆発を起こすチップで行動を制限するとかでも良いと思うんだが、昔それをやった国と戦争している国がチップを爆発させる方法を見つけたことによって全ての国がチップを使わなくなった。
新しい技術が出てくれば、それを悪用する奴らも出ていると言うことだ。
ただ、首輪に帰ってくる必要はなかったと思うんだよな。
しかも、首輪のくせにムダに見た目はSFちっくだし。しかも、奴隷の持ち主が使うと首輪と腕輪で繋がったリードの線が現われる機能とかあるし。本当にこれは首輪じゃなくて良いだろと思う限りだ。
と、考えるのもここまでにしておこうか。
「さて。移動するからついてこい」
「「「「はい」」」」
怯えたような声。何の感情も感じない無機質な声。こちらを探っているかのような声。様々なそれぞれの考えのこもっていそうな声が返ってくる。
数人は明らかに何かあると思われるが、それは今は無視だ。
「じゃあ、ミミありがとな。俺は行く」
「はぁ~い。また来てね。ゴトー」
ミミに手を振り、タチバナ奴隷商会を出て行く。
時間があればもうちょっとミミとの交流を楽しみたいところなのだが、残念ながら今回の休暇はそこまで長いわけでもないので目的をさっさと果たすことにする。
俺たちは輸送用の宇宙船に乗り、宇宙船に乗り、宇宙船に乗り、宇宙船に乗り…………
「…………今、何隻目ですか?」
「た、たぶん5隻目くらいだったと思います」
「私たち、どこまで行くんでしょう……」
もう感情を言葉に出そうともせず、買い取った奴隷5人は虚ろな目で窓の外を眺めている。タチバナ奴隷商会では本格的な教育が施されるためもう少し持つかと思ったが、流石にずっと座りっぱなしな上に移動続きだと精神がやられるみたいだな。
景色を楽しむにも限度があるのだろう……というか、宇宙の光景ってあんまり差が分からないしな。好きでもない限り慣れたら楽しいとも思わないだろう。
「うぇぇぇ……死んじゃいますぅぅぅ」
「暇で死にそうなんて、思ったこともありませんでした」
「緊張感があれば別なんでしょうけど……」
それぞれ愚痴をこぼしている。
そんな中俺はふと思いついたかのように、
「……ミミに、何もなくても耐えられるだけの精神力をつけるように言っておいた方が良いかも知れないな。教育内容に追加した方が良いだろう」
「「「「ひぃっ!鬼ぃ!!」」」」
怯えられてしまった。
最初は俺のことを試すように見ていたやつも、何の感情も覚えていなかったやつも。等しく感情をあらわにして怯えている。
なんと精神の生ぬるいやつらだろうか。俺は奴隷達を鼻で笑いつつ、目的地への到着を待つ。
そして数日後。
「……到着だ」
「「「「や、やったぁぁぁ!!!!」」」」
目がガンギマリしていた奴隷達が、喜びをあらわにして跳んだりはねたり抱き合ったり。……百合だろうか?いや、でも女子同士のハグは普通のコミュニケーションとかとも言うからな……。
と、今はどうでも……良くはないが、そんなことを考えているときではない。
「移動する。ついてこい」
「「「「はい」」」」
5人を引き連れて歩いて行く。
そしてたどり着くのは、
「ん?ここは?」
「ご主人様の家、ですか?」
「私たち、ここで働くんですか?」
5人が驚く程度には豪華な家。ただし、無人である。
俺の家と言えば俺の家なのだが、ここで働くのかと言われるとそうではない。
「とりあえず入れ」
「「「「はい」」」」
驚いている5人を内部に押し込み、引き連れていく。外観も中身も汚れてはおらず、日頃から手入れされているのが分かる。
ここ俺が持っている家ではあるんだが、俺が普段使えないから偶に知り合いの宿として使わせてやってるんだよな。代わりに掃除とかをやらせている。
……広い家だしさぞやたいへんだとは思うが、俺がここに泊めるのは能力が高い人間ばかりなので問題無い。
「今はここを眺めているときではない。大人しくついてこい」
「「「「は、はい」」」」
ここで働くと思っているのか、内部を観察していた5人。
だが、それに意味はないので急がせる。ここの間取りを覚えたところで意味はないのだ。
「こっちだ」
俺は1つの大きな扉を開ける。それから色々と細工をして、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「「「「………………え?」」」」
困惑の声。
それもそうだろう。なにせ、どこかの物語宜しく本棚が動いて隠し通路のようなものが現われたのだから。
唖然とした表情で固まる5人を待ったりはせず、
「さぁ。来い。ここを通っていく」
「「「「え、ええええぇぇぇぇぇぇ!!!!????」」」」
部屋に絶叫が響いた。
隠し通路の奥にも響いていく。




