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10.5人買いますけど何か?

俺の目指す先。

そこには、大きな建物がそびえ立っていた。そしてでかでかと、しかし素朴なデザインで、建物には「タチバナ奴隷商会」と書かれている。

いかにも一見さんお断わりのような高級感溢れるその場所に。何かの観光地なのかと勘違いした観光客らしき人が数人集まっているその場所に。俺は一切の迷いを見せることなく足を踏み入れていく。


中に入れば、豪華な受付が。

汚いわけではないがいかにもな服装でない俺を見た受付は勝手に入るなと注意してきそうな雰囲気で顔をしかめるが、


「ゴトー!やっほぉ~!!」


「っ!?」


隣から俺に向けて駆け寄ってくる存在を見て、その目を大きく見開き、言葉を止めた。

そう。なぜならその出てきた存在が、


「おいおい。ミミ。会長職がそんなに無防備に出てきて良いのかよ」


この「タチバナ奴隷商会」という組織の会長だからだ。

つまり、1番のお偉いさんなのである。

だが、そう俺に注意されても会長であるミミ・タチバナは一切気にした様子もなく、


「大丈夫だってぇ。ゴトーがいれば捕まっても宇宙に出ない限り助けてくれるし」


「いやいやいや。その暗殺やら誘拐やらを俺が認知できなければ意味ないだろうが」


「それこそ大丈夫でしょ。わざわざお守りまでゴトーが作って持たせてくれてるんだからさぁ」


そう言って、ミミは首にかけて服の中に隠していた1つのお守りを取り出す。

そのお守りは不格好ながらも強い魔力を放つ一品であり、俺の自作したものでもあった。知り合いのために用意した特別なもので、装備者に何か危害が加えられそうになるとそのお守りの中にある魔力を消費して風の防壁を作り出すようになっている。

鉛の銃弾は勿論、軍用の光線銃(ビームライフル)や携帯式の電磁砲(レールガン)であっても10発くらいまでなら耐えられるだろう。


だから、確かにある程度の安全性は保たれているのかもしれないが、


「だとしてもだ馬鹿。魔力の使えなくなるフィールドを展開されたら俺でも守り切れん」


「そうかもしれないけどさぁ…………仕方ないじゃん。会いたかったんだから」


ミミはそう言ってぷいとそっぽを向く。その顔は、薄らと赤みがかっていた。なんだか甘い雰囲気とラブコメの波動を感じる。

……が、この雰囲気に流されてはいけない。


「何も仕方なくないだろ。もうちょっとちゃんと会長やれ」


「はぁ~い」


不満そうに言うミミ。

人間性としてはかわいげがあるのかもしれないが、会長職としてはかなりアウトな人間だ。……これでも俺が絡まなければそこそこ優秀なんだがな。


「まあ、そこを怒っても時間の無駄だし、ちゃんと反省すればそれで良いんだけど…………じゃあ、新しく入った子のところに連れてってもらって良いか?」


「もっちもっち、もっちろ~ん」


機嫌良さげに頷いたミミは、俺の手を掴んで歩き出す。さりげなく恋人つなぎしてきてるが……まあいつものことだ。気にしたら負けだな。


「で?一応全員購入するつもりだけど、幾らすんの?」


「ん~。購入費用がかなり低くできたから、これくらいかなぁ」


金額を聞かされる。

そんなに安くて良いのかと思うほどの金額だが、ミミが言うなら間違いはない。こいつはこんなんでもかなり優秀だからな。


「人数は?」


「5人だよ」


「ほぉ?思ったより多いな」


「そうなの?」


「ああ。俺は2人いれば良いかくらいに思ってた」


俺の予想だと、人数が増えるのはもっと後。次の休暇の時くらいだと考えていた。その時に50人くらいどっと来るかと思っていたんだが、


「というか、5人でその値段は相当だな」


「でしょぉ?正直最初のジャブみたいにあり得ないくらい低い金額を言ってみたんだけど了承されちゃってさぁ~……ハハハッ」


さて。ここまで何人とかいくらとか話をしているが、これから俺が購入するものについて話をしておこう。

とは言っても、この商会の名前と今までの会話で予想がついてるかもしれないけどな。俺が買おうと思っているのは、


「奴隷が、しかも借金奴隷が5人もいてその金額は信じられないな。勿論買うけど」


「うん。毎度ありなんだけどさ、安いよね。それこそ犯罪奴隷の方が高いよ」


そう。奴隷だ。

「タチバナ奴隷商会」なんて名前の商会なんだから、商品が奴隷で無いはずがないよな。……とは言っても。名前がアレなだけでここでは奴隷以外のものも一応買えはするぞ。

奴隷に与えるための品質の低い服飾品とか……と、ここが普通の奴隷商会なら考えるかもしれないが、そうではない。ここで品質の低いものは買えないんだよな。


理由をここで解説しても良いのだが、


「はい。ついたよ。買う約束はしてくれてるけど、一応見ていってね」


「ああ。分かってる」


購入予定の奴隷の下までたどり着いたから、その話は後にしよう。

ここからは、じっくり購入予定の奴隷達を観察しよう。


「やぁ。初めましてだな。俺の名前はゴトー・アナベル。お前達を購入予定の者だ」


「「「「…………」」」」


5人の視線が一斉に俺に向く。

そして、なめ回すように観察される。……俺が向こうを観察するんじゃなくて、俺が観察される側って言うのも変な気分だ。俺、購入予定者なんだけどな。

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