7.遠隔操作ですけど何か?
ダリヤの操作する戦闘機体は、あっけなく破壊された。
「「「「あぁ~」」」」
俺の周りの奴らも、残念そうな顔をしている。
……だが、それだけだ。悲しんだり、慌てふためいたり、叫んだりはしない。皆、ただただ残念そうにするだけだった。
そして、慌てないのはまだ要塞の周りで活動している戦闘機体も同じ。破壊された戦闘機体には見向きもせず、ただひたすらシールドを突破しようと攻撃を続けている。
それもそうだろう。
なぜなら、破壊されたといっても結局はダリヤの操る機体の1つでしかないのだから。
「……破壊はされましたが、落ち着いて作業できているのは凄いですわね」
「あ、あんなにいっぱい動かすなんて凄いです!」
セシルは実力を認めるように笑い、フィネークはキラキラとした瞳で映像を眺める。
さて、この様子から分かるかもしれないが、破壊された戦闘機体には、ダリヤは乗っていない。というか、どの戦闘機体にもダリヤは乗っていないのだ。
「1人であの数をあれだけ動かすなんて言うのは私でも無理ですわ」
「そうなんですね!セシル様も凄いけど、ダリヤ様も凄いのかぁ……私も頑張らないとっ!」
フィネークが拳を握りしめ、ふんすっ!と気合いを入れている。が、正直主砲を強化するだけでかなり役に立っているので、頑張るところはドジっ娘属性を消すくらいだと思うのだが……一生かかっても治らない可能性の方が高いだろうな。
「あっ!?」
「…………」
今も何もないところで、しかも移動すらせず立っているだけなのにバランスを崩して転びそうになっていた。俺が支えに行ってなかったら確実に何かしらの機械を壊していただろうな。
「……す、すみません」
「以後気をつけるように」
「はい……」
肩を落とすが、このようなやりとりもいつものことである。やはりドジっ娘属性をなくすのは無理だろうなと感じる。
おっと、フィネークの方に話がそれてしまった。
今は、ダリヤの話をしなければな。
ダリヤは、1人でいくつもの機体を操っている。
それは何かの能力だとか言うわけではなく、純粋に彼女の持ちうる才能の力で、だ。
しかも、戦闘機体に乗ることもなく操作している。
まず遠隔操作ってなんやねん。そんなん1度も出てこんかったやん(なぜかエセ関西弁)と、思う人がいるかもしれない。
が、それもそうなのだ。
普通、遠隔操作なんてしない。
普通はしないといっても何か規制があるというわけではないのだが、当然あまり行なわれないのには理由がある。それは、単純でありながらも難しいこと。
そう。操作が難しいのだぁ!
……俺もやったことあるが、1つ動かすだけでも相当難しい。普通は戦闘機体のコックピットに入って感覚を共有するようなデバイスをつけて動かす。そうすることで、まるで自分の体を動かすかのように戦闘機体を使えるわけだ。
だが、遠隔操作は違う。そんなに簡単にはいかない。
操作が自分の体を動かすようなものから、コントローラーで動かすような物に変わるのだ。実際、ダリヤが今使っているだろう入力装置もほぼコントローラーだ。
人間は、自分の体をコントローラにつないだとして上手く動かせるだろうか?いや、たいていは無理だろう。
それこそ何年何十年という月日をかけてやっと自分の体のように使えるようになると思う。
……では、そんな操作方法で戦闘機体を動かしたいと思うか?危険ではあるが、自分が乗るだけで自分の体と同じように動かせるのに?
普通はそんな何十年もかけて、遠隔操作を会得したいとは思わないだろう。それにたとえ会得した人物がいたとしても、軍や企業では雇ってくれない。何せ、遠隔操作で自分の体のように操れるようになっているとしても、それ以上に操作が上手い人間はいくらでもいるのだから。
というか、同じ年数通常の兵士を鍛えれば一級品ができあがるのだから。
それなのに、十数年の努力をしていないはずなのにダリヤは三流程度の仕事をする程度に戦闘機体を動かせている。
しかも、そのレベルを複数だ。
「才能だなぁ」
「遠隔で操作してここまでできるの初めて見た」
「連携上手いな。1人で操ってるから当たり前なのかもしれないけど」
部下達も驚いている。
そして、1人が言っているように目を引くのはその連携だ。複数機体を動かすだけでなく、しっかりとその機体達に連携を行なわせている。
このレベルのことができるのだから、ダリヤはまさしく天才というやつだろうな。親友ポジションが乙女ゲームでは絶対に使えないであろう才能を隠し持っているとは、なんとも皮肉な話だ。
「中佐。これからはダリヤにも遠隔操作で戦場に出てもらいますの?」
連携し、数機は落とされつつも敵のシールドを着実に削っていくダリヤの操る戦闘機体を見ながら、セシルはダリヤの戦場での活動について尋ねてきた。
俺はYESともNOとも言わず、
「殿下がそう望まれるのであればその通りに致します」
「……ふふっ。なんともそれらしい返答ですわね」




