5.逃げたら許されませんが何か?
「中佐!おそらく機雷だと思われる反応がいくつか確認されます。このまま直進しますか?」
部下の1人がそんなことを言ってきた。
後ろから俺が追いかけてきていると分かって、慌てて機雷を放出したんだろうな。適当に置かれている。
「直進で構わない。ただし、主砲の使用頻度を上げ、進行方向に副砲なども定期的に放つように!」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
機雷があるなら破壊すれば良いという考えの下、いくつもレーザーを発射しながら進んでいく。敵も数はいたから、機雷も数だけは豊富だ。ただ、爆発すると連鎖的に爆発していってほとんど意味がない物と化したのはひどいという感想以外出てこなかったが。
そう思って機雷への警戒度を下げた瞬間だった。
「っ!?エネルギー反応あり!敵からの攻撃です!」
「「「「っ!?」」」」
俺たちは驚愕する。まさか、敵から攻撃を受けるとは思わなかった。
確かにかなり距離を詰めてきたから船によってはこの船を射程に収めることはできているだろう。が、だからといって攻撃してくるのは想定外だ。
……あっ。もしかしたら、まだ距離があるからと俺たちがシールドの出力を下げているとでも考えたのだろうか?これだけ機雷を仕掛けておいてそれはないだろうと言いたいが。
「狙いは悪くないのかもしれませんが……」
セシルがそう言って苦笑を浮かべている。
俺たちが機雷を大量に破壊して油断していたというのは確かだし、驚かされたのも確かだからな。
「それでも攻撃するならもう少し距離を詰めてからでも良いと思うのですが」
ダリヤはそう言って不思議そうにしている。
確かに倒すことを考えるとそうなのだが、
「え、ええと。たぶん近づけさせるのが嫌なんだと思います!」
俺が答える前に、フィネークが答えた。
しかも、言ってることはかなり正しいな。フィネークも勉強しているようだ。
「近づけさせるのが嫌、ですか?」
「は、はい!私たちの船の主砲が小型艦を1発で破壊できるのは伝わってると思いますし……」
「あぁ。なるほど。もしものことがあると困る、というわけですか」
「そうです!」
セシルの言葉にフィネークが大きく頷く。
そして、チラチラと俺に視線を送ってきた。おそらく、間違えてないかどうか確認がしたいのだろう。俺はフィネークの意見を肯定するように無言で小さく頷いておく。
安心したのか、俺の頷きを見てフィネークはぱっと顔を輝かせた。
「もう暫くすると接敵します、それぞれ備えて下さい」
納得したり喜んだりしている2人に対して、それとなく部下から注意が飛ぶ。
訓練生のためフィネークには厳しい言葉をかけられるが、ダリヤの方は王女だからな。俺の部下みたいな低い身分の人間が注意できるわけがない。
勿論それはダリヤも分かっており、大人しく口を塞いだ。
そのタイミングを見計らって、
「主砲用意」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
主砲を打つ準備をさせておく。さっきまでは機雷を警戒して何度も主砲を撃っていたが、今は一旦敵の後を追うコースからは外れたので一時的に撃つのを止めていた。
だが、今から多くの敵の射程に入っていくことになる。ある程度距離が詰められた段階で、シールドの弱い小型艦から狙って攻撃していくつもりだ。味方から送られてくる敵の船の情報を参考にしながら狙いを定め、
「3秒後、射線にターゲットが入ります!」
「発射用意!」
大きめの岩の横を通り抜けながら、その抜けた先で射線に入る小型艦を狙う。
3秒はゆっくりと経過していき、
「撃て!」
俺の指示と共に、主砲から光が放たれる。まっすぐと伸びた主砲のレーザーは少しのズレもなく小型艦へと命中し、
「命中!小型艦、大破しました!」
小規模の爆発を起こして宇宙の塵となった。こうして敵の集団の中の1隻を潰せたわけだ。
だが、ここで喜んではいられない。敵はまだまだいて、
「エネルギー反応多数!敵艦の攻撃が来ます!」
「下にそれつつ突っ切れ!」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
俺たちの船の上の方をあまたのレーザーが通過していった。一部の副砲から放たれたと思われる細いレーザーは船に当たってしまっているな。
「シールドの減衰率、30%です!」
通常なら副砲でもあれだけの本数くらえば半分近くシールドは落ちるのだが、30%で済んだのはかなり良い結果だ。セシルが闇の魔力で強化をしてくれているからだろう。
「反撃だ。30,20,15の地点へ主砲を撃て。副砲は小型艦を集中的に狙うように!」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
副砲から細いレーザーが伸びて、要塞を囲う中の1つの小型艦に当たる。小型艦からは相当な焦りが見て取れて、少し危険な操縦になっているな。
そんな中俺たちの主砲が光り、
「っ!敵小型艦、集団から離脱!即座に敵本体に撃墜されました!」
俺たちの主砲が自分たちに来ると考え、小型艦は逃げようとした。
だが、そんな小型艦は逃げることを許さなかった要塞によって一瞬で破壊された。
……今のは相当な衝撃だろうな。逃げようとしたとは言え、味方を撃つなんて言うのはかなりのマイナスポイントだぞ。味方を恐怖で動かすことはできるかもしれないが、信頼は得られないだろう。




