2.隊長と合流しますけど何か?
俺たちが包囲を抜けた間にも戦況は変化しており、
「通信が来ました!敵要塞はルートDを使用したようです!」
俺たち以外。つまり、小型艦や追い立てに使わなかったもう1隻の中型艦などの方から通信が送られてくる。
目的の人物が乗っていると思われる要塞が通ったルートDは、最善ではないが最悪でもないルート。今の俺たちなら十分対応が可能なルートだ。
「敵とは圧倒的な数の差がありますが、上手く機雷にかかったため要塞の機動力が大幅に低下しており現在は時間稼ぎと周囲の小型艦の撃沈を行なっているとのことです」
「ふむ。……ならば、俺たちは計画通り2手に別れる。そして隊長を回収後合流だ」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
中型艦と俺たちで分かれて行動する。俺たちはセシルを回収し、中型艦には追って来るであろう奴らの機雷への誘導を任せる。
俺たちの方が追ってくる船は多いだろうが、セシルとの合流の時にセシルが色々とやってくれるだろう。
「隊長との合流予定地点を表示します」
空中にホログラムが映し出され、周囲の宙域の様子が示される。そして、その中の1点、セシルとの合流予定地点が赤く光っている。
「合流予定は6分後です」
合流予定時刻が計算された。5分以上かかるのは予想外だな。計画を立てたときには3分で行けるのではないかなんて言う話をしていたのだが。
……俺たちが何かミスをしたというわけでもないし、何かあったとすれば、
「隊長に何があった?」
「敵艦の姿勢制御装置の場所がわかり、破壊してまわっていたら時間が掛かってしまったとのことです」
「そうか。……隊長に負傷がないのであれば問題無い」
色々文句は言いたいが、この場で言っても仕方がないだろう。というか、文句を言うのは俺という頼れる副官のキャラに似合わない。
……しかし、姿勢制御装置を破壊していて時間を食ったというのがセシルらしいと言えるかもな。姿勢制御装置はその名の通り船の姿勢を安定させる装置で、回転が掛かって敵に照準が合わないなんてことが無いようにと言うことでつけられている。これを破壊した程度で船に致命的なダメージが入ると言うことはないのだが、まっすぐ飛べなくて俺たちに向かってくるのは難しいだろう。
それこそ、姿勢制御装置なしでの操縦訓練なんて物をしてなければ無理だな。
「迂回ルートを通って合流地点へ向かいます」
当然、当初の計画していたルートを通って合流地点へ向かえば、俺たちの方が先についてしまって俺たちを追ってきている敵艦に追いつかれてしまう。
それを避けるために俺たちは迂回ルートを多用。大型艦1隻が通るのに少し余裕がある程度の場所を抜けて、敵の足止めをしながら逃げていく。
小型艦とかは余裕で通れる隙間だが、集団で追いかけてきているときには少し問題が出てくるような場所だ。しかもついでに向こうの小型艦が出てくるところを出待ちして主砲で堕としたりもしたから、敵の多くが足踏みすることになる。
その間に俺たちは機雷をセットしたりしながらまた反転して逃げていく。
「敵小型艦3隻、及び中型艦1隻の反応が消滅しました」
「ふむ。……焼け石に水程度か」
敵の船の多さに比べれば、沈んだ戦闘艦の数などないに等しいと言っても良いレベルだ。どちらかと言えば、今回は沈んだ数よりもどれだけ引き離せたかの方を重視した方が良いだろう。
「30秒後、隊長と合流します」
敵の被害報告の後。すぐそこまで合流時刻が迫っていることが告げられている。レーダーに反応があるセシルの機体の速さと距離から考えれば、予定時刻には間に合いそうだ。
「ハッチの準備は?」
「すでにできております」
「では、隊長と合流次第反転、追っ手とすれ違いつつ主砲をたたき込み、味方の援護へ向かう」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
口では簡単に言っているが、この作業はそんな簡単なモノでは無い。敵とすれ違うなんて、下手なことをすれば敵の集中砲火を受けて爆散するだけだ。そこで敵の攻撃は避けつつこちら主砲をぶち当てるなんて言うのは、至難の業。
……なのだが、
「隊長機体、ハッチへ入りました!いつでも移動可能です!」
「では、移動開始だ」
「「「「イェッ、サー!!」」」」
俺たちは作戦を実行させるため、動き出す。
難易度は高いが、この程度で止まっているわけにはいかない。確実に成し遂げて見せよう。
……と、俺が意気込んでいると、
「……戻りましたわ。回収ありがとうございます」
セシルが入ってきて、帰還の言葉と礼が述べられた。
「お疲れ様です。作戦は今のところ順調に進んでおります」
俺は簡単にそう返事をする。
その間に、セシルは護衛から計画の今の状況に関する資料を受け取っていた。
セシルとしてはそれをじっくり読みたいだろうが、
「では、シールドの方の強化を願いします」
「あっ。分かりましたわ」
セシルには闇属性の魔力を使ってシールドの強化をしてもらう必要がある。
セシルは資料を片手に装置の元へといそいそと向かっていった。