エピローグ パレードですけど何か?
何やかんやあってダリヤとセシルの護衛や側仕えが減ることになり、俺は喜びを噛みしめた。それはもう、フィネークがトレーニングルームで倒れていてもいっさい負の感情が湧かない程度には喜んだ。
これも全てダリヤの行動のお陰だ。ダリヤ様バンザイ!邪魔で仲良くできないとか思ってたけど、目茶苦茶優秀で好感持てるな。うん(掌くるくる
あの小うるさい奴らが減るって言うんだから、俺としては万々歳。これでこの船の中の雰囲気も更に良くなるだろう。
そんなことを思う中、護衛たちが乗る大型艦の建造も終わりが見えてきたため、
「どこへ向かいますか?」
「……どこが良いでしょうか」
「私もどこが良いかは分かりませんわ」
俺、セシル、ダリヤの3人で集まり、次に向かう場所について話し合っていた。本来艦隊は軍の本部からの指示を受けて動くものだが、ある程度自由行動が許されている。今はダリヤが乗っているからな。本部はダリヤの行きたいところに行ってくれというスタンスみたいだ。
というか、どこか何もせずに本国でじっとしていて欲しいみたいな雰囲気が感じられる。怪我とかさせたら大問題だし、大人しくしていた方が本部としても楽なのかもな。
俺がそんな風に本部のことを考えている間に、セシルが何か思い出したようで、
「あっ。そういえば、大尉、ではなかった、中佐に惑星降下作戦で協力して欲しいという話が来ていましたわね」
「はい。そのように求められておりますが、小官個人への要請ですので隊長が実績を積むのにはあまり適していないかと」
前の戦場の話だな。基地を制圧したから次は居住惑星の制圧をするという話だ。
地上の制圧であれば俺は大活躍できるのだが、セシルにとってはあまり得るものが無いことだろう。艦隊のモニターで様子を見ることくらいしかできないと思われる。
だが、予想外なことにセシルは、
「構いませんわ。とりあえず最初はダリヤ様に戦場の様子をご覧になって頂きたいんですの。惑星降下なら遠くから惑星付近での戦いを見ることもできるでしょうし、惑星降下後の映像は中佐からの映像で見れますので、とても勉強になると思いますわ」
ということで、惑星付近での大勢の戦いや惑星降下の詳しいことが勉強できるので構わないとのことだった。
それに、セシルが言うようにまずはダリヤを戦場の空気に慣れさせる必要もあるからな。
「私も一度戦闘の様子を見学することを希望します」
ダリヤとしてもそれがお望みらしい。ならば、それで良いな。
ということで予定としては、少し前までいた戦場に戻り惑星降下。そこでダリヤの戦場見学を終わらせた後に、また次に行く戦場を、決めるということで良いだろう。
見学するだけでも戦場に行ったと言うことにはできるし、箔が付くからな。
「ではそのようにいたします。他に何かご希望や、事前に行なっておきたいことなどはありますでしょうか?」
「特に私はありませんわ」
「私も特に……あっ。1つよろしいでしょうか?」
ダリヤには何かあるらしい。セシルと2人で聞いてみる。
内容を聞いて俺は頭が痛くなったものの、その希望は実現された。王と一部の側近が無理矢理押し通したらしい。
希望の内容は何かというと、
「姫様バンザイ!」
「「「「バンザイ!!」」」」
俺たちの方、というかダリヤを見ながら手を挙げる市民たち。市民たちは王都のある星だけで無く、その周辺の宙域にまで船を出して集まっている。宇宙船に乗る人間の中には、わざわざ宇宙服を着て船外に出てバンザイしてるやつまでいる。
流石に船が密集してて危ないから、警備の軍人に船内へ戻るよう注意されてるけどな。
「お、王族って凄いんですね」
「やはり公爵家とも格が違いますわ……」
普段ダリヤと仲良く話をしている2人も、このときは圧倒されていた。
だが、それもそうだろう。市民たちに見守られる中、戦闘艦に乗って優雅にパレードを行なうなんて初めてなんだから。
そう。パレードだ。
現在、王族であるダリヤが戦場へ出るということで大規模なパレードが行なわれているのだ。それこそ、どこぞの王子君がかすむくらいには大規模で、ダリヤの名が売れるパレードが。
当のダリヤはと言えば、
「ありがとうございます。いってきます」
普段の無表情に近い落ち着いた表情とは違って、貼り付けたような微笑みを浮かべている。まさしく外行きの顔って感じの顔だ。
そこでも普段との違いに仲の良い2人が気圧されている感じがあるな。
……しかし、ダリヤも面倒なことをしてくれる。王子はダリヤが次の王の候補とならないようにしたかったのに、ここまで目立つと市民も期待してしまうぞ。
ダリヤが王位継承戦に積極的なんじゃないか、って。
ダリヤの真意は分からないが、王子が怒り狂っているのは確実だろう。
自分よりダリヤが注目されて期待されるなんて何事だ!ってな。きっと俺にも何かしらの命令やらが送られてくると思われる。実に面倒な話だ。
もうちょっとダリヤが自重してくれたら楽だったんだけどな。
せいぜい殺す必要があるほど俺の邪魔にならないことを祈ろう。
……まあ、こんなこともあって市民からの期待も大きく受けつつ、俺たちの艦隊は宇宙に飛び立った。様々な思惑が絡む中、壊れたシナリオはどう収束していくのか。
それは俺でも、こんな未来で生まれたムダに高性能のAIであっても分からない。
1章終了です。ここまでお付き合い頂きありがとうございました!!
2章はあまり触れてこなかった逸脱者が本格的に関わってきます!
……更新は
捨てられ負けヒロインを拾いました
の3章を更新して新しいものを1つ書いてからになるので、2ヶ月後くらいになりそうです。




