35.新しい厄介事ですけど何か?
防衛が終わった後は本国に戻り、なんか色々あった。正直面倒くさいからセシルだけ置いて俺たちは次の任務に行きたいという気持ちも無くはなかったが、本国に戻ったら艦隊の船全てが整備されることになったからダメだった。
何が面倒くさかったかと言えば、
「ふざけるな!お前の計画の所為で名声に傷が付いたじゃ無いか!!」
俺の目の前で唾を飛ばしてる汚ねぇ王子様とかだ。幾ら顔が良くても唾飛ばすしヒステリックだし、あんまりモテないんじゃ無いか?
なんて適当なことを考えてストレスを抑えながら、
「小官は事前にこの事についても説明し、詳しい内容の文書を王子宛に送っているはずですが」
「そんなモノ見てない!!」
「でしたら、殿下に送られるメッセージを管理するものに問題があるのでは?10回以上警告のメッセージを送っているはずですので」
「……やつか。分かった。すぐにあいつは処刑する!!」
おっとぉ。責任は俺から連絡を受け取っていたやつが負うことになったようだ。可哀想に。
知りもしない死にゆく人間に内心同情しつつ、俺は王子の無能さを改めて思い知ることになった。
一応これでも口頭の説明もしてるからな。それを忘れて、連絡を受け取ったことを報告していないやつが悪いなんて言い出すこいつは相当に無能だ。
「しかし、問題はこれからですね」
俺は呆れながらも、話題を次に持って行く。
「これから?」
「ええ。今回の計画は公爵家も警戒しているでしょうし、暫く使うことは困難だと思われます。ですから、次の計画を立てる必要があるかと」
「それはそうだが……お前の船の中では何かできないのか?」
王子はそんな質問を。同じ船の中なら何かできるのでは無いかと考えているようだが、
「無理ですね」
「なぜだ?」
「公爵家から送られてきた護衛が多すぎます。この間は戦闘機体に乗るときにも周りは護衛で固めていましたし……」
戦闘機体で出ているときすら隙が無いということを暗に伝えておく。王子が理解できなくても側近連中は理解できるからな。
その側近連中はセシル以外に懸念していることがあるようで、
「今回の件で、王位継承戦に影響が出る恐れがあります。一部派閥は第6王女殿下などを王位になどと考えるところもあるようで」
「第6王女?……あぁ。やつか」
側近が王子に告げた内容によると、どうやら王子以外の人間を王にしようとする動きが出てきたらしい。今までこれでも王子は大きな問題を起こしてこなかったから、対立する候補を出す動きは無かったんだ。
だが、婚約破棄と今回の替え玉の所為で隙が生まれ、対立できるかもしれないという考えを持つ者が現れ始めたわけだ。
王子は話を聞いて少し考えた後、俺を見る。
……なんだか嫌な予感がするな。
「大尉」
「はい」
なんだ?やめろよ?厄介事を押しつけてくるなよ?
「お前に」
「はい」
本当に頼むぞ。無能も流石にそこまでひどい事はしないだろ?やめろよ?
「お前に我が妹である、第6王女ダリヤを同行させることを許可しよう」
やめろおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!
このクソ王子!俺に特大の厄介事を押しつけてきやがった!!王族を軍艦に乗せるとか正気じゃ無いぞ!!
……なんて色々思うことはあるが、言いたい文句は沢山あるが、
「はっ。かしこまりました」
俺は頷くことしかできない。
こうして俺は、船に第6王女という新たなる同行者をつけることになるのだった。
ちょっとこれは予想外だ。頭が痛いぞ。
そして、王子から厄介事押しつけられることが確定した数日後、
「……ということにより、我が娘であるダリヤを大尉の艦隊に配属する」
「はっ。承りました!!」
王直々に娘を頼まれてしまった。しかも、なぜか隊長のセシルじゃ無くて副隊長である俺に。
この王に関しては、どういう立位置なのかは正直分かってないんだよな。確実に王子を推しているわけでもないのだが、王子を表立って叱責したりはしていない。俺にとっては掴みにくい存在だ。
王が王子を推していないと判断した理由は、王の母方の実家(父方は勿論王族)が王子を支援していないからだ。王はそっちの家とも仲が良いようだし、王子を支援するなら実家の支援があると思うんだよな。
王として公平な立場でいたいのか、それとも何か別の所を見ているのか。俺には分からないが、せいぜい世話をするダリヤを上手く使うとしよう。
で、そのダリヤを使うために。
「何か必要なものがあるのならば申してみよ」
「はっ。では、質問がございます。姫殿下に護衛は付くのでしょうか」
「ふむ。護衛か……そうだな。護衛が50人。それに側仕えを100人つけよう」
ふざけるな!
俺はそういうのを必死にこらえる。だが、俺の怒りも分かって欲しい。流石に合計150人は無いと思うんだ。船の容量オーバーだぞ。
この王、船のこととか理解してないんじゃ無いか?周りの人間もそのくらい進言していて良いはずだというのに。もしかしなくとも、この王は息子と同じく愚か者か?




