31.一緒にトレーニングですけど何か?
「ふ、副隊長!無理です!もう無理です!」
「限界を感じたところからの方が筋肉が付きやすい。あと10回頑張るように」
「ふぇぇぇ!!!!スパルタです副隊長ぉぉぉ!!!!」
結局、俺はフィネークとトレーニングを。2人でひたすら体を鍛えているぞ。
未来には更に多種多様な器具が存在するのだが、それを使ってAIに指導してもらいながら運動する。自分の体をカメラに写しつつ、そのカメラの映像を解析したAIが指摘してくれるのだ。
因みに指摘するAIの体や声はこちらから指定することができる。使用するときに好きなキャラから応援してもらえればやる気が出るというやつだな。
……ただ、なぜかフィネークは俺を設定したようだが。AIが操っている自分を横から見るのは非常に何か気まずいものがある。しかも、フィネークに鬼畜とか言われてるし。
一応言っておくが、それは本人じゃないからな?本人は隣で同じように、
「さぁ!まだまだやるぞ!!」
「イェッ、サー!!」
「気合いだ!気合い!!」
「イェッ、サー!!」
軍服のお姉さんから厳しく指導を受けているぞ。因みにこの人は俺の知り合いで、俺が訓練生だった頃に教官をしていた人だ。
今では誰かさんが拷問の訓練をしているのを見ていた自分まで変な性癖が目覚めてしまった、とのことで俺の船に乗ってるぞ。新人の指導や作業の監督などをやってもらっている。フィネークの指導もかなりやってくれているが……最近頭を抱えていることが多いな。つまり、そういうことなのだろう。
「ほ、本物の副隊長の、格が、違います……」
隣で倒れて立ち上がることすら困難になったフィネークが、そんなことを呟いていた。倒れた状態で俺を見ていると、歩けなくなっても匍匐前進で俺の命を奪おうとしてくる敵が思い出されるから止めてほしいんだがな。
「立てないのか?」
「す、すみません。……無理です」
「そうか。休めば問題無いか?」
「え、えぇと。……すみません立ち上がれたとしても歩けないかもしれないです」
一応確認を取ってみたが、やはり立てないらしい。しかも、時間をかけても歩くことすら難しいとは。AIがここまで厳しくしたって事は、フィネークの元の体力がかなり少ないのだろうな。若い間に沢山動かしても回復が早いと言うし、今のうちに体力をつけてある程度軍人としてやっていける体力をつけさせるつもりなのかもしれない。
「……よし!今日はここまでだ!」
「イェッ、サー!ありがとうございました!!」
フィネークがダウンしてから数十分後。俺も今日のメニューを終わらせた。いい汗をかいたぞ。
そんなことを思いながら俺はフィネークの方を見てみると、
「……まだ立てないか?」
「い、いえ。立つのは、問題、ないかと……」
ゾンビのようにガクガクと体を震わせ、それでも立ち上がろうとするフィネーク。なんだか哀れだな。しかも、トレーナーが俺の見た目をしたAIであることも余計に罪悪感を感じさせる。
本当にこいつは何がやりたいんだろうか。
「どうする?自室に戻るか?」
「そ、そうですね。……あっ。でもその前に、シャワーを浴びてこようと思います」
「シャワーか。……なら、シャワー室まで肩を貸そう」
「え?あっ。……きゃっ!?」
俺は肩を貸し、強引にフィネークを立ち上がらせる。これでも力はかなりあるので(魔法による強化も込み)、軽々と持ち上げることができた。
やはり年頃の女の子というのはガチムチな戦友より軽いな。林檎3個分というやつだろう。
「あ、あの!隊長!私今汗をかいてて!」
「軍人が汗を気にしてどうする……まあ、嫌ならこうならない程度に体力をつけておくことだ」
「う、うううぅぅぅぅ!!!」
俺に肩を貸されて移動する間、フィネークは顔を赤くさせていた。これはお互い汗をかいてる状態で密着しているというのもあるのだろう。だが、それ以上に俺が攻略対象に追加されていることから考えると、気になっている人に臭いと思われたくないという気持ちがある可能性もある。
ただ、間違えてはいけないのはここで下手に匂いのことを指摘するとどちらかが傷を負うことになると言うことだ。匂いを指摘された時点でフィネークは傷つくだろうし、そこで下手に好きな匂いだよとか言ったら逆に俺が変態扱いされることになる。だから、恋仲で無い限りあまり汗のにおいなどは指摘しないことをオススメする。恋仲になればまた好きな匂いとか言うのは許されるだろうがな。
「誰かしら通りがかるだろうから、帰る時には肩を貸してもらえ」
「は、はい。ありがとうございました」
俺はフィネークに別れを告げて歩く。フィネークが男を頼ってそいつと良い雰囲気になるのを期待しておこう。せめてドタバタなシナリオに巻き込むなら俺では無くそいつを巻き込んで欲しい。
「あっ。副隊長~。遊びませんかぁ?」
「悪いが今から少し遅めの朝風呂に入るところだ」
俺が風呂に向かっていると、部下の1人に話しかけられた。こいつは元捕虜で、俺の拷問によりこちらに寝返ったやつだな。
「おぉ~。じゃ、私も一緒に入ります!!」
「やめろ。任務中だ」
「えぇ。良いじゃないですか~」




