50.やっと終わりですけど何か?
全力で迎え撃つ、とは言ったものの。
全ての魔力を出しきって勝とうとかそういうことをしようとしているわけではない。
「残りの魔力の半分で仕留めてやるよ」
「ガアアァァァ!!!???」
まずはキメラの周囲に展開している闇をレーザーで貫き、風を入れこむ。そしてさらにレーザーで穴を増やしていきつつ、風の通り道を増やす。
自分の支配する領域に異物が入るわけで、キメラも嫌がってそこに使う魔力の量を増やしてくる。
ただ、細かいところが多いため1つ1つやっていくのは難しく、強引に強い魔力で押しつぶしていくことしかできない。
そうなればもうこちらのもので、
「ほらほら。そんなに力任せだとすぐに魔力がなくなるぞ?」
「ガァ!?」
キメラの魔力は次第に俺以下の量となっていき、ほとんどなくなる。
こうなってしまえば俺の魔法を阻めるような力もキメラにはなく、俺の魔法が傷口へと入り込んでいき、
「ガアアアアアアアァァァァァァァァァ!!!!!??????」
悲鳴と共に血が噴き出ていく。
血の色も実に様々で、赤から紫、緑色まであるな。あまりそういう観察などしていなかったが、こうして見るとやはり大量の生物が合わさってできていることがよく分かる。
「それじゃあ最後に頭まで内側から、ドカンッ!」
血を大量に噴出し抵抗も少なくなってきたところで、俺は体を動かしていると思われるいくつかの生物の頭部を内側から破裂させていく。外側からどうにかするのは難しい物もあったが、血管やら気管やらから入り込めばあっさりと内側から破壊できる。
周囲に飛び散った肉片で、やっと俺は肩の荷を下ろせた。
「ふぅ。さすがに疲れたな」
今回はなかなかに辛い任務だった。心からそう思う。
珍しく感じる達成感と身体的な疲労感で座り込みそうになるがそれを耐え、もう一度キメラだったものへと意識を向ける。
かなり激しく壊してみたが、それでもなかなかきれいな状態で残っている部位もあるのだ。こういうものはぜひとも回収しておきたい。
「この回収作業のために魔力も残してるしな。最後の一仕事、がんばるか~」
そう思ったのだが。
なんとなく、だろうか。不思議な気配を俺は感じた。まるでまだ、全ての魔力が消え去ったわけではないと思ってしまうような、そんな感覚だ。
「死体撃ちのようでやりたくはないが……………電磁砲をキメラの死骸へ頼めるか。少し違和感を感じる」
『……イェッ、サー!』
俺の言葉に疑問は感じたのだろうが、それでも部下は従ってくれる。杞憂だとは思うのだが、何なんだろうな?
俺も魔力がほとんどなくなってしまって、神経質になっているのかもしれない。
そう思った直後だった。
「っ!?この魔力は!?」
周辺の魔力の流れが変わる。キメラの死骸であるはずのものに魔力が集まっていき、その内側で爆発するように、それこそ敵が自爆をしてきた時のように魔力が膨れ上がっていき、
ドンッ!
という音と共にその魔力は霧散した。
「間に合ったか………」
『大丈夫でしたか少将。なんか急に異常な魔力が出てきたので撃つのは止められなかったんですけど』
「ああ。かまわん。というか撃ってもらわなければ危ういところだった」
『あっ。そうなんですね。それならよかったです』
キメラの死骸に電磁砲の弾がぶつかり、魔力を集める機構が消え去ったようだった。
神経質になっているだけかと思ったが、意外と俺の勘もバカにできないな。
『じゃあ、そろそろ地上に降りますね。周辺の見張りをお願いします』
「分かった。目標地点を言ってくれ」
地上の敵がいなくなったということで部下たちの船が降りてくる。
色々と壊れているとk炉が青いので広い更地を降下地点に決めたようで、俺はその周辺に何か来ないかを見張るのも仕事になる。
特に何かあることもなく、
「これがサンプルとデータだ。解析を頼む」
「分かりました。データの解析は特に時間はかからないでしょうけど、サンプルの方は本国の方に引き継ぐ可能性も高いと思っていてください」
「分かった」
研究員もかなりの数いるから、本国に帰る間に解析はできる。本国に戻って引き渡さなければならないほど時間がかかる可能性もあるとは言われたが、さすがにそうなる可能性は低いだろう。
とは思うが、急かす必要もない。結果が出たら万々歳だと思って気長に待つことにしよう。
「ゴトー。お疲れ様ですわね」
そうして渡すものを渡せば、今度はセシルがやってくる。
「隊長。ご協力いただきありがとうございます。お陰様で無傷で帰ってくることがかないました」
「ふふっ。それは助けに行った甲斐がありましたわね」
セシルには今回、非常に世話になった。
俺1人ではキメラを仕留めることは難しかっただろうし、どこかでミスをしていれば死んでいた可能性もあった。
こうして魔力が少ないだけでどうにかなったのはセシルのおかげと言うほかないだろう。
「………思ったのですが」
「ん?何ですの?」
「隊長や殿下にも小官のようにとまではいきませんが、魔法を使えるようにしていただいた方が良いかもしれませんね」
「……………ほぇ?」




