49.自由でしたけど何か?
『よしっ!もう安心ですわよゴトー!私がきましたわ!』
「あっ。はい。ありがとうございます………」
俺の感知する限り、キメラの真上からセシルが降っていき激突したように思われる。
速度は圧倒的に電磁砲よりも遅かったものの、どこからか吸収してきたシールドの反発力が予想していた以上に強かったようで、かなり押し込まれいたな。キメラの魔力もごっそりと削れているのが分かる。
ただ、さすがにセシルの持ってきたシールドもあれだけの魔法と拮抗すれば削れて……………
『まだ10%しか削れていませんわね。もう1回行ってきますわ!』
「あっはい。お気をつけて」
どうやらあまり削れていなかったようである。
流石に戦闘艦から奪ったシールドは格が違うな(遠い目)
俺もかなり魔法の腕はあると思っていたが、ここまで疲弊していると戦闘機体で奪ったシールドにすら負けるか……………落ち込みそうだな。今度時間があるときに鍛えなおさねば。
『押しつぶしてやりますわあぁ!!!!!』
「ゴアアアアアアァァァァァァ!!!!!!!」
セシルの機体が闇をはねのけながらキメラへと向かって行く。
それに負けじとキメラは吠え、闇でセシルを包み込むようにしていく。動けないようにとらえてしまおうなどと考えているのかもしれないな。
実際、あの怪物が本気で時間をかけてやればシールドを消失させることは可能だろう。
「ただ、一方にばかり気を取られていると危険だぞ?……………電磁砲の狙撃を頼む。対象はキメラだ」
『イェッ、サー!』
俺は部下に指示を出し、セシルの方に大量の魔力を集中させているキメラへ電磁砲の砲撃を行なわせる。
今出している程度の魔法では到底電磁砲を食い止めることなどできず、バシュッ!と音を立てて奇麗にキメラの体を貫いた。
貫いたと言っても電磁砲の弾はそこそこの大きさがあるから、体の半分が消し飛ばされたような感じだな。
「ガアアアアァァァァ!!!!????」
キメラの悲鳴が響く。
残った部分からも血が大量に噴出しており、相当マズい状況になっているのが分かるな。厄介なことになると考えていた人間の頭部も消し飛んでるから、先ほどよりも知能が落ちているのではないかと思われる。
あと、ここまで減ると、
『この程度では私を止められませんわよぉぉぉ!!!!』
電磁砲が撃たれたことを知らずこれが全力であると勘違いしている誰かさんを止めることなどできない。
まっすぐにキメラへと向かって行く機体は、
『あと少し………って、逃げられましたわ!?』
もう少しで接触できそうというところでキメラに逃げられてしまう。惜しかったが、さすがに痛みでどうこう言っている場合じゃない状況になったとキメラも気づいて逃げたようだ。
ただ、近くの闇はかなりシールドで減らしたからキメラの魔力も残り少なくなっている。
もう少し追い込めば勝てるだろう。
そう思ったところで、
『あっ。さすがにシールドが残り少ないですわね。では私は帰らせていただきますわ。後はゴトーがどうにかしてくださいまし~』
セシルの機体のシールドが残り少なくなったということで、あっさりと帰って行ってしまう。
後のキメラとの戦闘は俺に任せられるらしい。
「自由だな……」
正直助けに入ってもらったことは助かったしかなりありがたかったが、何とも嵐みたいな登場と退場だったな。
普段シールド奪って適当に攻撃して、と言うことをしているセシルだから、こういう読まれにくい気分屋みたいな動きはある意味良いことなのかもしれんが、中身の性格と比べると違和感が大きい。
「……託されたし、とりあえず先にキメラをどうにかするか」
セシルのことも気にはなるが、まずはキメラが先だと気持ちを切り替える。
これからやることはたいして派手でもない、ただの、
「そっちもこっちも魔力は残り少ない。となれば、無駄に逃げ回るよりもぶつかり合う方が良いだろ」
ぶつかり合いをするだけだ。
これ以上時間をかけても仕方がないし、ここで決め切る。
「ガアアアアアァァァァァァァ!!!!!!」
キメラも俺の気持ちを感じ取ったのか、対抗するように咆哮をあげているな。
……………ちなみに、ただ痛みで吠えているだけという意見は受け付けていない。きっとあれは戦いのために吠えているのだ。そんな弱腰な理由ではない。あいつは戦士なんだ。きっと俺に対抗して立ち向かってくれるはずだ!(つまり逃げてほしくないだけ)
「さぁ受けてみると良い。手加減なしでやってやる」
「ガアアァァァァ!!!!????ガアアアアァァァァァァ!!!!??????」
何か叫んでいるが、きっと迎え撃ってやるぜみたいなことを言っているのだろう。まあ、正確なことはさっぱり分からんがな!
ただ、きっと「やめてくれ!?死ぬ!死んじゃうからぁぁぁぁ!!!????」みたいな悲鳴ではないはずだ!絶対そんなことはない!!
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
「ガアアアァァァ!!!????ゴアアアアアアアアアアァァァァァァァ!!!!??????」




