40.負荷が大きいですけど何か?
さて。一通りシミュレーションで婚約者たちのストレス発散などにも付き合ったところで、仕事の話をしよう。
今回は、できるだけセシルたちが集中力を切らさない程度の場所で戦おうと考えた。
それが何かといえば、
「ゴトー。準備はできたようですわよ」
「分かりました。すぐに向かいます」
「しかし、ほとんどゴトー君任せになってしまいますね」
「まあ、せいぜい私たちは私たちのできることをするしかないですわ」
「そうですねぇ。私たちじゃ、惑星奪取に直接的に協力することはできませんから」
3人の会話に出てきたように、今回の仕事は惑星の奪取。侵入し制圧し敵から奪い取ることだ。
お分かりだとは思うが、8割以上俺が動くことになると予想される。
俺の負担は増えるが、空気さえあればほとんど負けなしなので(エルフとかの魔法特化種族がいたら話は別だが)侵入さえ成功すればどうにかなる。
そしてこの艦隊で惑星を奪取できれば、ダリヤの支持率が爆上がりすることは間違いない(これ以上上がりようがあるのかという問いに関しては無視)。
惑星は資源の宝庫だし居住地としても優秀だし、1つ増えれば国力が大きく上がるんだよな。
「敵国はこの間の戦線でかなりの無理をしたものと考えられますし、惑星の警備にも問題が出ている可能性が高いです。弱い部分を見極めることさえできれば侵入できる可能性が高いかと」
「なるほど。了解ですわ」
今回俺たちが攻める敵は、前回の任務で大規模にドンパチした国と同じ国だ。
前回で相当無理をしただろうからいろんなところにガタが来ていると思われ、ここでさらに惑星まで奪って流れを作ってしまおうというのが狙いである。
今もあの前線は前線で新しい基地を作ってこちら側がじわじわと押しているようで、敵はさらにそこにもリソースを割かなければならないという状況になっている。
同じ理由で惑星に完全な防衛体制が残っているとも思えず、
「…………ただ、問題があるとすれば向こうにこの作戦が割れている可能性が高いということですね」
「まあそれはそうでしょうね。前回も恐らくそれで私たちの方に戦力が来たわけですし」
惑星降下の準備をしつつ俺がつぶやき、それにダリヤがうなずく。
こちらの作戦はきっと知られているだから、対策されているという可能性もある。というか確実に対策されている。
だからこそそれをどう打ち破るか、もしくはどう裏をかくかというのが大切になってくるわけだ。
俺は3人娘から離れ、惑星降下のための射出装置の近くへと移動する。
そろそろ惑星の付近に到着する予定だから、俺も準備をしておかないといけないんだよな。
『少将。レーダーに敵の反応が映り始めました。そろそろ戦闘開始です』
「了解した。安全を確保しつつ、殲滅ではなく惑星への接近を優先して行え」
交戦も始まるようで、たびたび少しではあるが揺れるようになってくる。
こちらに送られてくるデータだと、予想より少し敵の数は少ないように見えるな。相当がちがちの防衛体制で来るものだと思っていたから予想外だ。
『少将。作戦を変更して、罠を警戒しつつの接近に切り替えます。惑星降下は予定より遅れる可能性もあります』
「そういう理由であれば仕方がない。注意して進め」
敵が少ないということは、それ以外の部分で対策をしてきている可能性があるということだ。
そこでやはり1番最初に思いつくのが、罠。機雷や設置型のタレットなどいろいろな可能性が考えられる。
そういったものを警戒しながら進んでいくとなると、あまり速度を出せなくなるのも仕方がないことだ。
とくに敵は前回自爆してくるようなこともあったし、警戒値ははね上がっている、
「ただ、罠を仕掛けているだけだとも思えんがな」
『そうですか?罠で損害を出すなり時間を稼ぐなりすれば、周辺からの応援が来て私たちに対応できるようになると思うんですけど』
「それをするにしては罠の数が少ない。通常よりは多いが、この艦隊の足止めをするのに適しているとは言えない程度の数だ」
進む中で発見したり破壊したりする罠の数々。
しかし、その数は俺たちの艦隊に対して使うにはあまりにも少ない。警戒しつつ進んでいて移動速度は落ちていると言えど、この程度の防衛設備ではすぐに惑星まで接近できてしまう。
『惑星降下準備に入ってください。カウントダウンを始めます。10,9,8………』
すでに今カウントダウンを始めた。
俺ももう降下の時間となるから、あまり色々と考えてはいられないな。ここで惑星ごと俺たちを爆破するなんて言う大胆な方法をとってくるならどうしようもないが、さすがにそこまではないと思うんだよな。
何発か惑星にも攻撃が当たっているが爆発してないし、おそらく大丈夫だろう、
『……3,2,1,0。それではお気をつけて』
カウントダウンが終わり、次の瞬間俺の体に大きな負荷がかかる。
だが俺はそれにただ耐えているだけにはいかず、
「穴がそこか………この速度で移動しながら穴を避けるのにも、慣れてきたな!!」
網目状のシールドの穴を通り抜け、大気圏へと突入する。
すぐに俺は戦闘機体から飛び出し魔法で惑星全体の制圧を行なうのだが、
「………………ん~。なるほど。これが敵の策か」




